最初の生カズレーザーはなかの芸能小劇場の『笑いの泉』で見た。
芸小のキャパは110席。広くて傾斜がついているので地下ライブっぽさはまったくない。
のっけからここでランジャタイの漫才と出会ってしまうわけだが、彼らについてはまた追々。
メイプル超合金は完全に策士カズレーザーの戦略勝ちである。
赤い彗星シャアのザクとエバンゲリオン初号機のようなビジュアルは、
二人とも体格がよいこともあってとにかく華がある。まさにテレビ向きだ。
ボケとツッコミのごく普通の漫才がテニスのラリーだとすると
メイプル超合金の漫才はカズレーザーの壁打ちである。
もちろんプレイヤーがカズレーザーで安藤なつさんが壁。
かみ合ってるようなかみ合ってないようなぎりぎり成立してる会話がおもしろい。
彼ら自身も自覚してるに違いないが、漫才はちっともうまくはないのだ。
まずカズレーザーは滑舌がそんなによろしくはない。
ピン時代の動画をあさるとすぐにわかるが、彼はちんたら長くしゃべるとおもしろくない。
なぜ先にオチを言う? 全然おもろうないけど、くっそかわいい♡
ネタにしてもバラエティでのコメントにしても彼は長くはしゃべらない。
毎度インパクトのあることを短く発する。これはある意味、しゃべくりよりも難しいが、
頭の回転が速い彼はこちらの方が圧倒的に向いている。バラエティ向きだ。
メイプル超合金の漫才は自分たちの弱点をよく知っているからこそ生まれたスタイルだ。
「ジークジオン!」で始まり、「ズッパッパー」で終わるのも覚えられやすい。
その間に小ネタをうまくはさんでいけば、カズレーザー曰く「ぎりぎり漫才」のできあがり。
まさに最小の労力で最大の効果を上げている。あっぱれとしかいいようがない。
でも彼らの漫才のスタイルは飽きられるのも早いと思う。
昨年末の時点でネタ中に「ズッパッパーをいつまで続けるべきか」てなことを
言っていたのは、あれはカズレーザーの本音だったんじゃないだろうか。
実際に2015年はインパクト一発でM-1ファイナリストになったけれど、
2016年は敗者復活戦で敗退している。世の中というものは実に飽きっぽい。
M-1グランプリのファイナルはいろんなタイプの漫才を揃える傾向があるから
2015年は策士カズレーザーのM-1対策がまんまと当たったのである。
漫才のスタイルはともかく、メイプル超合金の消費期限が切れたわけではない。
これだけ売れたらもう漫才やらなくてもいいとも思うのだけど、
今年初めに吉本の舞台にゲストとして立ったメイプル超合金は、
「銀シャリみたいなしゃべくり漫才をやりたい」と言ったのだった。
さて2017年のM-1グランプリでは彼らがどんな漫才をやるのかが楽しみである。