[847]
吾植之 庭乃秋花 今雖咲 己而狩波 辛物鴨
わがうえし にはのあきはな いまさけど おのがでかるは からきものかも
[848]
此頃 庭乃秋花 今咲流 吾手折而 将贈念
このころの にはのあきはな いまさける われはたおりて おくらむともふ
[849]
射干玉 夜開去歳 峨奈杜 幾許騒 暁烏鴨
ぬばたまの よのあけぬとし がなのもりに ここだもさわく あけがらすかも
[850]
雲波 今社凪 十六夜 月眺乍 今宵更往
くものなみ いまこそなぎて いざよひの つきをながめつ こよひふけゆく
[851]
奥山 咲流一花 吾情 月裏成 人念鴨
おくやまに さけるひとはな わがこころ つきのうらなる ひとのもひかも
[852]
真十鏡 見不飽背子尓 遺居而 病之渡尓 此月渡
まそかがみ みあかぬせこに おくれゐて やみしわたるに このつきわたる
[853]
秋去 野乃辺染之 黄葉 落往頃尓 冬将来
あきさりて ののへをそめし もみぢばの ちりゆくころに ふゆのこぬらむ
[854]
此辺 枯野出 草芽 儚念 吾将落
ここのへの かれのにいづる くさのめの はかなきもひと われもちるらむ
[855]
如此許 宴楽 妹見毛 吾恋背子乎 念者悲毛
かくばかり えんはたのしく いもみるも わがこふせこを もへばかなしも
[856]
昨風 障茂吹与 更尓吹 然者吹 吹者吹敷
きそのかぜ さはるもふけよ さらにふけ さらばなほふけ ふかばふきしけ