注目の準決勝、韓国戦。
内容は決して良くはなかった。ただそれ以上に韓国のコンディションが悪く見えた。
やはりそこには24時間という大きなアドバンテージが大きな要因と思われる。

韓国は試合開始から1TOPの⑩チ・ドンウォンにボールを集め、そこにトップ下の⑬ク・ジャチョル が絡んでいく。
190cmの チ・ドンウォンは高さに加えて、足元も柔軟で前線の基点になっていた。
だが日本の対応もずさんだった様に思える。吉田の代わりにCBに入った岩政と今野、両SBとの連携が上手く取れていたとは言い難く、数的有利な状況であっにも関わらず比較的自由にやらせ過ぎていたし、競り負けたとしてもセカンドボールへの対応も遅い場面が多く見られた。韓国の二列目の運動量があまり活発でなかったからなおさらだ。
ただ局面局面では内田、長友が両サイドをしっかりと押さえ、パクチソン・イチョンヨンという韓国の生命線ともいえる両アタッカーに仕事をさせなかった事は大きい。また特に長友は延長後半で大多数の選手の足が止まる中でも、カウンターでサイドを駆け上がるなど豊富な運動量を嫌と言うほど見せ付けた。
今夏から共に欧州へと移籍し、普段から世界を相手にしている経験が存分に生きているのではなかろうか。

攻撃のキーワードは“縦パス”。監督がザッケローニになってからの攻撃の特徴を挙げるとすれば、以前より意識的に縦へのパス、楔のパスが増えている。遠藤を中心に、DFラインの今野からも縦に楔が入る。
また受け手、特に香川はDFラインとボランチの間のスペースで上手くボールを受けれるポジショニングを取る事が出来る。
従来の日本はポゼッション時、横パスを繋ぎながら、サイドサイドへ逃げていく傾向が見られた。
現在も、気が付けばこの傾向になってしまっている、という時間帯は多くあるのだけれど。」
前半のこの日最大のチャンスも遠から本田への縦パス、リターンを受けた遠藤から裏へ走る長友への縦パスから岡崎のヘディングへと繋がっている。

またこの日は(この日も)主審の判定が大きなキーとなった。
PKに関しては議論をすればきりがないが、お互い一つずつということで問題なしとしよう。
それ以上にこの試合の主審はとにかく笛を吹いた。少しの接触で倒れただけで笛を吹く傾向にあった。
日本、韓国、どちらに有利不利という訳ではなくである。それがこの試合の基準なのだ。
選手はそれをいち早く感じ取り、いつも細心の注意を払い、また最大限使用する必要がある。
延長後半ロスタイムの失点シーンは、あの場面で最もいやな事は状況をリセットされるセットプレーであったはずだ。
流れの中から単純に後方からロングボールを入れられることは、あまり怖くなかった。
交代して直ぐという事で主審の判定基準を肌で感じていなかったこともあるが、それでも本田拓は軽率であった。

それでも結果を出せた事はあまりに大きい。韓国相手ならば尚更である。
90分もしくは120分で決着をつけたかったのが本音だ。
だが是が非でも欲しかった3位以内を確定させてこと、確かな“個”の力を垣間見れたこと。
そして内容でも決して負けていなかったこと。
PKではあるが“勝利”という最大の目標を達成したチームには素直に拍手を送りたい。
決勝と3位決定戦では国民の注目度は天地の差だ。
またサッカーを好きな人が増える。
代表選手に課された大きな仕事の一つであろう。








アジアカップ準々決勝カタール戦。本大会は閑散とした会場での試合が続いていた日本にとっては、
開催国のカタール相手ということもあり初めて満員に近い会場での戦いとなった。
先発は怪我の松井に代わって好調の岡崎慎司、出場停止の内田篤人に代わって、伊野波雅彦。
予想通りの布陣である。
前半からホームの勢いそのままにカタールがプレッシャーをかけ、優勢に試合を進める。日本は2戦目、3戦目で見せたようなダイレクトパス、二列目の流動性がなくなり初戦の状態に逆戻りしてしまった印象にある。
先制点はカタール。ウルグアイからの帰化選手であるセバスチャンに、高いラインをオフサイドギリギリで破られる。
オフサイドを掛けそこねたのは伊野波が微妙に残っていたからで、ここは致し方ない。
問題はその後の吉田麻也の対応である。あれほど簡単に切替されシュートを打たれてはプレーが軽いと言わざる得ない。
この試合、吉田はセバスチャンとのマッチアップの中でCBとしての経験の浅さを露呈してしまった感がある。
ロングボールの落下地点の判断は悪く、セバスチャンに体を預けられ跳ね返すことが出来なかった。1枚目の警告もセバスチャンにしてやられた感が強い。ただ吉田はボランチからCBに転向してまだまだ経験不足であることを考ええると、
この試合は大きな経験となり、さらなるステップアップになるのではなかろうか。

