連続テレビ小説オードリー再放送 ⑯
黒田邸
滝乃が黒田社長宅を訪ねている。
18の子を自分の目の届かないところへ出すわけにはいかないからと、
美月を大京映画に入れてほしいとお願いしている。
お滝の元に置いといたかて、悪い虫が付くときには付くんや。いつかは
親から離れていくのが子供やけどな・・・そうつぶやく黒田社長である
が、「お滝には負けるわ」と最後には承諾する。
大部屋に入れるのは簡単や。けど、撮影所は、箱入り娘は
3日と持たないほど恐いとこや。
「あの子、才能あるで。 スターにはなれんかも知れんが、ええ役者
にはなれるかもしれん。けど、今ワシが欲しいのは、スターや。
客の呼べるスターや。」
「今、映画界は厳しい。大京も厳しい。新人をゆっくり育てている
余裕は、今の大京にはない。」
けどな、お滝の頼みでは断れんな。ここは、大いなる貸しにしておこうか。
このご恩は、一生忘れません。美月をよろしゅうお頼の申します。
秘書の関川に連れられて、挨拶回りをする美月。
大部屋では、さっそく新人の禊ぎ、洗礼を受ける。
床を抜いて作った落とし穴に落ちる。
男性の大部屋俳優さんたちにも、” もみじ ” は晋八を通して抜かりなく
声をかける。今日入った新人をかばうようでは、” もみじ ”が裸にして
女部屋にぶら下げてやる、と。 「みんなに言うとくんやで~」
早速、新人の仕事が始まる。女部屋全員の衣装取り。古参衣装係・榊原
紀代麿(麿 赤兒さん)の投げたキセルを、辛うじて避けた美月。「椿屋」
の娘だけのことはある。お辞儀の仕方はまぁまぁだなと言われる。「黒田
のおっさん、 頭 痛めとったけど、お前は案外チャンバラに向いとるかも
しれん。ワシのキセルをよう避けた。」
「有難うございます。頑張ります。」「プロは、頑張るのが当たり前。」
「勉強になります。」「撮影所は、勉強するところやない。腕前を披露
するところや。勉強したかったら、学校行き。」
大部屋に入った新人は、禊ぎとして穴にはみんな一度ははまるらしい。
翌日の仕事の確認をすると、美月は、午後から町娘の役が付いていた。
幸太郎が撮影所に到着。「お~、ダイビングミッキー、どうしたんや、
青い顔して。池にでもはめられたんか。あ~、懐かしな。俺も、ふん
どし一丁で火の見櫓にくくられたことあった~~、寒い日でな。青春
とは残酷なもんや。出番まで、元気やったら俺の部屋へ顔出し。」
壊れた椅子に座って尻もちをつく。
この時、私は初めて気付いた。私は、いじめられていたんだ。
美月の家では
美月初出社の日。パパは話しかけてきたママに ” うるさい ” と言って
しまった。
オードリーのことは言わんといてくれ、と拗ねている。
考えたくない。想像もしたくない。僕の耳に入れんといてくれ。
「仕方ないじゃないの。もう大京映画に入っちゃったんだから。東京に
行かなかっただけでも良かったでしょ。パパが心配するラブシーンを
するのは、スターさんだけ。美月は、今日撮影所に入ったばかり。挨
拶回りか、通行人がせいぜいよ。」
旅の娘に扮している美月。
杖が折れてよろけ、
駕籠にぶつかり、かつらが外れる。
心配そうな日高監督や杉本さんたち
大部屋女優たちの策略?
町娘では、川に突き落とされてずぶ濡れとなり、
” すみません ” の連発
監督さんたちも何もできず、心配そうに見守る。
錠島も晋八も手助け出来ず、歯痒いばかり、、。
私の大部屋生活はこうして始まった。
私の夢、私の心のふるさとであった撮影所は、お母ちゃまの言う
通り、恐ろしいところでもあった。
けど、負けへん。
撮影所からの帰り道、晋八が心配して待っていて、美月を助けられない
ことを謝る。
「すまん。お前を助けてやれへんかった。辛抱してくれ。撮影所に入って
来た新人は、みんな先輩の禊ぎを受けるんや。それが、しきたりなんや。」
「助けたいけど、ワイが庇うとお前がもっとやられるんや。堪(こら)えてくれ。
すまん。ほんま、すまん。」
「晋八君が謝ることないやん。みんなが我慢できることやったら、私かて我慢
できるわ。」
「助けてやれへんけど、ワイはいっつもお前の味方やからな。」
「ありがとう。せや、葉隠仙鋭完結篇の千吉の役・・・」
「あれな~ほんまやったらワイがやる役なんやけど、芝居があかんねん、
ワイ。役、取られてしもた。」
「厳しいね~、役者って。」
「最後は千吉が先鋭を殺すんやで~。因果な運命やな~~。6年前までは、
そんな役やなんて思えへんかったわ~。」
(美)「流れ橋」(晋)「夕日が落ちそうで」(美)「二人が入れ替わっ
たんや。」(晋)「お前、戻ってきたんやな。」
ジョーが通りかかり、
何も言わずに通り過ぎて行った。
あの人がしゃべったのを、聞いたことがなかった。