260年 4日


朝目覚めた時から僕は気合いを入れていた。
何せ今日は忙しい1日になる。
頭の中でスケジュールを組み立ながら着替えをして、ペットのイムたちにご飯をあげる。


今日は妻の誕生日兼結婚記念日。
去年はどちらもお祝いしたけど、今年はそういう訳にはいかなそうだ。


まず朝食の席でみんなでお誕生日を祝い、プレゼントを渡したらデートに行く。
娘とのデートも大事だから、今日はウィアラさんのところでご飯を食べよう。
そして親友親子のイェルシーとアンブローズの誕生日でもあるので、2人とも酒場でお祝いして、昼からは子供たちのお見合いに時間を裂かれる。
そして夕刻からは探索だ。


今年はなんと、妻が騎兵選抜に応募してしまったのだ。
寝耳に水とはこのこと。
騎士隊に入りたいなんて今まで聞いたこともなかった。
だから今まで妻のことは鍛えずにきたというのに…
しかも試合は明日だ。
誕生日デートをしている暇なんてない!





先ずは朝食。
父が号令をかけて妻の誕生日を祝う。

「お誕生日おめでとう、フレデリカさん」

おめでとう、リカちゃん!

「ママ、おたんじょうびおめでとう」

「うふふ、ありがとう。みんな!」


そして、今年は結婚記念日のプレゼントと誕生日のプレゼントを同時に渡した。

はい、これ。
花束は結婚記念日のプレゼントで、星空の砂は誕生日のプレゼントだよ。

「ありがとう、ユーくん。毎年ちゃんとプレゼントくれるの本当に嬉しい♡」







そして、もちろんデートはニヴの丘。

「ねえ、ユーくん。この服、去年の結婚記念日にも着なかった?」

あ、気付いた?

「まあ、そりゃぁねぇ」

この服、僕たちのお気に入りの服だろ?

「うん、だってこの服ツェリさんがよく着てた服だものね。ツェリさんは私の憧れの女性だもん」

………リカちゃんは、あんな風にならないで欲しいなぁ。

「自分のお母さんなのに?」

“自分のお母さんだから”だよ!
自分の奥さんが、自分の母親みたいなんて嫌じゃないかぁ。

「そうかしら?ツェリさん素敵な人じゃない!」

…まあ、それはまた今度話し合うことにして。
話を元に戻すとね、お気に入りの服だからこそ特別な日にだけ着たいなって思ったんだ。
だから毎年この服を着てお祝いしない?

「ああ、なるほどね。うん、いいかも、それ!」

良かったー。
それにしたって1年早かったねぇ。

「本当ねぇ。年々早くなっていってる気がする」

これが歳をとるってことなのかなぁ。

「確かに、若くはないわよねぇ、私たち…」

………いやいやいやいや、結婚記念日に話す内容じゃないよ!
もっと希望に溢れた会話をしようよ!
ほら、今年はもう1人家族が増えるわけだしさ。

「そうねぇ。次は男の子と女の子、どっちだと思う?」

うーん、元気ならどっちでもいいんだけど、男の子も欲しいなって思うよね。

「うん、男の子も育てて見たいね」

でも、女の子ももう1人欲しいかなぁ。

「ええ?!どっち?」

だから、どっちも!
次が男の子で、その次が女の子。

「3人産むの?!」

嫌?

「嫌ではないけど…年齢的に3人目は出来ずらいと思うよ?」

そこは僕が頑張らせていただきますよ?
いっぱーい、ベタベタしようね?

「もう!ユーくんのエッチ!」

(*´∀`*) 〉デヘヘ





その後妻に誘われて釣りをして、娘と食事をして、さて次はイェルシーとアンブローズの誕生日を祝いに………






「ユーリ、練習試合の相手になってよ!」

ね、姉さん?!

