電帳法とインボイス | 日々、嬉努愛絡 多幸なり

電帳法とインボイス

電帳法と消費税のインボイス制度がほとんど同時に施行されたものだから、理解が浅い人が混乱。

・・・電帳法の正式名称は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」

・・・インボイス制度の正式名称は、「適格請求書保存方式」(この場合の「請求書」は請求書だけを指すのではない)

 

 

それぞれ、その本質を理解する必要がある。

●電帳法の本質は二つ。

①取引先から、電子データで送られてくる国税関係書類は、紙に出力して保存してはいけない。電子データのまま保存。

②仕訳帳などの帳簿や、取引先から紙で送られてくるものは、電子化して保存してもよい。

 

問題は、電子データは修正・削除が簡単にできてしまうので、しないようにするために仕組みが必要ってこと。

そのひとつの方法が、タイムスタンプ。

 

 

 

 

 

●インボイス制度の本質も二つ。

①課税事業者のうち、インボイス発行登録事業者は、仕入れ先からインボイスの発行を求められたら、インボイスを発行しなければならない。

②仕入れ税額控除は、仕入れにより受け取るインボイスの保存がなければできない。

 

 

 

●消費税の歴史をさかのぼってみると、

創設時、取引慣行や事業者への事務負担等への配慮から、仕入税額控除の方式として帳簿方式が採用された。

これは、帳簿又は請求書等の保存を要件として、仕入税額控除の適用を受けることができるというものであった。

 

その後、平成 6 年度税制改正において、仕入税額控除の方式は、帳簿及び請求書等の双方の保存を求める方式に改められた。

「請求書等保存方式」。

 

さらに、令和元年10月に始まった軽減税率により、税率を分けて記載する「区分記載請求書等保存方式」に改められ、令和5年10月から始まったインボイス制度によって、「適格請求書等保存方式」に変わった。

 

まとめると、仕入税額控除をするには、①帳簿だけ記載から、②取引事実を認識できる証票の保存も義務付けられ、③その証票に記載すべき事項が法定化されたという流れである。

 

 

●この消費税の流れとともに、世の中の電子化の流れが加わって、帳簿等の電子化保存となっている。

 

 

一方で、法人税と消費税の税法間の違いがある。

法人税は、取引の実質的な事実認定の世界の税法。

消費税も、取引の実質的な事実認定もあるが、形式的なインボイスが強い世界の税法。

 

例えば、クレジットカードの明細書。

法人税では、これで取引があることは分かるので損金計上できるが、消費税では、この明細書はインボイスではないので、仕入税額控除ができない。

 

現在、従業員が立替精算する際にクレジットカードの明細書では認められないのは、消費税の仕入税額控除ができないためである。インボイスである領収証を添付しなければならない。

 

混乱の一つがこれ。

今までできていたものができなくなった。その理由をきちんと説明できていなかったりする。

 

 

 

さらに拍車をかけたものが電帳法。

本質のところで書いたが、電子データで受け取った領収証などは、電子データで保存しなければならない。

 

例えば、AMAZONの個人アカウントで物を購入した場合、その領収証は電子データである。

電帳法に厳密に従うと、電子データのまま保存しなければならない解釈になる。

 

セキュリティが厳しい会社だと個人のPCから、会社のPCに転送して、そのうえで立替精算処理をしなければならない手間が出てくる。

 

 

 

更にさらに、AMAZONの場合、領収証とインボイスは別であるので、2回ダウンロードしなければならず、それらをセットにしなければならない。

 

もっと言えば、個人情報が記載されているので、それを黒塗りする従業員もでてきて、それは修正・削除なのかという課題にも直面する。

・・・電子データの修正・削除は電帳法上、認められていない。すなわち、個人情報を受け取るリスクと電帳法のバッティングが生じてしまう。

 

 

それぞれの法律の本質を理解し、法律間でバッティングした場合にどちらを優先すべきかなど昨年10月から課題てんこ盛りでした。