261年4日


年が明けて4日。
今年は白夜の年で、明日からエルネア杯が開幕する。
子供の頃から仲人していた子達が成人し、本格的にお見合いを始めたのだが中々上手く行かずに手を焼いたり、父から不穏な言葉を聞いて不安になったりしているけれど、今日だけはそういうのを全部忘れて楽しもうと思う。


今日は妻の誕生日であり、僕たち夫婦の3回目の結婚記念日なのだから…




先ずは朝食で妻の誕生日をお祝いする。
毎度のことだが、我が家はそれぞれ好きなものを食べるスタイルなので、誕生日ケーキというものは存在しないのだ。
まあ、子供たちがそれを望めば作ってあげようとは思うが、ケーキが食べたいとは言ってこないし、相変わらずカレーを食べ続けている。
妻もケーキは望んでいないっぽいので、誕生日でもいつものスタイルでお祝いだ。






例年だと、朝食後直ぐに妻をデートに誘うし今年もそうしようとは思っていたが、それより先に娘からお出かけに誘われてしまった。
断るなんてことは出来ないので、娘の希望で水源の滝へお出かけを先にすることにした。

「ねぇパパ〜、おさかなさんいない…」

ここは水が綺麗すぎるんだよ。

「お水がキレイだとおさかなさんいないの?」

そう、水が綺麗だとお魚さんの餌がないんだよ。

「じゃあエサを入れたらおさかなさんきてくれるね!」

それはダメ!
ここのお水はね、パパやトリスちゃんが飲む水になるんだよ。
だからお魚さんの餌を入れて汚したらダメなんだよ。

「え〜、でもわたしおさかなさん見たーい」

じゃあ、帰りに水源の遊歩道でお魚さん見てから帰ろうか?

「うん、見る〜!」







少し寄り道をして娘と魚を見たあと(なんだか最近、ナマチョコや白いナマチョコとかいう魚がいるというので、それを探したりしてた)、まだ家でジェニファーの世話をしていた妻を誘って、ニヴの丘でデートをした。

結婚生活も4年目に突入ってことだね。

「ほんと、あっという間」

その間に子供が2人生まれて。

「ペース早いわよね」

結婚が少し遅かったし、このくらいのペースでいいんじゃないかなぁ。
 育てるにも体力いるからねぇ。

「本当よねぇ。産む時も大変だったけど、育てるのはもっと大変」

…あと1人くらいいけそう?

「えっ?ユーくんもう1人欲しいの?」

うん、実はね。
男の子がどうしても欲しくてさ。

「ああ、2人とも女の子だもんねぇ。やっぱり男の子欲しいんだ」

まあ、男の子とか女の子とかさほど気にしてる訳じゃないんだけどね。
男の子だろうが女の子だろうが、僕の子供である以上はそれなりに鍛えるつもりでいるし。
でも、やっぱり父と息子って関係に憧れはあるよね。

「それは…お義父さんのことと関係あるの?」

…もしかして、リカちゃんも聞いたの?

「…うん」

なんか突然気弱なこと言い出してさ。
騎士隊長だってのにさ。
まあ、歳も歳だから気弱になってるのかもしれないけど、まさかなぁ?

「そうよねぇ。お義父さん全然元気だもの。昨日だって1人で瘴気の森行ってたし」

だよな?
きっとなにかの間違いだよな?

「そうよ。3人目作るんだもんね?だったらその子が産まれるまでは元気でいてもらわなきゃ」

そうそう、孫の顔はちゃんと見てもらわなきゃな。
お母さんには見せられなかったからさ。

「…ツェリさんにも見てもらいたかったね」

そうだなぁ…
今お母さんが生きてたとしたら…
“任せてユーリくん、トリスちゃんはわたくしが鍛えますわ!”
とかいう言いそうだなぁ。

「…まあ、ツェリさんが鍛えたとしてもユーくんが鍛えたとしても、さほど変わりはないと思うけどね」

あ、心外だなぁ〜。
僕はお母さんほど厳しくないからね?
お母さんはスパルタだったけど、僕は優しく教えて鍛えるタイプだからさ!

「………え?」

ん?

「…あれで優しく鍛えてたつもりなの?」

優しかったでしょ?
リカちゃん鍛えた時😊

「あれで優しかったんなら、ツェリさんってどんだけ厳しかったのよ…」

うちの母親は、そりゃあもう厳しかったよ!
僕がまだ学校に入ったばかりだってのにさ、水没の魔物の前に放り出してさ、“この程度の魔物なら簡単に倒せますでしょ?”とか言って、自分は何もしないで見てるわけ。
でもさ、倒せるわけないんだよ。
そりゃあ同級生よりは多少強かったけど、所詮は2歳だぜ?
無理だよ無理。
で、案の定倒しきれなくて反撃されて吹っ飛ばされたら、お母さん倒れてる僕のこと上から見下ろして、“どうしてこの程度の魔物に苦戦してますの?さあ、早く立って戦いなさいな。簡単なことでしょ?”とか言うんだよ!
鬼だろう?

「…そうねぇ、2歳の子にそんなこと言うなんて、鬼だわねぇ。まあ、ほぼ同じようなこと、わたしもユーくんに言われたけど」

え〜?まさかぁ〜。
そんなこと言わないよ〜。

「言っておくけど、私は一生忘れないからね!」

へ?
…なんか、まずいこと言った?

「…今日は結婚記念日だし、ケンカになりそうなこと言うのやめとく」

ええ〜、そんな酷いこと言ったの〜?