「さ、行くわよ!」

いやいや、待って待って!
僕今日は忙しくて…

「はあ?」

いや、だから忙し…

「………で?」

………はい、行きます。

「ごちゃごちゃ言ってないで、最初っからそう言えばいいじゃないの!」


すまない、イェルシー。
君が熟年になった記念すべき誕生日だと言うのに…
来年は必ずお祝いするからな。
年々母に似てくる姉には逆らえないんだ。
顔じゃなくて威圧感が年々似てくるんだよ。
母に逆らえた試しが一度だってないように、姉にも逆らえる気がしないんだ………



「ちょっとユーリ!手加減くらいしなさいよ!」

手加減したらしたで怒るだろ!

「そっ、それは…そうだけど」

こっちは姉さんと同じ斧でやってるんだから、それが手加減だよ。

「はあ?別に斧でやってくれなんて頼んでないんだけど!だったら刀剣に持ち替えなさいよ、もう1回やろうじゃないの!」

ほらぁ、やっぱり怒るじゃん!
一体どーすりゃいいんだよ…







予定は少し狂ったが、アンブローズの誕生日を祝いに………

「ユーリくん、こんにちは」

ロ、ロドリゴくんの!


途端に僕の心臓は早鐘を打つように…
って、違う違う!
昨日ちょっとときめいちゃったのは確かだけど、そんなんじゃないから!
僕はいつだって妻一筋だしね💦


実は昨日は僕の誕生日だったんだけど、ロドリゴくんが食事に誘ってくれたんだ!
親友はたくさんいるけど、誕生日に食事に誘ってくれたのはロドリゴくんが初めてだった。
いつも僕の方から「誕生日だから食事に付き合ってよ〜」って、無理矢理祝ってもらうからさ。


だから昨日は感激してちょっとときめいちゃっただけでね…
でも…昨日のロドリゴくんはかっこよかったなぁ。
向こうからこっちに向かって歩いてくる様が、まるで王子様みたいでさぁ。
ロドリゴくんの周りにキラキラしたエフェクトがかかって見えたなぁ。


そう、僕がファンに対してやるファンサみなたいなね。
まさかロドリゴくんが出来るとは知らなかった。
しかも同性に対しても出来るなんて…
なんかちょっと悔しいけど、キュンとしちゃったんだよなぁ(  ´͈ ᵕ `͈ )♡


…って、ダメダメ!
僕には妻がいるんだし、ロドリゴくんにはヘドウィグちゃんていうめっちゃ可愛い婚約者がいるんだから!
ていうか、2人をくっつけたのは僕だしね!


「………くん?……ユーリくん?聞いてる?」

ぬわぁっ!
ご、ごめん、聞いてなかった!

「大丈夫?」

うん、全然大丈夫。
それで…なんだっけ?

「だから、釣りに行かない?」

ああ、釣りね!
行く行く!全然行く!

「良かった、じゃあ行こっか」

うん、行こう行こう。
………って、ぶわっは!

「!…ビックリしたぁ。どうしたの、急に?」

な、なんでもない。
ちょっと、その…喉の調子が…うん、気にしないで…

「本当に、大丈夫?」

うん、大丈夫大丈夫。
ほら、行こう、釣りに行こう。


…すまない、アンブローズ。
ロドリゴくんのかっこよさに動揺して、すっかり君のことを忘れてしまっていた。
来年…来年は必ず祝う。
許してくれ🙏💦💦






盛りだくさんの朝刻を終えたら、昼刻は子供たちの相手だ。
子供たちの相手とはいえ遊びではない。
ここ最近、休日になると子供たちの仲人をしているのだ。


前に妻にも説明したのだが、何も必ず付き合って欲しいとか結婚して欲しいとかではもちろんない。
ただ、選択肢のひとつとしてこの子どうですか?ってことなのだ。


お節介と言われればその通り。
余計なお世話と言われてしまえばぐうの音も出ない。

でも、この子たちが大人になった時に婚活戦線で苦労しないように…という親心のようなものなのだ。


僕自身、母のそんな想いで妻と出会ったのだが、今ではとても感謝している。
この子たち全員が僕のように幸せになれるなんて保証はないけれど、もし実際に付き合わなかったとしても、小さい頃から何故か一緒にいた幼なじみがいるってのは悪くないことだと思っている。
例えそれが異性だとしても。
いや、異性だからこそ、同性には相談しずらいことを相談したりできる貴重な存在となると思う。


