本日のアシスタントはフカミドリの矢巻さん。

 

哲学芸人マザー・テラサワさんの課題図書をまったく読んでこなくてもいい月2読書会。
学術書を取り上げる思想のユーモア編と漫画を取り上げるユーモアの思想編の各1回ずつ。
大学の公開講座よりも断然おもしろくてとっつきやすいので超おすすめ。
ワンコイン500円でおやつ付きでお得すぎてなんか申し訳ないほど。

 

 
マザー・テラサワさんのネタで笑うにはちょっとばかり知識が必要になるので
そういう意味ではお客を選ぶ芸。”お笑いライブ”に来るサブカル女子よりも
オフィス北野の”寄席”に来るおじさん向けかな。客層もかぶってそう。
北野の寄席と同じく、この読書会のお客さんも男性が多い。
 
マザー・テラサワさんのネタを見ていると、いとやんごとなき冷泉家を見下ろし、
その向こうに京都御所が一望できる大学の研究室で大学院生だった
私たちがゲラゲラ笑い転げていた知的だけどアホな冗談を思い出して懐かしくもある。
 

本日の課題図書は、ベネディクト・アンダーソン著『想像の共同体-ナショナリズムの起源と流行』

 

まあ一言で片づけてしまえば、「国というシステムは共同幻想なのですよ」ということ。
そして、その共同幻想がどのような手段で補強されているのかというお話だ。
 
この手の話で毎度思うのは、共同幻想は信じる人が多数派であれば成立するが、
少数派であれば不成立だということ。キリスト教なんかがいい例だ。
ゴルゴダの丘で処刑されたたった一人のユダヤ人が言い出したことがついには宗教となり、
今となっては極東の国でも西暦で日付を表すほどになっている。
 
国の統一は言語の統一である。フランコ独裁時代のスペインもそうだったし、
韓国や台湾で日本語教育を押しつけた大日本帝国もそうだった。
ただインドネシアに関しては勝手が違い、島ごとに言語が異なるため、
日本語を強いるどころではなく、まず国としての共通言語をつくらせた。
それが、マレー語をベースとした人造語であるインドネシア語だ。
 
インドネシアの1960年代軍事政権下での民兵による共産主義者
(の嫌疑がかかった人々)狩りを描いた映画『アクト・オブ・キリング』を見たときも、
昨今のフィリピンのドゥテルテ大統領の蛮行を見ていても思うことなのだが、
宗主国につくられた海賊版の国家ほど司法が正しく機能しない傾向が強くある。
 
だから、今回の課題図書の著者であるベネディクト・アンダーソンの専門が、
東南アジア政治、特にインドネシア政治というのがすとんと腑に落ちた。
 
共同体、その最たるものが国なわけだが、人間の集団が農耕なり、狩猟なり、
なんらか生きるための生業を営むには共同体は必要不可欠なわけだ。
原始共産制が貨幣経済になり、共同体が国になるにあたって、
体裁を保ち続けるためには言語なり、宗教なり、さらなる共同幻想を必要とする。
 
特に元からさまざまな民族がいる国、移民が流入する国では、
国旗とか歴史的遺跡とか象徴的景観とか強いスポーツチームとか、
国民の精神的な拠りどころとなるなんらかのシンボルが必要だ。
 
革命後、キューバはいっそのこと原始共産制に戻っていれば、
案外うまいこといったんじゃないかと空想することがあるが、
人類史上、原始共産制に退行した国はない。もし退行するのであれば、
国を国足らしめている共同幻想を極限まで減らすことになるんだろうけど。
 
てなことをあれこれ今回の読書会に触発されていろいろ考えた。
自分が今持っている知識を確認したり、漠然と頭の中にあることを明文化したり、
名称を与えたりするのによい機会だ。自分で考えるためのヒントになる。
ただ漠然と聞いてるだけでもinterestingとfunnyの両方の意味でおもしろい。
 
特に今回はアシスタントのフカミドリ矢巻さんが卑近な例を挙げるのがとてもうまかった。
彼の屈託ない受け答えを見ていて、なんで矢巻さんがカズさんのお気に入りなのかが
わかったような気がした。おもしろかったのでまたアシスタントに矢巻さんを呼んでください。
 
4/22『聖域ライブ』では「SMAをクビになった芸人はなぜかオフィス北野を目指す」、
今日は「人力舎をクビになった芸人はマセキに入る」という話になった。
「ああ、この人おもろないなー。年も年やし、はよ辞めたらええのに」と
個人的に私が感じている芸人さんは十中八九ケイダッシュステージの所属やけどね。
 
ランジャタイのいたばしハイライフプラザ会議室のトークライブと同じく、
マザー・テラサワさんの高円寺北区民集会所和室の読書会も楽しみにしている。
ちなみに、ランジャタイもマザー・テラサワさんもオフィス北野所属である。
 
次回は以下のとおり。場所はいずれも高円寺北区民集会所和室、料金は500円です。
5/7(日)手塚治虫『BLACK JACK』~ユーモアの思想編~(19:25開場/19:45開演)
5/21(日)ミシェル・フーコー『狂気の歴史』~思想のユーモア編~(18:40開場/19:00開演)