心に激しい風が吹いても守ってくれるものがある



 たとえば山の湖。水面がざわざわ波立ったり、風にあおられて波頭がたつことが


あっても、水の本質は変わりません。湖の底は清く澄んでおり、水面もいつかは鏡


のように静かになります。



 一心は本より湛燃として澄めり   「表面がいくらざわめこうとも、心の底は静か


に清く澄んでいる」と空海は言います。


 静かに水をたたえた心を乱し、波立たせたり、濁していくものはさまざまです。


 人間関係や仕事のストレス、お金や名声への欲望、病気や身内の不幸、失恋や


嫉妬、性の渇望、生きがいの喪失や将来への漠然とした不安などもそうでしょう。


 つまり、この世で生きている私たちに終始つきまとう煩悩(人の心身を悩まし、


迷わせ、汚すもの。あらゆる妄念や欲望のこと)が心を乱すのです。


 けれども空海は言っています。「煩悩の風を払えば静かな湖水のような心を取り


戻せる、本来だれもが仏の心を持っているのだから」と。どんなに激しい風が吹い


ても、心の仏があなたをきっと守ってくれます。