そんな思いで身内や親友の子供を仲人しているってわけ。
休日返上でね😊


学校に通ってる子は探索に行けるから、一緒に探索で距離を縮めて。
まだ学校に通ってない子は、探索出来るようになる年齢まではピクニックで距離を縮めてもらう。


左上の黒猫服を着ている子たちは、甥っ子ヒースコートとカーメラちゃん。
右上の白猫服の子たちは、親友ラトランドくんの息子イシュルメくんとキャンディスちゃん。


下段は未就学児。
左が娘のベアトリスとボビーくん。
真ん中が姪っ子アニータちゃんとアベラルドくん。
そして右が親友ラトランドくんの娘アイーダちゃんと、親友ヴァレリアンの息子フェランドくん。


実は最後のアイーダちゃんとフェランドくんだけが同級生じゃないんだよねぇ。
なかなかアイーダちゃんに合う子がいなくて、ひとつ年上のフェランドくんを選んだんだけど…
1年先に成人したフェランドくんが、アイーダちゃんの成人を待たずに恋人を作ってしまって、もしアイーダちゃんが傷ついてしまったら…
そうなったら本当に申し訳ないって思うんだよなぁ。
出来る限りのことをするつもりではいるんだけどねぇ…





さて、昼刻中子供たちの相手をしたあとは、夕刻中妻と親戚の相手です。
最初にも言ったけど、妻が騎兵選抜に応募してしまったので、慌てて強化しているんだけど…
これがまたなかなか進まなくて(o´Д`)=з
しかも、今年は親戚のエルマ(従兄弟フランシスの娘で、去年成人したばかり)が魔銃志願したので、一緒に連れて行って強化しているのだ。


2人とも揃いも揃って1層の罠に掛かっちゃうくらいの実力。
ため息しか出ない…
エルマはまだ6歳だから仕方ないとはいえ、彼女はもう13歳だってのに…
いや、今まで妻を探索に連れていかなかった僕にも責任はあるんだけどね。
だって、彼女が武術職を希望してるなんて知らなかったしなぁ。

とはいえ、水没した遺跡で何とか明日までにとりあえず一勝出来るくらいにはしないと!

「ねぇユーくん。今日くらい探索休んでもいいんじゃない?エルマちゃんだって休日なんだからもっとゆっくりデートしたかったわよねぇ?」

「え?ああ、いや、まあ…」

あのねぇ…
そりゃぁ僕だって、今日は結婚記念日だしリカちゃんの誕生日だしね、去年みたいにいっぱいデートしたいですよ?
でも、そんな時間どこにある訳?
エルマはいいよ、1年かけて強くなればいいんだから。
だから今日も、来たくなければ来なくていいよって言ったよね?

「そうなの?」

「うん。でも私、強くなりたいから」

さすがエルマ、素晴らしい👏
なんとも立派な心掛けじゃないか!
リカちゃんはそうは思わないの?
例え休日だろうが誕生日だろうが結婚記念日だろうが、あちし強くなりたいから探索連れって!って、ならないの?

「今の誰?私、“あちし”なんて言わないけど」

ま、まあちょっとしたユーモア的なね?
それはいいとして、リカちゃんは今の自分の実力分かってる?

「まあ、強くはないけど…」

“けど…”なに?
そもそも、騎兵選抜に応募するなんて聞いてないからね?
聞いてたらもっと前から準備出来たのに。

「やっぱりユーくん、私が騎士隊入るの反対なんだぁ」

違う、反対はしていません。
今の言葉のどこに反対だと判断する言葉があったの?
ただね、事前に相談して欲しかったってことなの。
例えばね、相談してくれてたら今年じゃなく来年の応募を勧めたよ?
今年1年かけて強化したら、来年は確実に優勝させる自信があるからね!

「だって、突然思い立って…」

だから今こうやって、少しでも強くしようとしてるんじゃないか。
え?勝ちたくないの?

「勝ちたいに決まってるじゃない!」

そうだよね?
だったら休んでる暇ないよね?
試合、明日だよ?

