舟木さんとNHK大河ドラマ「花の生涯」
今年は、1953(昭和28)年2月1日、日本で
テレビ放送がスタートして70年、そしてまた、1
963(昭和38)年4月7日、最初のNHK大河ド
ラマが放送されて60年ということである。
そのような記念すべき節目の年でもあるためか、テレビ70年記念ドラマ
『大河ドラマが生まれた日』が先日2月4日(土)に放映され、翌2月5日
(日)、カラー化された大河ドラマ第一作「花の生涯・第一話青柳の糸」が
放映された。
大河ドラマ第一作「花の生涯」
1963(昭和38)年4月7日~12月29日 全39話 モノクロ
当時の芸能局長・・・「今までにない大型時代劇の娯楽作品を作りたい」
「日本一のドラマを作れ」
大河ドラマ第一作は、「大型で、面白く、見ごたえのある連続時代劇」
というテーマに合った、井伊直弼を主人公にした船橋聖一原作の「花の
生涯」と決まった。
キャスティングについて芸能局長よりプロデューサーが厳命されたのは、
「あらゆるジャンルの超一流の俳優さんに出演してもらう」こと。
井伊直弼役:尾上 松緑(原作者・船橋 聖一氏の強い希望と推薦により
比較的スムーズに決定)
直弼の懐刀的存在である長野主馬(主膳)役:佐田 啓二
(5社協定という当時の映画界の縛りもあって非常に難航し
たが、十数回の自宅訪問の後やっと了解を得ることができた)
妖艶な女たか (淡島千景) と長野主膳(佐田啓二)は、ひと目で恋に
落ち、 愛しあうようになる。
主膳は直弼の人柄、学識の高さに惚れ込み、終生仕えることを誓う。
しかし、二人の間にたかを巡る心の葛藤が・・・・。
直弼は水戸浪士17名、薩摩藩士1名に襲撃され落命した。
東映撮影所での「桜田門外の変」の撮影は、クレーンも使い迫力の
シーンに。
(参考:「NHK大河ドラマ大全」NHK出版 P82~83)
カラーでよみがえる「花の生涯」より
第一回 青柳の糸
膨大な大河ドラマの映像で学習したAIを使って、幕末の武士の佇まいや
着物の色合い、時代の空気感をリアルに再現。昭和30年代の白黒の大
スタたちーが、最新のテクノロジーで色鮮やかに蘇る。
テレビ史において記念すべき節目の年に、完全に残っていた第一話と
一部の「桜田門外の変」第37話がテクノロジーの進歩でカラー版で
視聴でき、本当に良かった。
第37回 「桜田門外の変」より
↓田村正和さん
舟木さんの「花の生涯—長野主膳 ひとひらの雪」
新橋演舞場 2013.6.17~6.29
井伊直弼(里見浩太朗さん)と長野主膳の友情と夢の行方を描いた
舟木さんの50周年記念特別公演。大老・井伊直弼が襲われる雪の
シーンはもちろん、主膳と村山たか(葉山葉子さん)との満開の桜
の下での今生の別れの最終章…その哀しく美しいシーンは今でも鮮
やかに蘇る。
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舞台いっぱいに広がる満開の桜の見事さに、客席からは毎回、感嘆の
声と拍手が沸き起こった。
はらはらと花びらが舞い落ちるなかで、” たか”は何度も主膳に問う。
どうしてもゆかれるのでございますか。
やはり、ご一緒には参れませぬか。
参られますか、、。
しかし、主膳から手渡された、おそらく形見になるであろう刀をしっか
りと胸に抱いて、”たか”は、主膳を見送るしかなかった。
” 叶わぬままに散った夢のむくろを弔うために ”
昂然と胸を張って、 ” 何としても美しき国を守る ”旅に赴く 主膳。
生きられるはずもない主膳に、” たか ” の絞りだすような
” 生きてくださりませ ” が悲痛に響く。
にこやかな微笑みさえ残して去り行く主膳の背中を、花の下に立ち尽く
したまま、” たか” はじっと見送った。
『 激動のうねりに翻弄されながらも、志を持って生き抜いたひとびとの
物語 』(金子良次氏)は、『 今の日本への熱い思い 』を (齋藤雅文氏)
舟木主膳様の台詞に込めて、拍手の中、静かに幕を下ろしていった。
とても、”娯楽”時代劇を観劇したとは思えない感慨が、じわりと広がって
いった。
(2013.7.4「花の生涯」~5~より)