トランプがいかに前時代的な――19世紀以前のセンスそのままの――人物であるかを示す例には事欠きませんが、書いていて気が滅入る事ばかりなので今回は比較的実害が少ない例のお話です。
皆さんご存じかも知れませんが、トランプ就任後の数多くの大統領令の中には地名の変更が含まれています。一つはメキシコ湾。Gulf of Mexico ですが、これを「アメリカ湾 (Gulf of America)」と改名しろって。そしてもう一つは北米最高峰のデナリ (Denali) 。これも旧称の「マッキンリー山 (Mt McKinley)」に戻せとのこと。他にもあるのかもしれませんがこの二つの改名は物議をかもしました。
まずメキシコ湾ですが、一体なぜ? 「アメリカ湾」にしろなんてクレームは今まで聞いたことがなかったので私はかなり唐突で強引な印象を受けました。というよりなんて幼稚な、というのが本音ですが。Google はGoogle Map の米国内での表記を即座に「アメリカ湾」に変更する従順なところを見せましたが、(老舗通信社の)AP通信は変更せずメキシコ湾の呼称を継続。するとトランプはホワイトハウスでの取材からAP通信の記者を締めだしてしまうというこれまた幼稚な報復措置に。あの金科玉条の「言論の自由」はどうなったの? というかこれがトランプの「言論の自由」の真の姿ですね。二の句が継げません。
デナリに関してですが、こちらはメキシコ湾と違って結構長い経緯があります。マッキンリーは米国大統領にちなんで20世紀初頭につけられた名前ですが、1975年に地元アラスカ州はこれを元々地元民が呼んでいたデナリに戻し、それから40年後、2015年にようやく連邦レベルでも公式にデナリに戻りました。背景には(遅まきながら)白人入植以前の地名を尊重しようという流れがあったわけです。
私も元々の住民に使われていた地名がわかるのであればそれを尊重すべきだと思っていますが、白人至上主義者を含む保守強硬派はこの流れに強く反発していました。根底には米国は白人・キリスト教徒の国、だから白人・キリスト教徒が米国の実権を握り続けるべきという強い信念があるわけですね。トランプはこの自分の岩盤支持層へのアピールも狙ったはずです。
実は米国には白人入植前の名称が元になっている地名が結構あります。州名だけざっと見ても。2015年のデナリへの名称変更に特に反対したのはマッキンリー大統領の地元、オハイオ州の保守派だと言われていますが、オハイオという州名については何とも思ってないのかな。
私自身は「アメリカ湾」なんて記述されている地図は恥ずかしくて見たくもないのですが、機会があればトランプにはメキシコ湾だけでなくもっと大物も下記のように改名するよう提案したいと思っています。メキシコ湾なんかよりずっと大きいからインパクトありますよって。
Pacific Ocean (太平洋)→ West American Ocean
Atlantic Ocean (大西洋)→ East American Ocean
Arctic Ocean (北極海)→ North American Ocean
Southern Ocean (南極海)→ South American Ocean
Indian Ocean (インド洋)→ Native American Ocean
本気でやりかねない人物なので提案するというのはもちろん冗談ですが。でもトランプがやる前に日本が先手を打って太平洋を「日本洋」(Japanese Ocean、あるいは Ocean of Japan)」と改名してみたらどうでしょう? 日本国内閲覧のGoogle Map は即座に変更してくれそうですよ。