maple-myluvさんのブログ -3ページ目

団地の年下男2

その男が住む団地まで20分近く歩いた。
男は口数が少なく、あたしもペラペラ喋るわけでもないから幾度となく沈黙が2人を包んだ。

夕暮れ時、ほんの少しまだ残暑が残る頃。
男はあたしの手を掴んだままだった。

団地につきあたしの手を離し自分の自転車をとってきた男は、「後ろ乗って」と言った。
自転車後ろに跨がって、男の作業服に遠慮がちに掴まった。


非日常で刺激的な男だと思った。学校の同級生には絶対に存在しない男。

大嫌いな父親や、進路を決め兼ねて逃げようとしている心や、何事にも中途半端なあたしに囚われないでもいい世界へその男が連れていってくれるかもしれないと思った。


次の日の学校帰りも、駅でその男が待っていた。また同じように一緒に帰った。

あたしたちは携帯で連絡を取り合うことはなくって、男は駅にいたり、いない日もあったり、会った日には一緒に帰った。

ある日、なんだか一緒に帰りたい気分の日にその男は駅にはいなかった。
諦めてバスに乗ろうかと思った直後、その男が作業服でこちらに歩いてくる姿が目に入った時、あたしは救われる錯覚を覚えた。

あたしは、また、男に依存してしまった。

団地の年下男1

その男に手を引かれ、発車を待っていたバスから降りた。

「あいつ本当に声かけてるよ」と、男の子たちの笑い声が聞こえたけれど、その男は、こっち来て。とあたしの手を離さなかった。

「バスで帰るところだったんでしょ?一緒に歩こう。途中俺んちでチャリあるからチャリで送ってくから」

頷いて言われるがままなあたし―…

その男は口数が少ないながら、身の上話をし出した。

バスの帰り道の途中にある大きな団地に、お兄ちゃんと2人暮らしで住んでいること
年はあたしより1つ下で16才、中学を卒業してすぐ働いていること
父親の顔は見たことがなく、母親からはしばらく連絡がないということ
小さい頃はほとんど教護院にいたこと
今日は仕事が早く終わり駅で地元友達とたむろしてたところで、あたしを見つけてバスまで声をかけたということ。


中学から私立だった、世間の厳しさなんて社会の厳しさなんてなんにも知らないあたしとは、住む世界が違うなとすぐに思った。

それでも手をふりほどくことが出来なかったのはどうしてだろう。
ただの好奇心かな、淋しかっただけだからかな
この男は救ってくれるかもしれないと漠然と思ったからだったのかな

夏の終わり

高校生活最後の夏も終わって、あたしの中にある感情は「焦燥感」だった。

自分がないから若さに頼って誰かに依存していたくてでも誰に依存すればいいのだろう。
現在(いま)は良くても"学生"という肩書きがなくなり、若さがなくなった後のあたしには何が残るのだろう。
誰があたしを求めてくれるというの。

誰かに、空っぽだと見透かされるのが怖かった。

ドラマや映画のようにキラキラしている世界があるとしたらあたしはその対極にいるんじゃないか。

化粧を覚えて今時の格好をして背伸びをしてそうすれば幸せになれると思っていたけれどそんなことはなかった。
あたしには何もなかった。



ある日の学校帰り、地元近くの駅、バスの中で発車を待っている時だった。
若い作業服姿の男の子が乗り込んできて突然あたしの隣りに座った。

「一緒に降りよう」

その男がそう言ってあたしの手を引いた。