攻撃陣で目立ったのは岡崎慎司。サウジアラビア戦から4-2-3-1の右MFを自分のものにした感がある。
左サイドでボールをキープできる香川真司がタメを作りそこから、もしくは一度遠藤保仁に預けて遠藤からのパスを右から対角線上に斜めの動きで裏を取りゴールを狙う。サウジアラビア戦の1点目の形である。
さらにお豊富な運動量で後半終了まで攻守に動き回る、現在日本でもっとも得点の匂いのするする男だ。

それでも全体的に低調な内容であった。この内容では決勝まで勝ち進む事は正直、厳しい。
準決勝ではやはり香川真司にゴールエリア近辺で“受け手”としての役割を如何に作れるか、がキーになると思う。
カタール戦ではボールロスト多く、2得点はしたもののまだどこかやりにくさを抱えながらプレーしているように見受けられる。
ただやはりワンタッチ目で前を向く技術はズバ抜けており、ワンプレーで決定的なチャンスを作ってしまう可能性を秘めている。
この試合で2ゴールを挙げた事で、精神的余裕が生まれれば尚更である。

岡崎慎司と香川真司。二人のシンジが決勝へのカギを握っている。

「我々はプレースピードを上げなければならない。」

ザッケローニはヨルダン戦後の会見で試合を振り返りこう語った。
確かにヨルダン戦はコンディション的にも、各下相手、ということも相まってスローなスタートをしたことにより、
全体的に単調なリズムで横パスが多く、ボールポゼッションは高くても相手を圧倒した内容では決してなかった。

迎えたシリア戦。負ければ勝ち抜けは厳しくなる状況である。
初戦と同様の先発で挑んだ日本は、開始早々から明らかに初戦と違っていた。
最も大きな違いはプレースピードである。
それにはパススピード、プレスのスピード、守⇔攻の切り替えスピード、全てにおけるスピードが初戦より勝っていた。
初戦後には試合内容に対して明らかに不満げな態度を見せたザッケローニは、おそらくこの3日間で選手に厳しく改善を求めたに違いない。さらに日本のプレースピードを上げる要因となったのは対戦相手のシリア自身も要因と考えられる。
初戦でサウジアラビアを下したシリアであるが、その想像以上に組織的でプレスが速かった。
(もちろん事前VTRで事前に研究していただろうが。)
チンタラと横パスを繋いでいる時間は無く、プレースピードを“上げざる得なかった”面もあるだろう。
そしてこの日、ザッケローニが指摘した修正すべき点を理解し最も実行に移していたのは遠藤保仁。
試合開始からとにかくダイレクトでボールを捌く。単純な横パスだけでなく、縦やサイドへの大きな展開も(おそらく意識的に)ダイレクトで繋ぐことで、攻撃のスピードを上げる意味でも、緩急を付ける意味でも非常に効果的であった。
初戦における失点の原因ともなった軽いディフェンス取り返すかのごとく、
この日の遠藤は改めてチームに不可欠な存在である事を知らしめるに値するプレーを披露した。
そしてもう一点ザッケローニが改善したであろう点は二列目の流動性である。
ヨルダン戦では定位置からポジションチェンジする場面などほとんど見受けられなかったが、
この日は香川が中央に、本田が右に、松井が中央に左にと頻繁に意識的にポジションチェンジを行った。

しかしそれでも前半に決めたゴールはわずか1点。2点目を奪えなかったことが後々の展開に陥るそもそもの原因だ。
特に前田遼一には幾度と決定的なチャンスがあった。決して調子が悪いようには見えないので、一点取れば本人も落ち着いてプレーできるのではないか。最終戦に選手を入れ替えるだろうが、ザッケローニには最終戦も我慢して使って頂きたい。

そして問題とされている川島退場のシーン。副審はオフサイドと判定した。主審はPKと判断した。
問題のシーンを見た限り、正直どちらとも取れる。要は最後が今野のバックパスと判断されれば、
オフサイドポジションだろうが関係は無い。
故にPKとなった事は仕方が無い。抗議をしても一度下された判定が覆る事は期待できない。
ただ長谷部や本田は猛烈に抗議をした。ベンチからコーチ陣までも飛び出してきて抗議をした。
それが良い・悪い、意味のある・ないではなく、どうしても勝ちたいというチームとして姿勢を示したことに大きな意味があり、
結果的に一体感を増大させる要素になっただろう。
2004年アジア大会で反日感情による完全アウェーの状況下で結束力を高めた様に。
またチーム力という意味では長谷部の影響力は絶大だ。W杯からのキャプテンマークは既に風格さえ漂い、
何と言ってもベンチの気持ちを理解している事だ。当たり前だがチームは11人だけでは成り立たたない。
その当たり前のことを当たり前に理解し、行動で表しているのが長谷部。
チーム内での信頼は相当なものではないだろうか。

最終的にまたも微妙な判定により辛くも勝利を収めた。
最終戦のサウジアラビアに引き分け以上で、自動的に勝ち抜けとなる。
1戦目から2戦目と確実に進歩を見せた日本。
まだまだ課題はあるものの、視界は決して悪くない。