銀座シネパトス ⑫
デビュー50周年記念 ともに歩んだ青春の一ページ
スクリーンで観る 舟木一夫と時代を彩ったヒロインたち
「 その人は 昔 」
番外編 (大森海岸 大井競馬場)
少女は、大田区大森南5丁目14番地の釣り船屋からボートを借りて、
羽田沖に出た。
このあたりは物流センターのある倉庫街のようであり、地図を見ると、
東京モノレール「昭和島」駅が一番近そうである。
しかし、埋立地である「昭和島」からは対岸の大森側に渡れそうも無い。
大森海岸の名が付く駅は、京浜急行「大森海岸駅」。
青年が、「海を見たい」といった少女を案内したのは ” 大森の海岸 ”
であって、” 大森海岸 ”ではないのだが、「馬が見たい」といって案内
したところは、この近くの”大井競馬場”だと思われるし、、、ひとまず
「大森海岸駅」で下車してみることにした。
現在地
京浜急行「大森海岸駅」
まず、地図上の赤い点線
に沿って歩き、しながわ水
族館のある区民公園を抜
けたところにある、大井競
馬場に行くこととした。
(しながわ水族館のある、しなが
わ区民公園の左に位置するの
で、この地図上には表記されて
いない。)
{ しながわ区民公園 }
” いるか” がお出迎え
松並木、池に掛かる橋
↑ 美しい日本庭園 →
公園内の紅葉
ん~~ まだもう少し、、
しながわ水族館
水族館の駐車場を抜け、海岸通に出て、
大井競馬場の入り口を目指して歩く。
「大井競馬場」まわり の柵には、やはり”馬”が。
「TOKYO CITY KEIBA」 正面玄関 ↑
入場料\100で中に入って、当日再入場券も
渡してくれる。
”ルンナ” の仲間はまだ姿を現していない。
夜にならないと、 レースは行われない。
馬の調子を見るパドック
大井競馬場の上空を飛ぶ、羽田から飛び立っている飛行機
道産子”ハイセイコー” は、日高の牧場で育った。
もう一度現在地に戻り、改めて元”大森海岸”でもあった「平和島競艇場」に行く。
いまはこうなっているが・・
ボートレース場に初めて入った。
電光掲示板で、地方レースの模様が
中継される。
ここでレースが行われる。
羽田沖へと続く、大森の海岸の面影を残す水場はないかと探してみる・・。
勝島南運河(手前)から続く競艇場の右端
右手の木々は、区民公園であり、しながわ水族館がある。
京浜急行「大森海岸駅」を中心に、ぐるりと海岸らしき場所を探してみたが、「海岸」は無かった。
しかし、ここが昔大森海岸であり、平和島という人工の島で隔てられたとはいえ、この水が東京湾
の羽田沖に続いていることは確かである。
おそらく青年は、このあたりよりもっと下った大森(南)の海岸を少女に案内し、少女はそこに
” 腐った沼 ” を見た。
馬を見たいと言った少女に青年が案内した競馬場では、少女はそこに
” 飼いならされたオモチャ ”
を見た。 ルンナの仲間ではなく、人間の都合で鞭を当てられて走る、オモチャだった。
昭和40年代初めは、東京の海や川が一番汚れていた時代であり、”汚れた東京”のピークだったこと
だろう。
オリンピックを開催し、新幹線がやっと走った時代であった。
あれから何十年もたって、東京湾を初め、隅田川、多摩川など大きな河川が少しずつ浄化されていっ
た。
青年と少女は、”一番汚れた東京”を見てしまった。
日高の山懐で育った純粋すぎる瞳には、その汚れは、想像もつかない汚れに映ったことだろう。
青年と少女の約束の時間
” キミはその時間に賭けていたの ”
青年は約束を守れなかった。
二人の運命は、まっさかさまに暗転していった。
キミは 僕をおいて ひとり 羽田の海へ
僕は キミの本当の心を確かめるすべも無いまゝ
ひとり 置いてきぼりに
” 東京には 夢があると
僕が キミを誘わなければ
キミは 日高の山懐で
どこまでも走る馬にまたがり
波打ち寄せる 百人浜を 走っていたのに ”
(LP「その人は昔」より)
ルンナの中に生きる ” その人 ” の夢は、きっと青年が叶えてくれる。
二人分の夢と幸せを求めて、青年が今汽車に乗り、再び東京へ向かっているではないか。
その青年に、ルンナがいつまでも寄り添い、どこまでも日高の広野を駆け続ける。
喪失の嘆きは ” 海の底 ” まで深いけれど、 その人は、 ” 真珠 ” となり、” 山の谷の白百合 ”
となり、” 夜空の星の輝き ” となって、いつまでも青年の中に生き続けていく。