Nationの記事を訳したので載せときます。
東京オリンピックについて、安倍首相について、辛辣に批評しています。
日本によるコロナウイルス対応による記事について、twitter上で海外からぶら下がるリプライを見ても、海外からは大体この記事と同様に見られています。
「感謝の環」なるイラストについては今回初めて知りました。率直に、きもちわりーと思いました。復興モニュメントを作っている若者が、じゃないですよ。こういうことを発想する大人が理解できなかったのです。
やっぱり、オリンピックにつぎ込む費用があれば被災地の支援に回してほしかった。
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新型コロナウイルスにあばかれた、2020東京オリンピックを中止すべき理由
東京オリンピックはもともと安全ではなかった。現在、さらに安全度は下がっている。
by Dave Zirin, thenation.com
「アニメ」の予言通りになるのだろうか? 日本アニメの傑作『AKIRA』(1988)では、2020年のオリンピックが東京で開催されると予言されていた。「東京オリンピック開催迄あと147日」という看板の下に「中止だ中止」と落書きされたワンシーンがあるのだ。現在、東京夏季オリンピックまで約140日。COVID-19すなわち新型コロナウイルスの発生のせいで五輪の中止もしくは延期が現実味を帯びてきた。
スタンフォード大学のイヴォンヌ・マルドナード教授もオリンピックについてこう述べている。「多数の人々を集め、世界中に送り返す。感染を広げるとしたらパーフェクトなやり方です」マルドナード教授は感染症の専門家である。「本気で病気を広げたいならその方法がいいでしょうね」
少なくとも国際オリンピック委員会の一人、カナダのディック・パウンド氏は教授と同意見のようだ。AP通信社のインタビューに答えて、彼は国際オリンピック委員会(IOC)は5月末までに東京五輪を敢行すべきかどうか決定する必要があるのでは、と警鐘を鳴らしている。「その頃には関係者らも改めて考えねばならないはず。『十分状況がコントロールされていて東京に安心して行けそうか、それとも無理か?』」と。五輪の延期――橋本聖子オリンピック担当大臣が今週発言した提案だ――も可能性が出てきたが、現実的ではない。なぜなら、延期すれば米国のカレッジフットボールや秋季ナショナル・フットボール・リーグのスケジュールに干渉するからだ。NBCがオリンピックにつぎ込んだ莫大な金額を考えれば――2011年には2020までの放送権に4400億ドル、2032年までのオリンピック放送権になんと7700億ドルを支払った――世界規模のパンデミックにならない限り、まず間違いなくオリンピック開催に向けて事をすすめるだろう。
しかし実のところ、コロナウイルスの大流行よりずっと前にオリンピックは中止すべきだった。オリンピック事務局と日本政府の委員会が人々の健康に留意しているならばなおのことだ。東京のオリンピック委員会は2011年に起きた「震災ー津波ー福島第一原発メルトダウン事故」という3重の大打撃からの「復興モニュメント」を詰め込み、今回の五輪を「復興オリンピック」と銘打った。感謝の環なるものを描いた奇怪な図(下記)すら作製した。「被災地」がオリンピックのアスリートを応援し、それが世界を「元気づける」という。そして「世界」はお返しに感謝を示し、それが被災地を「元気づける」。(この図は現在このウエブサイトに掲載)
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世界を「元気づける」「被災地」の図は東京2020のウエブサイトに掲載されていた
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無論のことながらこれは純然たるPRのための戯言である。私達は2019年7月に福島を訪れ、福島がオリンピックの道具として利用されていると激怒する地元民と話をした。放射能汚染土で膨れる重い大袋が積み上げられた「黒いピラミッド」も見た。打ち捨てられた民家や仕事場も目にした。どう考えても、オリンピックにつぎ込まれている莫大な費用はそちらに使うべきではなかったか。政府報告によれば費用は約3兆円、もともと東京オリンピックの予算は8000億円だったはずなのだが。
オリンピック責任者たちが福島住民に送ったのは物質的な支援ではなく、ただの象徴だった。来月にはオリンピックの聖火リレーが福島からスタートする。しかし最近、グリーンピースが聖火リレーのルート沿いに放射能のホットスポットがあることを発見している。オリンピック主催者らは福島県での野球やソフトボールの試合も計画している。要するに「復興オリンピック」なるものは残酷なジョークなのである。関西大学のスポーツ、ジェンダーとセクシュアリティ学を研究する井谷聡子教授が語ってくれたように「このオリンピックは一番必要とされている所から文字通りお金、労働力、クレーンを取り上げている」のだ。
コロナウイルスは独裁的な傾向を持つ議員らには好機だろう。大勢の健康に関わる危機は、無制約な独裁権の獲得に利用できるからだ。ブルームバーグ・ニュースは、日本の安倍晋三首相が以前から「不穏な独裁パターン」を示していると言及している。それに欲しい物を手中に収めるためには嘘をつく、剣呑な地を持っていることも明確だ。安倍首相は東京オリンピックを延期する必要はないと強硬だが、いかにも嘘つきの首相らしい。何しろ2013年に東京がオリンピック開催地に立候補した時、投票権を持つIOC委員が福島のことを気にすると、明らかに事実に反するにも関わらず状況は「コントロール下にある」と言ったのだから。安倍首相を始めとする当局者がコロナウイルスはオリンピックに影響しないと言っても、多くの人の耳には以前の空約束がこだまするだけだろう。
東京オリンピックが中止になっても、既にダメージは出ていることにも留意せねばならない。オリンピック施設を作るために一般の人々が土地を立ち退かされた。これはもうもとに戻せない。福島にもインフラが整備され、作業を担った作業員は既に被爆している。
以前の開催国に会場を移すのはどうだろう? ロンドン市長の候補者であるショウン・ベイリーはロンドンで開催してはどうかと提案した。しかし2012年の会場の多くは既に無くなり、オリンピック村として作られたアパートメントには現在住民が住んでいる。2016年の開催地リオは明らかに無理だ。各会場は多かれ少なかれ荒廃し、ブラジルは右派のヘイト的雰囲気(hatescape)にはまり込んでいる。オリンピック憲章に掲げられている高邁な指針とは全くもって調和しない。そもそもリオの住民、カリオカらはオリンピックが街に戻ってくることにはかけらの興味もない。オリンピック後、かかった費用の精算を助けることを渋ったため〈when they said they were unwilling to help them pay off 〉、IOCはリオに悪印象を残している。
オリンピック中止によって日本が受けるだろう経済的損失については、既に被っているとも言える。強制立ち退きに加え、オリンピック委員会は既にデベロッパーに驚くほど安価で土地を譲る契約を交わし、現在デベロッパーは選手村を建設中だ。これはウイルス騒ぎが起きても、オリンピックが中止になっても止まることはない。見通しは暗い。日本のためにもオリンピックを中止すべき理由が山積みだ。今回のコロナウイルスは、その理由を露見させただけなのだ。