253年1日

僕の名前はユーリ・レヴァイン
247年3日生まれの、現在5歳。


なぜ唐突に自己紹介を始めたのかは、正直自分でもよく分からない。
何だかよく分からない力によって、自己紹介しなければならない…と強制されているみたいに感じるが、きっと気の所為だろう。
僕は今日成人する。
朝食の席で「大人になったら、バグウェルになるよ!」と、馬鹿なことを言っていようが大人になる。


その前に新年祝賀を見に行こう。
やはり新年といえば新年祝賀を見なければ始まらない。


金色の鎧を着ているカッコいい男が僕の父キース・レヴァインだ。
そして何を隠そう、玉座に鎮座まします我が国の国王サラレギー陛下は僕の伯父だ。
母の兄に当たる。
母曰く、
「ほんと、サラ兄様ったら顔だけはいいんですもの〜」
だそうだ。
「だけ」に力を入れて言うあたり、妹でなければ不敬罪に当たりそうだ。
そんな事を考えていたら、あっという間に新年祝賀は終わってしまった。


エルネア城を出て、成人式まで何をして暇を潰そうか考えながらプラプラと歩いていたら、足は自然と郊外通りに向かっていた。
あの子の家がある、郊外通り…
今日あったあの子は、どうしてだろう、やたらと可愛く見える。

今日は一段と可愛いね!

フレデリカちゃんは一瞬固まった…ような気がした。
でもすぐにいつもの笑顔で
「ありがとう」
と言って、去っていった。

僕は何かおかしなことを言ったのだろうか?
本当のことを言っただけなのに…



成人式が始まった。
僕は一生懸命学校に通い、両親に頼まれたお使いをこなし、宿題の提出も怠らなかったので、卒業生代表という大役を務めさせてもらえた。

母が心配そうに見ていたけれど、僕は間違えることなく感謝の言葉を述べることが出来た。
少し緊張したけれど、とても誇らしい気持ちだった。

成人式を終えると母がやって来た。
「まあ、キースくんそっくり!」
母にとっては最大級の褒め言葉だ。
僕はまだ自分の顔を見れてはいないけれど、母がそう言うのならばかなりかっこよくなったのだろう。
いや、もしかしたらお父さんよりかっこよくなったかも?なんて…

「ん?」

いや、だから、お父さんよりかっこよく…

「ん?」

お父さんより…

「ん?」

お父さんはこの国で一番かっこいいもんね。

「まあユーリくんったら!そういう本当のことはあまり大きな声で言ってはいけませんわ!謙遜って言葉を覚えなければなりませんわよ!うふふふ」

………はい。

「ではわたくし、キースくんとデートに行ってまいりますので」

デートって、またお風呂?

「いいえ、ゲーナの森」

…いってらっしゃい。

母にとっては探索もデートのうちなのだ。
この生粋のお嬢様は、いつだってスケールが違う。


母と別れた僕は玉座の間をキョロキョロと見回した。
あの子は何処だろう?
あの子は大人になった僕を見て、かっこいいって言ってくれるかな?
あ、いた!


綺麗な長いブロンドの髪をなびかせて、あの子は…いや、彼女はこちらを振り返った。
そして、朝と同じようにニッコリ笑った。

「成人おめでとう、ユーリくん」

うん、フレデリカちゃんもね。
ところでさ、この後2人で…

そこまで言って、僕は慌てて口を閉じた。
フレデリカちゃんが首を傾げてこちらを見ている。
僕は今、何を言おうとした?
分からない。
分からないけど、今は言ってはいけない気がする。

この後ハーブでも摘みに行かない?

彼女は何故か少し残念そうな顔をしてから、
「いいわね!行きましょう」
と、歩き出した。





たっぷり1刻ほどハーブ採取にをしてから、僕たちはまたねと言って別れた。
「またね」と言えることが、何だかとても嬉しかった。




最近手に入れた洋服に着替えた僕は、フレデリカちゃんにも同じ服に着替えてもらった。


彼女は少し照れくさそうに

「似合う?」

と、聞いた。
僕は何だか胸がいっぱいになってしまって言葉にならず、ただ頷いただけだったけど、彼女嬉しそうに笑った。
この後どこに行くのか聞いてみたら、彼女は

「内緒♪」

と言って、去っていった。
彼女は小さな頃から秘密主義だ。