3月にネトレプコが来日するそうです。チケットはすでに売り切れ。トリフォノフの演奏会もいけませんでしたが、ネトレプコもチケットが取れず。
腹いせにトリフォノフのアルバムを聴きます。
ロシアのピアニスト、ダリール・トリフォノフによる、ロシアン・アルバムの「シルバー・エイジ」。第1次世界大戦からソヴィエト時代にかけて、世界的にロシアが、音楽において、最も前衛的であった時代をシルバー・エイジと名付け、その代表的作曲家である、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)、アレクサンドル・スクリャービン(1872-1915)、セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1951)のピアノ曲を集めています。
要はロマン派の影響を排した後の音楽世界を、集約している所にこのアルバムの魅力があるわけで、無調音楽のように聴いていてつらくない、モダニズムの世界を堪能できます。こういう選曲は面白いです(最近の国際情勢のせいでロシア音楽の文句をいう方も多いですが、個人的には全く下らない意見だと思うので、一蹴させていただきます)。
4839643-4839645。
(スタンパー、びりびりに破れているように見えますが、こういうデザインです。)
結構な名盤だと思うんですが、日本ではほとんど話題にもならず。グローバル評価の方が高いと思います。CDだと2枚組、自分はLPで4枚組。
ドイツ式ワーグナーの音楽が主流であった、後期ロマン派に止めをさしたのが、ロシアのストラヴィンスキーといわれています。ワーグナー主義の末裔であるR・シュトラウスから、真の大作曲家として、時代のバトンを受け取ったのが、ストラヴィンスキーで、片足をアヴァンギャルドな世界に突っこんだ、20世紀のモダニズムの代表格です。
ここに収められているのは「火の鳥」や「ペトルーシュカ」など。トリフォノフは、彼一流の技術的な冴えで見事に弾き切っていきます。
スクリャービンはストラヴィンスキーとほぼ同時代の作曲ですが、もっぱらラフマニノフと比較される作曲家です。彼もラフマニノフ同様ピアノ音楽を得意とし、民族的というよりは、一種の神秘思想をかたどった独特な音楽を書きました。それだけに独創性があります。しかし、ラフマニノフは大衆受けをしますが、スクリャービンは思想的に難解というところ。去年はスクリャービン生誕150年でスクリャービン・イヤーでしたが、ほぼ世間は無視。彼は主にピアノ作品の作曲家でした。演奏の大家ではホロヴィッツが良く演奏しています。最近ではこのトリフォノフでしょうかね。聴けば良い曲が多いと思うこともあろうかと思います。
このアルバムに収められているのは、彼の唯一の「ピアノ協奏曲」。これは聴きやすい美しいコンチェルトだと思います。ショパンのものに近いともいわれます。個人的にはラフマニノフのコンチェルトよりもずっと美しいと思いますね。少しとりとめのなさはありますが、好きな曲です。
セルゲイ・プロコフィエフはピアノ・ソナタ8番と、ピアノ協奏曲2番を収録。ソナタは戦時中に書かれた、戦争ソナタの1曲で、プロコフィエフらしい鋼のような音色、無機質な質感が、静かに異様な雰囲気を作り出す曲です。戦争中の不気味な雰囲気を表現していると思われます。
ピアノ協奏曲2番はプロコフィエフの若書きの作品で、ロマン派の語法を避けた、シニカルで金属質の音色を基調としつつも、アヴァンギャルドになりすぎる手前で旋律を寸止めし、総合的に見ると、何かロマン派の音楽を聴いたような雰囲気になる、不思議な曲。諧謔性や皮肉な感触などが盛り込まれますが、第1楽章などはオーケストラがまるでマーラのような迫力も見せます。ロマン派の曲ではないのですが、結局背後にロマン派の影を宿している曲で、プロコフィエフ独特の特性が垣間見れます。
Yuja Wang plays Prokofiev : Piano Concerto No. 2 in G minor, Opus 16 - YouTube
↑、ユジャ・ワンによるプロコフィエフのコンチェルト2番。
トリフォノフによる、このアルバムは面白いと思います(*^^*)。
ヒラリー・ハーンによるプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲1番。45回転盤のレコード。
4839849-4839850。
プロコフィエフの曲の中でも、このヴァイオリン協奏曲は深みのある名曲だと思います。冒頭の懐かしいメロディに始まり、甘すぎない構成の名曲です。
ヒラリー・ハーンは昔よりも演奏の味が濃くなった気がします。曲によっては、ちょっとくどいと思う時もありますが、プロコフィエフでは曲調のせいもあって割とすっきりと聴こえます。音色にそれなりの深みを感じさせるので、中々に美しいです。
クラシック音楽は収録時間が長いので、アナログ・レコードは圧倒的に33回転盤(1分間に33回転する)が多いです。収録時間の少ない、45回転盤は数が少ないです。ただ、45回転するということは、要は同じ長さの音楽であれば回転が速い方が、レコードの溝を長く利用できるわけで、音質が向上するという長所があります。
33回転を聴いていると時折、レコード特有のザラザラ感が気になることがありますが、45回転盤はそれが無くなります。
それでも本物のコンサートに行った後はどんなレコードでも聴く気を無くすときは結構ありますがね。45回転の方が実演に近い感じですね。
プロコフィエフのVコン | ヒマジンノ国 (ameblo.jp)
↑、おまけで、プロコのVコンについての過去記事です。