『最期は、苦しまなかったのが本当に救いだよ』
と最期を看取った患者さんのご家族がたいてい口にする言葉です。
苦しまないで逝けた…
この言葉は、見送る家族側のためにあるものだと思うんです。
大切な人を失った残された方々が、ご家族(またはパートナー)の死を認めて、死にゆく人を慈しみ、残されたこれからの人生を前向きに歩むための言葉です。
決して、お亡くなりになった患者さん向けの意味ではないんです。
だって、亡くなった方が最期に苦しまなかったなんて、実際には分からないんですから。
本当は、苦しかったかもしれない。もっと痛みをとってもらいたかったかもしれない。
でも、それは、亡くなった方にしか分からないから。
見送った人が『苦しまなかった』と思えれば、それで良いんです。
後悔しなければ、良いんです。
私は、数百人の方々の死を見てきました。
もちろん、急激にCPA(心肺停止)となり、CPR(心配蘇生)の結果、辛い死を迎える方もいましたけど…
たいていは、死ぬ間際には意識レベルも低下して反応が無くなってから、呼吸停止や心停止が起こり、静かに息を引き取るので、
『最期は苦しまなかった』との表現がぴったり当てはまるんですね。
残されたご家族にとっては、静かに息を引き取ることが安心材料となり、苦しまなかったとご家族に感じて頂けることが、私たち医療者の救いでもあるのです。
少しでも、ご家族の希望に沿えるように出来ればと考えています。