─ お婆ちゃんから受け継いだ、命の知恵 ─
「たなごころ」とは、手のひらのこと。
受け取る、受け入れる、包み込む手。
そのたなごころが最も生き生きと輝く場所——
それは台所です。

ここに絵で描いたおばあちゃんは、
私の中の想像が少し混じっています。

夏の間、私が小学校へ上がる頃に
過ごしたおばあちゃんとのことを思い出しながら
大人になって料理をしていたことを絵にしました。

そのおばあちゃんは、
お爺ちゃんの後妻さんで、父を育ててくれた人です。


    

お婆ちゃんの手のひらが教えてくれたこと



(おばあちゃんと孫が台所で梅味噌を作っている場面…想像で)


お婆ちゃんの台所には、
レシピ本がありませんでした。
目分量で、音で、香りで、
手のひらの感触で——
すべてを感じながら料理をしていた。
「この梅の固さになったらいい頃合い」
「お味噌の香りが変わってきたら仕上がり」
それは言葉では伝えられない、
たなごころの知恵でした。
お婆ちゃんからお母さんへ、
お母さんから娘へ——
台所は、命の知恵が
手から手へ渡っていく場所だったのです。

    

玄米を炊く、音と香りに耳を澄ます



(土鍋で玄米を炊く・音と香りに耳を澄ます)

玄米を土鍋で炊く時、
私はいつも音に耳を澄ませます。
最初のぐつぐつとした音。
やがて静かになる蒸らしの時間。
ふわっと広がる香り。
電気炊飯器のように
ボタンを押して待つのではなく、
自分の感覚を使って、玄米と対話する。
これが「たなごころで炊く」ということ。
曾祖父たちが説いた「おしものの道」——
食べ物の道——は、
こういうことだったのかもしれません。


    

手から手へ——梅の知恵



(おばあちゃんと孫の手が重なる「手から手へ」)

梅をすり鉢でつぶす時、
おばあちゃんの手と私の手が重なる。
「力を入れすぎないで、ゆっくりと」
その感触が、手のひらから伝わってくる。
梅干し、梅酢、梅味噌、梅エキス——
日本の台所に昔からあった梅の知恵が、
こうして手から手へと渡っていく。

おばあちゃんは言います。
「まお、大切なのは、どんな食材にも命があったということを忘れずに、丁寧にお料理しようね。」

父を産んで直ぐに
彼方の世界に旅立ったおばあちゃん
その父を育ててくれた。
私が幼き時の夏だけの思い出のおばあちゃん。
私の心にはしっかりと残っています。

    

キッチンファーマシーとは、たなごころの復活


「キッチンファーマシー(台所の薬箱)」——
私がこの活動を始めたのも、
失われつつある台所のたなごころを
現代に取り戻したいという想いからです。
国民健康保険制度が始まったのは1961年。
それ以前は、医療が身近ではない時代。
誰でもが台所のたなごころで
家族の未病を整えていた。
その知恵が今、
必要とされています。
台所は、薬箱。
手のひらは、癒しの源。
あなたの台所にも、
そのたなごころはすでにあります。


次回はたなごころ②「曾祖父のたなごころ」——
江口鎮白と江口俊博が手のひらに込めた想いをお伝えします。
続きはまた🌿