前回既婚なのにトランスであることをカミングアウトすることについて、そしてカミングアウトする側が配偶者側の気持ち、ショックについて思いやることが大事だと思っていることをお話ししました。今日はその続きです。
その前に――前回、今回と私の考えを述べていますが、こうすれば必ずうまくいく、ということではありませんのでご理解いただければと思います。とにかく状況もそれぞれの性格もカップルごとで異なりますのでこうすれば必ずOK,という魔法の解決法はもちろんありません。私の思いは一つの例と思っていただければと思います。
[トランスの配偶者の方へ]
性自認は選べるものではないこと、性別違和が限界まで達してのカミングアウトであることを考えれば、性別移行に即座に全面反対してしまえば当事者をつぶしてしまいかねません。婚姻関係継続の意向があるならば、移行を理解したいと思っていること、できればサポートしたいと思っていること、考えを整理する時間が必要なことを伝えましょう。
とにかく始めはショックのあまりものすごい精神的ダメージをうけるのが普通です。できればその状態での(離婚か婚姻継続か、移行程度の容認などの)決断は避け、とりあえず考えが落ち着くまでの間は勝手に移行を進めないで待ってもらうことが大事だと思います。
友人と言えど非当事者からは「そんな奴さっさと捨てて離婚が一番」というのが多数派だろうとは思いますが、状況もよくわからないうちから離婚を薦める外野はとりあえずスルー。離婚に関してはご自身の気持ちが落ち着いた後で決断すべきだと思います。トランスジェンダーは例え性別が変わっても自分の性格、考え方などは(ジェンダー以外のところで)変わるわけではありません。ジェンダーの要因抜きで結婚相手の人間性にどの程度魅力を感じているのかを考慮してみる価値はあると思います。
繰り返しになりますが、トランスであること、カミングアウトを余儀なくされること自体は人格が至らないわけでも人間性に欠陥があるわけでもありません。誰の落ち度でもありません。結婚相手がトランスだったというのはとんでもない不運です。でも自分が被害者、トランスをカミングアウトした側が加害者、という固定観念にはまってしまうと婚姻継続は極めて難しくなると思います。
[トランスの方と配偶者の方双方に]
コミュニケーションを維持することは婚姻関係の維持のための基本だと思いますが、コミュニケーションがうまくいっていたら関係を続けられる、というわけではありません。コミュニケーションがうまくいっていてお互いの気持ちを十分理解した上でそれでも性別移行は程度に関わらず絶対してほしくない、という配偶者もいますでしょうし、自分のスケジュールで一刻も早く完全移行へ進む以外選の選択肢はないというトランスの人もいるでしょう。
私はどちらの立場も尊重せざるを得ません。性自認が自分と同性の場合は絶対に婚姻継続は無理という配偶者も、性自認にあった性別に全面移行するしか道がないというトランスの方も、双方とも責められません。お互いに合意できる落としどころがない場合は関係継続は無理だとと思います。でも結論が別離であっても相手が妥協できないことも、あるいは自分が妥協できないことも責めないように。
不貞があったとか信頼関係を崩す何らかの行為があったとしたら全く別ですが、性自認と性別移行、そしてそれを配偶者として受け入れられるかどうかについては――繰り返しになりますがーーどちらが悪いということではありません。とにかく信頼関係とコミュニケーションを維持して誠実に話し合いを続けるしか方法はないと思っています。