「変わってる」と言われても、私は私のままでいい
宮島未奈さんの『成瀬は信じた道をいく』は、自分らしく生きることの大切さを静かに、でも力強く伝えてくれる青春小説です。
舞台は滋賀県大津市。琵琶湖のほとりで繰り広げられるのは、大きな事件ではなく、日常のなかにある小さな選択の積み重ね。
その中心にいるのが、高校生の成瀬あかりです。
成瀬は、一言でいえば「変わった子」。
けれど彼女はいつも、自分の信念に正直に生きているのです。他人の目を気にせず、自分の心に従って行動する姿は、現代社会においてどこか突き刺さるものがあります。
なんでもない日常が「自分」を作っていく
この物語の魅力は、派手な展開はなくても、成瀬の行動一つひとつが胸を打つことです。
たとえば、全校生徒の前で校歌を歌ったり、好きな制服を着て登校したりといった出来事。
どれも奇抜に見えるかもしれませんが、成瀬の中では一貫した筋が通っているのです。
そんな成瀬の行動に戸惑いながらも、周囲の人たちは少しずつ影響を受けていきます。 「自分を信じるって、こういうことかもしれない」と、読者も気づかされるでしょう。
静かな筆致が映す、強い意志
作者の宮島未奈さんは、淡々とした語り口の中に深い感情を込めることに長けた作家です。
本作でも、派手な言葉を使わずに、成瀬の強さや迷い、そして成長を丁寧に描いています。
成瀬は決して感情を爆発させるタイプではありません。むしろ静かで淡々とした人間です。
しかし、その静けさの中に秘められた信念の強さが、この作品を通して強く印象に残ります。
おわりに
あなたは、あなたを信じられますか?『成瀬は信じた道をいく』は、周囲と違うことを恐れず、自分を貫いて生きることの尊さを教えてくれる一冊です。
高校生活や地方都市の穏やかな日常を舞台にしながらも、そこには普遍的な「生き方の選択」が描かれています。 成瀬のように、誰にも理解されなくても「私は私のままでいい」と思える強さは、現代に生きる私たちにとって、とても大切なものではないでしょうか。
ぜひこの作品を通して、「自分を信じて生きる」勇気を感じてみてください。