確かに去年は妻を騎兵選抜に勝たせるべく鍛えるために毎日探索に連れて行ってたけど…
自分が何言ったか、全然覚えてないんだよなぁ…
何言ったんだろう?
知りたいような…知りたくないような…





そうそう、今年はエルネア杯の年だからギブルが売ってるんだよね。
買うの忘れるところだったよ。


今年の一番人気はアザミさん。
さすがは魔銃導師。
次に父と僕が同じオッズ。


僕は一応ディフェンディングチャンピオンではあるけど、近衛騎士隊トーナメントでは準決勝で負けることが多いから一番人気にはなれてないんだろうなぁ。


でも、やっぱり龍騎士の座を譲る気はないから、その決意の表しとして自分のギブルのみを買っておくことにする!


それにしても、今回のエルネア杯も知り合いが多いなぁ。
12人中の半分である6人が身内や仲良しさんだ。
まあ、誰が相手でも負けるつもりはないんだけどね!






さて、今日は妻の誕生日だけではなく、この国の国王陛下と王太子殿下の誕生日でもある。
去年はちょっと色々あって祝えなかったので、今年こそはちゃんと祝いたいと2人を酒場に誘ってお祝いした。


イェルシーは19歳に、アンブローズは10歳になった。
今年はアンブローズの所に子供が産まれる。
つまり、イェルシーにとっては初孫が産まれるのだ。


どちらもとっても楽しみにしているみたいで、終始ニコニコとしていた。
本当、笑顔がそっくりな親子だよなぁ…と、見ててほっこりしてしまった😊








夕刻からはちびっ子たちのお見合い。
去年までは休日の度にピクニックに行ってお見合いしてたけど、今年はみんな学校に入学して探索が出来るようになったから、お見合い探索には切り替え。
ただ、さすがの僕も4組同時お見合い探索はキツかった…orz
休日の度にこれをやるのかぁ…と考えたらゲンナリした😅






お見合い探索中に、結婚記念日のプレゼントを渡していないことに気がついた!
渡しに行くついでに誕生日デートにも誘おうと、坑道にいた妻に会いに行った。


南国の花束を喜んでくれたので、誕生日デートに誘おうとしたら、なんと妻の方からデートに誘ってくれた!
同じこと考えてたんだなぁ…って感激してたのに…
行き先は…ニヴの丘?
…え?
朝、行ったよね?





「夕3刻ともなると、さすがにちょっと涼しくなってきたね」

…うん。

「でも、これから少しずつ暑くなってくんだよねぇ」

…うん。

「…どうかしたの?」

いやいやいやいや、どうかしたの?はこっちの台詞ですよ?
なんでニヴの丘?

「だってユーくん好きでしょ?」

うん、好き!
でも、朝もニヴの丘だったよね?

「そうね」

なのにまたニヴの丘なの?

「だって、せっかく結婚記念日なんだからユーくんの好きな場所のほうがいいと思って」

え?それでニヴの丘なの?
それは…ありがとう😊
でもね、今は結婚記念日のデートじゃなくて、リカちゃんの誕生日デートのつもりだったんだけど…

「あ、そっち?」

そっち?って…
大事なことでしょ?
去年は出来なかったし。

「まあ、そうだけど。もう祝われて嬉しい歳でもないしねぇ」

…そんな、身も蓋もないことを。

「男の人は嬉しいのかもしれないけどね」

いやいや、男だってもう14歳ともなればさほど嬉しくはないんだよ。
それこそ今日はイェルシーの誕生日だったんだよ。

「そうそう、私陛下と同じ誕生日なのよねぇ」

で、ここに来る前に酒場でお祝いしてきたんだけどさ。
イェルシー19歳だよ?
そりゃあ内心、“祝われて嬉しいって歳でもないんだけどなぁ〜”って思ってたと思うよ?
でもさ、誕生日って本人だけを祝う日じゃないじゃない。
イェルシーで言えばさ、サラおじちゃんとイーニッド叔母様に「イェルシーを産んでくれてありがとう」って、感謝する日でもあるじゃない?
ひいては、ずっと遡ってご先祖さまに感謝する日でもあると思うんだよ。
1年に1回さ、そうやって親やご先祖さまに感謝するのって大事だよ?

「…そっか」

うん、今日はね、リカちゃんだけを祝うわけじゃないんだよ。
リカちゃんのご両親、アリツお義父さんとカルメンお義母さんに
「あなたたちがリカちゃんを産んでくれたお陰で、僕はリカちゃんに出会えて結婚出来て子供たちにも出会えて、今とても幸せです。ありがとうございます」
って、感謝する日なんだからさ。
だからさ、改めて。

「改めて?」

リカちゃんの誕生日を祝うデートに行ってもらえませんか?

「………はい、喜んで」






というわけで、僕たちは誕生日デートをやり直すべく神殿のアトリウムに向かった。
歩いてる途中で夜になってしまったけれど、夜のアトリウムも神秘的でとても綺麗だったので、それはそれでよかったねなんて話したりもした。


誕生日のプレゼントとして星空の砂を渡して、僕のなんだか慌ただしい1日が終わった。
毎年のことだけど、やっぱり僕はちょこまかと動き回って忙しない。
とはいえ、これが僕の普通の日常なんだよなぁ。
ただボーッと1日を過ごすなんて僕の性には合わない。


これからも、こんな普通で忙しない幸せな毎日が続くといいね?