怖いと思うのは、他人の助けを期待できるときだけなのかもしれなかった。
蓮音は昨夜行ったばかりのプラネタリウムを思い出している。
偽物の星だったけれども、好きな人とながめられれば、その方が本物だ。
どちらを選んでもいい。そんな選択肢があるなんて、全然、知らなかった。
恋をすると瞳に星が宿るからなあ、
何度も恋をした。いくつかは、涙と共に流れ星になってしまったけれども。
優しさは、涙のダムを決壊させる温かな凶器。
記憶は、オアシス。
甦らせるたびに、どうにか水を沸せ、
かすかに湿り気を彼に与えてくれるのです。
温かくて、おいしいものかどうかは、まず湯気をかいでみなくちゃ。
音吉の胸に顔を寄せて、彼女は鼻を鳴らした。
本当に女を大事にする男は、セックスの最中、
自分と相手の肌の間に、絶妙に温められた空気をはさむ。
その温度が女を気持ちよくするんじゃないか。
体は消耗品だ。どうでもよい男と雑なセックスを繰り返していると、
心も一緒にすり減っていく。と蓮音は思う。
けれども、本当に好いた男とは、寝るたびに
身も心も丁寧に鞣されて柔らかくなる。
本来なら気恥ずかしてたまらないような事柄が、まったくそうでなくなる。
それが恋するってことなんだ。
本当に好きあっている男女は、いつでも子供同士に戻れるんだ。
何だか涙の代わりに元気のしずくが落ちてくるようにも、感じます。
空は天国の底、って言葉を知ってる?
幸せは、不幸に勝てない。