「そ、そうだけど。明日の人はさ、私よりちょっと弱いじゃない?だから…」

その油断が命取りなんだよ!
去年のエウヘニョを忘れたの?
見てたよね?
だって対戦相手は君の妹だったから!

「う、うん。見てた」

結果はどうだった?

「イリアナが勝ったわよ?でも、イリアナ強いから…」

そう、イリアナちゃんは強いんだ。
だってぼくが鍛えたからね!
イリアナちゃんをアンブローズに紹介するにあたっては、将来の王妃になるわけだからそれなりの強さがないと行けないと思って、小さい頃から探索に連れていったからね!
でも、エウヘニョだって強かったんだ。
何故なら直前まで僕が鍛えたからね!
ステータス的には、イリアナちゃんよりエウヘニョの方が“ちょっと”強かったんだよ!
でも勝ったのはどっちだい?
イリアナちゃんだよ。

「そう、だけど…」

それにね、例え騎兵選抜に優勝したとして、その後どうするの?
そこがゴールじゃないんだよ?
騎士隊に入ったら、周りは君よりずっと強い人ばかりなんだ。
そんな甘い世界じゃないんだよ!
僕は小さい頃から鍛えられて、ステータスはオールカンストしてるけど毎日探索にしてるよ?
何故だか分かる?
騎士隊のみんなが探索して腕を磨いてるからだよ。
少しでも探索をサボればあっという間に負けちゃうんだよ。
そういう世界なの!
この間亡くなったウルリーケ叔母さんだって、長い騎士隊生活の中で隊長になれたのはたった1回だ。
それも1年で交代させられた。
あの人だってオールカンストしてるからね?
それだけで厳しい世界なんだよ?
そんな世界に足を踏み入れようとするなら、たかだか1日1回の探索で音をあげない!

「…はい」

分かったら前を見る!
敵来てるよ!
ほら、エルマもぼーっとしてないで銃構える!
ほらほらブレてる!
ちゃんとこうやって固定して!
よーく狙う!
リカちゃんも、握りが甘い!
ちゃんと握ってないと滑って刃の入りが甘くなるんだから!

「はい!」

「はい!」

はい、じゃあ攻撃!

い!」






ようやく探索が終わったら、僕は走って噴水通りへと向かう。
今日は本当に忙しい。
でも、1日の最後はまた誕生を祝うのだ!
親友エウヘニョの第一子が産まれる。


ギリギリ間に合って、僕は小さな命の誕生に立ち会わせてもらった。
元気な泣き声をあげて産まれてきたのは、父親のエウヘニョと同じアッシュ色の髪の毛をした男の子だった。


両親共に黒い目をしているが、その子は青い目をしていた。
ああ、なんて可愛いんだろう。
エウヘニョも感激しているようだ。

名前、決めてあるのか?

「ああ、男の子用と女の子用を何個か考えてたんだ。最終的には顔を見てから決めようと思ってさ」

それで?

「うん。ブレンダン。ブレンダン・ブランドル」

ブレンダンかぁ。
いい名前だな。


エウヘニョの奥さんモネちゃんもニコニコと笑っている。
名前が気に入ったようだ。


僕は帰る前にブレンダンくんを抱っこさせてもらって、お礼にブレンダンくんに木剣をプレゼントした。


それにしても、ブランドル家は男系家系らしい。
サナさんは男の子2人産んで、その男の子が2人とも結婚して産まれた第一子が共に男の子。
もうすぐヴァレリアンの第二子が産まれるけど、また男の子だったりしてね😊







はぁ、本当にあちこち動き回った1日だった。
さすがの僕ももうクタクタ。
明日はリカちゃんの試合だけど、僕の方も騎士隊トーナメントの開会式があるから見に行けないんだよなぁ。
とにかく、お守り渡して勝てるように祈るしかないなぁ。


ふわぁ〜あ٩( ´⚰︎` )۶
もう寝て、明日に備えなきゃ。
おやすみ〜(o_ _)o.。oOOグゥグゥ・。・。・。zzzZZZ