『一夜』



課長と居酒屋に入った。2階の個室が用意されていた。1階ではお客さんでザワザワとしていたが、2階は静かなもの。



「お酒飲めないんだよね、何がいいかな」と課長が言った。



せっかくなので生ビールをあたしも頼んだ。ゆっくり飲むと大丈夫だから。



「よかったですよね」と契約にこぎつけたことを言ったら、「取れる、取れないは大きな違いがある。仕事の話はやめよう(笑)」と課長が言う。



課長がバカ話を始める。それにあたしは笑い転げた。このギャップがとても素敵。課長にはメリハリがある。それが顧客や周りの人を引きつけるのかも知れない。お昼とは違い、会話が成立して楽しい時間となった。



「そろそろ出ようか」と課長。2時間半いた。時間のことなんか全然わからなかった。そのくらい楽しい時間だった。



正直、帰りたくないと思いながら、課長が会計を終えた。



お店を出て、飲食店の脇の小さな路地を入ると、課長があたしを抱きしめ、キスをした。



突然のことでびっくりした。そして、キスをしていることに頭の中が舞い上がった。



「ホテルへ行こう....」と耳元で小さな声で言われた。顔が熱い....完全にあたしはやられたようだ。



課長はあたしの手を握り歩き出す。そして、ラブホテルの中へ....



大好きな人にキスをされて嬉しい...何度もキスをされてあたしは正常ではいられない.....



胸を触られ、履いていたデニムのボタンを外されチャックを下ろされ手が入ってきた時に、ハッとなった。



(ダメだよ、セックスしたら絶対にダメ....)



と、我に返った。



「ダメです....」とあたしが言うと、課長の手が止まり抜いた。



「こういうのはあたしはダメです。ついてきたのにここでこういうこと言うのはおかしいかも知れないけど、やっぱりいけないと思う。ちゃんと話さないと....」と言った。



課長は、「そうだよね、悪かった」と言ってあたしから離れてソファーに座った。



あたしは服を整えてベッドの端のソファーに近い所に座り、自分の思いの丈を話した。



課長のことがずっと好きだったことも、それは今もそうだということ。



課長も、あたしのことが気になっていたという。それが段々とあたしのことが好きになってとっても好きだ言う。



素直に嬉しかった。でも、課長には妻子がいる。結ばれるわけにはいかない。そのことを話した。



以前から課長と奥さんの関係は破綻していると言う話は聞いていた。でも、それはわからないし、離婚していないわけだからその確証はどこにもない。



課長は噂通り、奥さんとの間は冷めていて夫婦関係は破綻していると言う。そして、奥さんには男がいるということも。でも、子供が二人いて、別れることはどこか躊躇いがあったという。でも今は離婚することを決めていると言う。課長の一つ一つの言葉には嘘はないと思って聞いていた。そして、「そうだよな、きちんと整理しないと信用されないよね」と課長が言った。



もう深夜だった。あたしはそのままベッドで眠り、課長はソファーで眠った。





次の日、朝早く起きてホテルを出るときに課長から、「自分のことはきちんとする。だから俺と付き合ってほしい。返事は急がない、よく考えてほしい」と言われた。



そしてタクシーを掴まえ、それぞれ帰路に。



自宅に戻りシャワーを浴びた。すべてが突然のことで頭の中が整理できない。それでも一つ一つ考えた。



好きなことを押し殺すか、それとも課長を信じて気持ちに正直になるか、、、



会社へ行くと、課長が既に来ていた。



「おはよう、大丈夫?」と課長が話しかけてきた。



「おはようございます、昨日はご馳走さまでした。大丈夫です」と答えた。



H美が来て、「おはよっー、昨日どうだった?」と早速聞いてきた。



「ご飯を御馳走になって帰ったよ」と言った。



「そうなの?何もなかったの??」とH美の残念そうな言葉。



「何もなかったよ、あるわけないじゃん(笑)」とあたしは答えた。



ずっとどうしたらいいか考えていた。



H美は何かあったと感じていたのだろう、



「真緒?自分の気持ちに正直な方がいいと思う....何があっても後悔しない為にもね」



と、そっと言った。



あたしは決めた。2年以上想い続けて、ここで正直にならないなんてきっと後悔する、だから課長の言葉を受けよう。と



夕方、廊下で課長と出くわし、「今夜、お時間ありますか?もしあるなら(課長が滞在している)ホテルへ行きたいんです」と言った。課長は、「うん、待ってるから」と言った。



あたしは退社時間を過ぎると会社を出た。そして、自宅へ帰り、シャワーを浴びて下着を変えた。服のコーデをして、ホテルへと向かった。



ホテルに着くと、フロントの脇に階段があって自販機コーナーもあることから自販機コーナーへ行くふりをして階段をのぼり部屋に行くことができた。そして、課長の部屋のドアをノックした。



課長が出てきた。完全にプライベートな課長。「こんなのしかないけど」とペットボトルを差し出した。



あたしはすぐに本題に入った。課長もそれを望んでいたはず。



課長の気持ちを受け止めた。



課長はちょっとびっくりしてあたしを抱きしめた。あたしも笑って抱きしめた。



そして、そこままセックスへ流れていく。



部屋の明かりはあたしは恥ずかしく、「電気消して....」と言うと、「消したら身体が見えなくなる.... 」と言う。そのままセックスをした。こうなることは課長はわかってなかったのか、ゴムがなかった。「気をつけるから」と言ってそのまました。



オトナだった。そして、今まで感じたことのない感覚があって、あたしはその感覚に何もかも忘れさせてくれるような時間だった。その日は何度もKissをし、何度もセックスをした。



次の日、目が覚めると、ホテルの部屋だ。



(泊まったんだっけ..)と記憶を思い出した。前の日の寝不足と昨夜の寝不足でぐっすり眠っていたようだ。上半身を起こすと裸だった。課長が気づいて、「おはよう」と言った。「おはようございます」と言うと、「敬語やめない?(笑)」と課長が言った。



あたしは下着と服を身につけ、ホテルを出た。今日も仕事だ。タクシーで自宅に戻りシャワーを浴びて急いで会社へ向かった。



会社での課長はいつもと変わらない。変わったと言えば、あたしと付き合っているということ。



H美が「なんか吹っ切れた?」と言う。そして、「やったな(笑)」と言った。



こうして交際がスタート。



あとは彼がどういう身辺整理の仕方をするか....