ロート強要容疑と消費者権利
<『日本は好きな国です。』
『自分にとって日本の国や文化は、非常に好奇心の持てるものだし、親近感も好感も持っている。日本語もぜひ学びたいと関心を持っている。だからこそ、今ここにいるんです。』
と、サンケイスポーツのインタビュー(*1)で語ったキム・テヒ氏。
このキム・テヒ氏の日本を想う気持ちと美貌に心を動かされたのか、それとも韓国での利益拡大を狙ったのか(ロート製薬の韓国での活動はこちらロート製薬の韓国内経済利益)、ロート製薬は自社商品のモデルとしてキム氏を採用しました。
しかし、キム氏は2005年にスイスで行われた独島愛キャンペーンに参加した韓国の愛国者であり、韓国の極右団体からも一目置かれている存在(キムテヒ守護 倭血を抜きとってやる)です。
商品の広告塔はその商品だけでなく、それを製造する会社のイメージを形作る要素であるため、広告塔の採用には十分な議論が行われ、会社の責任として世に公開されます。
そのため、広告塔に対する賞賛や抗議を会社は否応なく受けなければなりません。
今日、ロート製薬に対する強要容疑で4名の市民団体関係者が逮捕されたというニュースが大きく報道されました(記事はこちらhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120510-00000532-san-soci)。
YAHOOニュースによれば、第一報は産経新聞が12時11分に出しており、次いで読売が13時21分、毎日が15時53分に報道しています。
このニュースは韓国でも大きく報道されています。
韓国の第一報は14時40分にヘラルド経済が出しており、現時点(19時40分)まで18社(うち一社はTVで放映)が報道しています。
韓国メディアは一般的に犯罪者や容疑者の名前は匿名で報じますが、今回の事件を報道したメディア18社のうち4社が強要容疑で逮捕された4名を実名(住所を明記しているメディアもある)で報道しています(実名表記の例*2、匿名表記の例*3)。
このことは今回の事件に関する韓国メディアの関心をよく表しているのではないかと思います。
新聞報道によると、逮捕容疑の理由は以下の様に説明されています。
・産経『逮捕容疑は今年3月、同社を訪問し、応対した男性社員(50)をビデオ撮影した上、その場でインターネットの動画投稿サイトに投稿。さらに韓国人女優について「竹島を韓国の領土だと世界中で宣伝している反日活動家だ」などと脅してCMから降板するよう求めた』
・読売『4人は3月上旬、同社に押し掛け、社員に「竹島は韓国の領土だと言っている女優を使ったらダメでしょう。見解を答えないと、また来ることになりますよ」などと、同社へのデモを実行することをほのめかし、同社社員とのやり取りをインターネットの動画投稿サイトで中継。さらに、「国益を損ねるのではないか」とメールで要求し、同月中旬、同社に見解などをメールで回答させた』
・毎日『逮捕容疑は今年3月上旬、韓国人女優を起用した同社の宣伝に因縁をつけて脅したとしている。府警によると、西村容疑者らは、竹島が韓国との間で領土問題になっていると主張した上で「韓国人女優を起用するのはダメだ」と脅し、領土問題への見解を求めた』
つまり、ロート製薬が市民団体関係者のキム・テヒ氏の行動に関する私見と質問に対する回答を要求する行為が「強要」に当ると判断して警察に訴えたため、今回の事件が起こったということがわかります。
ここで注目すべきは上記の行為が「強要」に当るのかという点です。
刑法第223条には強要罪の定義が以下の様になされています。
・生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
二 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
三 前2項の罪の未遂は、罰する。
ロート製薬は市民団体関係者の行為がこの強要罪の定義に当てはまると考えていることが分かります。
さて、ここで一つ考えなければならない点があります。
それは、消費者基本法(*4)でその尊重が明記されている「消費者の権利」についてです。
「消費者の権利」とは、「安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利、消費者教育を受ける権利、生活の基本的ニーズが保障される権利、救済を求める権利、健康な環境を求める権利」の8つの権利により構成されている消費者が持つ権利です。
消費者基本法は第二条においてその基本理念を次の様に説明しています。
第二条 消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。
また、第五条において事業者の責務等を次の様に説明しています。
第五条 事業者は、第二条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にかんがみ、その供給する商品及び役務について、次に掲げる責務を有する。
一 消費者の安全及び消費者との取引における公正を確保すること。
二 消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること。
三 消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮すること。
四 消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理すること。
五 国又は地方公共団体が実施する消費者政策に協力すること。
今回の事件を、事業者に対して「消費者の権利」を訴える消費者団体の行動という観点から見れば、ロート製薬が主張する市民団体関係者に対する強要罪の適用が妥当であるとは簡単には断定できないと考えます。
ロート製薬に対する抗議の様子を撮影した一連の動画を感情的に見てその言葉遣いや行動を否定する意味で強要罪の適用を訴える人もいるでしょうが、ロート製薬の商品を使用する消費者が採った行動である点を考えた場合、一方的に会社に有利な形で強要罪を適用してはいけないと考えます。
消費者基本法は第三条にて国の責務を次の様に説明しています。
第三条 国は、経済社会の発展に即応して、前条の消費者の権利の尊重及びその自立の支援その他の基本理念にのつとり、消費者政策を推進する責務を有する。
今回の事件に対する国のとる姿勢が民主党の「経済社会」観が自主独立的なものであるのか、他国従属的なものであるのかどうかを明らかにすると考えます。
出典(*2、*3は韓国語)
*1:サンケイスポーツ(2011/10/9)http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/111009/ent11100918510015-n1.htm
*2:ヘラルド経済(2012/5/10)http://news.heraldm.com/view.php?ud=20120510001011&md=20120510144334_2
*3:聯合ニュース(2012/5/10)http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=104&oid=001&aid=0005608902
*4:消費者基本法http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%8F%C1%94%EF%8E%D2%8A%EE%96%7b%96%40&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S43HO078&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1
今回のチーム関西の行動については、消費者基本法の第5条の第2項と第4項を行使したものと考えれば、多少の行き過ぎがあったとしても不起訴が妥当と考えますが、いかがでしょうか。
これでは単なる言論弾圧だと思います。
消費者基本法の第7条も行使できると思います。
今回のチーム関西側の行動をロートの商品を愛用している消費者(西村氏はセバメドの石鹸の愛用者であると明確に言っています)の「消費者の権利」の行使と捉えれば、ロート側は許容しなければならない抗議であると考えます。
根拠は、「消費者の権利」の中でも少なくとも「知らされる権利、意見を反映させる権利」を基にした行動だと解釈できる点にあります。
商品を構成する諸要素の中の物理的イメージを担当するキム・テヒ氏の素性に関して知らされていなかったことに対しては「知らされる権利」を行使することができ、また、商品自体に対して一消費者として「意見を反映させる権利」を行使することができるからです。
この「消費者の権利」は「消費者基本法」第二条で『尊重』されおり、第五条で事業者の責務が明記されております。
西村氏らの行動はロートに対してご指摘の通り第五条の第二項と第四項、第七条の行使だけでなく、ロートが消費者に十分な情報を与えずにキム・テヒに関する基礎的な知識もない消費者に商品を販売したと捉えたため第三項の行使をも要求した行為であると考えることが出来ます。
ロートは抗議の際に使用した言葉の激しさだけをとって「強要罪」を主張しているようですが、ロート製品の愛用者が当然のように行使することのできる権利を無視しており、これは消費者基本法に反する姿勢だと言えます。
今回の事件はロート側の法律違反、企業倫理違反であり、それを隠すために公権力を使って言論弾圧を行った結果であると言えるのではないかと思います。