連続テレビ放送 オードリー 再放送 ⑧
大京映画の黒田社長は、映画界の今後の見通しについて尼僧の
占い師の庵を訪ねた。その御宣託は、
「太秦(うずまさ)の灯は消えないが、風前の灯。風は一層の激しさ
を増して吹き荒れるであろう。よく持って7年。7年後、大魔
王が天から降りてきて、映画界の怠慢、奢り、心の貧困に鉄槌
を下すであろう。今日の(京の?)銀幕を支えて来た大きな会
社が消え去る。」
「それは、まさか我が大京映画では?」
「わからん。そのためにも策を打て。策なくば、この7年、大京
とて危機は免れん」というものであった。 「御意」
黒田社長と関川秘書の早速の作戦会議
「無駄はないか、奢りはないか、怠慢はないか。余分な経費は、全部
削ぎ落とせ。」
「両御大の専属契約費が浮きましたし、『葉隠仙鋭』の大ヒットで、
今後は大幅な黒字が予想されます」
「その黒字は次の製作費にとっておけ。稼げるだけ稼いで、次の企画
を立ち上げるんや。新しいスターの発掘を、早よせなあかん。幸太
郎一人では、7年も持たんで。」
「しかし、テレビ時代劇は乱立しており、激しいスター争奪戦が繰り
広げられております。映画界の中堅も、こぞってテレビ時代劇の主
役をやり始めており、なかなか新人発掘は難しいものが、、、」
「頭を使え、頭を。どっかに会社ともめてるスターはおらんか、調べ
ぃ。東映の錦之助はどぅや。雷蔵は、どぅや。黒字を契約料に回し
てみぃ。引き抜くきっかけはあるやろう」
「御意 ・・・あの~無駄というならば~」
「何や、言うてみぃ。この際や、合理化と経費削減は徹底するで。」
「プロ野球球団・大京ダイナマイツは5年連続最下位。大京スタジア
ムは閑古鳥が鳴いており、無駄と言えば大いなる無駄かと、、。」
「まぁまぁ、、、来年最下位やったら考えよう。」
夏休みになって・・・
晋八の付き人にしてもらった美月は撮影所に行き、ロケバスに乗っ
て流れ橋のロケへ同行した。
晋八の役は、葉隠仙鋭の弟子・仙吉で、この日は流れ橋から飛び降
りるシ-ンの撮影があった。
ここで仙吉、川へ飛び込みます。
日没まで時間がないから、本番行くで~。
一番こっ切りや~。仙吉、気合で来い
「小僧、もう一度かかって来い。」「お師匠様」
「さぁ、打ち込んで来い」
「えい えい あ~~~っ」
飛び込むことばっかり考えちゃだめだ。その前の、仙吉の必死さ
が大事だ。思いっきり打ち込め!勢いがあれば、後は勝手に落ち
ちゃうぞ。
でも、でも、(救助隊は川の中で待っているのに)足が震えて飛
び込めない。晋八は、実は泳げなかった。泣き出してしまった。
撮影隊は大慌て。しかし、すぐに飛び込める吹替可能な子役を今
から探すのは無理。
「見てみぃ。もう日が落ちるがな。」
記録係 「やめて下さい。(これからの撮影では)繋がりません」
日高監督「もうえぇ、撤収じゃぁ~~」
そこへ杉本助監督の「吹替、いま~す!」
杉本助監督の必死の頼みで、美月が飛び込むことになった。
日没が迫る。
「頼む。晋八の代わりに川へ飛び込んでくれ。君ならできる」
泳ぎは得意じゃなかった。けど、とてもイヤとは言えない雰囲気
だった。
日高監督「神よ、私に恵みを、、、」
ええがな~ 夕日が泣いてるで~~
撮影所からの帰り道
仙吉の役を下ろされるのが恐くて泳げないことを言い出せなかった
晋八。飛び込みシーンは美月に吹き替えてもらったこと、、、仲間
には内緒にしておいてほしいと頼む晋八。
「わかってる。約束や。」
二人の指切りげんまんの約束を、滝乃が見ていた。
滝乃のお説教
「撮影所には近づかないように、撮影所の子供らとも遊んではいけ
ないと何べんも何べんも言って来たのに、なんでお母ちゃまの
言うこときけへんの?」
「お母ちゃまの考えが甘かったわ。君ちゃんと杉本さんが釣り合わ
んように、あんたとあの子は住む世界が違うんや」
「ただの友達やのに」「口答えするんじゃありません。」
「あの子には、二度と会うたらいかん。夏休みの間は、一歩も外へ
出たらあかん。お母ちゃまの命令や。」
君ちゃんの部屋にて
そうか~ 美月ちゃんも きんちん(謹慎)かぁ~。
美月は、実は杉本さんが君ちゃんの手紙のことは本当に知らない
らしい、ということを君ちゃんに話した。君ちゃんは、
「もともと、あの手紙はなかったもの。杉本さんとうちとは、縁の
ない人間同士やねん」といって、涙を流した。
杉本さんのことを忘れようとするかのように、「椿屋」の仕事に精を
出す君ちゃん。玄関前の掃除をしていると、うどん屋の息子の晋八が
最近、美月ちゃんが撮影所に姿を見せないのでと、自転車でやって来
た。
「これ、うちの ” おとん ” が作ったうどんなんやけど、アメリカ
製の消しゴムのお礼に渡したいんや。」
君ちゃんが、「美月ちゃんはいろいろ事情があって、もう撮影所
には行かれなくなった」ことを話し、美月に取り次ごうとしたが、
滝乃が一方的にきつい言葉を投げつけ、晋八を追い返してしまった。
「ここは、あんたの来るとこやない。美月にも二度と会わんといて。」
「 二度と来るか。〇〇ババア」
「何であんなことを言うの? せっかくおうどん持って来てくれたの
に」「私の大切なお友達やのに」と、美月は滝乃へ怒りを激しく表
し、実父母の暮らす佐々木家へ駈け込んでいった。
美月が、実の父母、弟と並んで寝るのは、物心着いてから初めてのこ
とだった。
寝られない滝乃の、深夜の訪問
美月は、「椿屋」の滝乃の元で何があったのか、母が訊いても何も
言わないままだった。
美月と仲直りしなければ夜も寝られないという滝乃ではあったが、
「 映画を観客として楽しむのはいいが、撮影所を好きというのは別。
学校へもろくに行かないでチャンバラの子役をやっているような
男の子と仲良くするなんて、、、」という考えは、やはり変わる
ことはない。
・撮影所に行くことは、そんなに悪いことなのか。
・ラブレター事件も、なぜこんなに後を引いてしまうのか。
・美月が、女優になりたいと言ったら、どうするのか。
・六年生になった美月への接し方は?
それぞれに美月を可愛がり、大切に育てようと思いながら、三人で
話しても、当然結論は出ない。美月の気持ちが落ち着くまで、ひ
とまず美月は佐々木家で暮らすことになった。