マンションのリノベーション・リフォーム

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マンションのリフォームやマンションのリノベーションに触れられている裁判例を紹介します。
(3)この点につき,控訴人は,本件定額補修分担金条項が賃借人・賃貸人の双方がそれぞれリスクと利益を予め分かち合う交換条件的内容を定めた,いわゆる「射倖契約」としての性質を有するものであるとして,それを前提に本件定額補修分担金条項が消費者契約法10条後段の要件に該当しない旨主張している。
 しかしながら,それは抽象的・理念的に,定額補修分担金の仕組みを説明したにすぎないのであって,定額補修分担金条項の実態とは乖離したものである。すなわち,情報格差のない,対等な立場にある双方当事者が,互いに駆け引きをしながら,具体的な分担金額を決定するというのであれば,それはまさに控訴人の主張のとおりである。けれども,具体的な定額補修分担金の額を決定するのはあくまで賃貸人であり,賃貸人は,賃貸業全体の採算が取れる分担金額を設定でき,実際にもそのように設定していると考えられる。
 現に,証拠(甲1,乙13)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,マンションの賃貸借,マンション管理・運営,マンションリフォーム等を業とし,京都市内及び大津市内に合計15か所もの営業拠点を有しており,マンションの賃貸条件の設定や修繕に関する知識や情報が極めて豊富なエキスパートであること,定額補修分担金の額は,明確な算定基準はなく,控訴人が,賃貸物件ごとに,具体的な賃料額,共益費,礼金,更新料に関する諸条件の下で,賃借人の特性,賃貸物件の広さ,設備・素材の損傷のしやすさ,契約期間,用法などの諸要素を総合的に考慮し,退去時の原状回復費用を予想して提示していたことが認められるのである。
 このように,マンション賃貸業のエキスパートである控訴人が,本件建物の本件分担金の額を定めるに当たっては,具体的な賃貸物件の賃料額,共益費,礼金,更新料に関する諸条件の下で,損失を被るような分担金額を定めるはずはなく,具体的な分担金額が設定された時点で,少なくとも,賃貸人の営む賃貸業全体としては,賃貸人にとって有利な分担金額が設定されているのである。
 他方,賃借人としては,その有利な点,不利な点を判断するために必要な情報(一般的に生じる原状回復費用の種別と額,賃借人の軽過失による原状回復費用が定額補修分担金の額に満たない場合には,本来負担しなくてもよい通常損耗部分の原状回復費用を負担させられる結果となることなど)を提供されることもなく(本件においても,被控訴人がこれらの情報の提供を受けていたことを認めるに足りる証拠はない。),賃貸人から提示された具体的な賃貸物件の賃料額,共益費,礼金,更新料に関する諸条件の下で,賃貸人の提示した分担金額をそのまま是認して契約を締結することが有利なのか不利なのかについての知識や情報が賃貸人に比べて著しく乏しいなかで,同契約を締結するかしないかという二者択一の選択肢しか有していないのである。
 したがって,分担金額が上記のような利害状況の下で賃貸人により一方的に設定され,しかも賃貸期間の長短に関わらず,一切返還されないことからすると,個々の賃借人が偶々定額補修分担金条項により利益を得ることがあるとしても,前記3(2)で説示したとおり,それはきわめて稀な場合であるし,まさに偶然であるのに対し(現に,被控訴人については,本件定額補修分担金条項により利益を得ていないことは,前記2(5)で認定したとおりである。),賃貸人としては,定額補修分担金条項を定めることにより,賃貸業全体として必然的に利益を得られることになるのであって,これをもって,賃借人・賃貸人の双方がそれぞれリスクと利益を予め分かち合う交換条件的内容を定めたものなどと到底いえるものではなく,一般的には,明らかに賃借人に不利益な条項である。
 しかも,本件賃貸借契約書(甲1)の第5条[定額補修分担金],第8条[損害賠償,修理],第10条[退去時の回復・修繕]の文言上は,賃借人が,賃貸人から,本件賃貸借契約書で定められている本件分担金25万円を徴収された上で,さらに,賃借人の故意又は重過失による損耗については,その補修費用全額を徴収される契約の定めになっている。それゆえ,控訴人は,賃借人の故意又は重過失による損耗の原状回復費用が25万円未満の場合は,賃借人から改めて上記原状回復費用を徴収することはしないので,二重取りにならないと主張しているが,本件賃貸借契約上は,賃借人の故意又は重過失による損耗の原状回復費用は,本件定額補修分担金とは別途に賃借人が負担することになっている以上,二重取りとなる可能性は十分にある。
(4)また,控訴人は,本件定額補修分担金条項があることで,〔1〕入居中,賃借人は軽過失による損耗の原状回復費用の負担を心配することなく,安心して生活することができる点,〔2〕退去時における原状回復費用を巡る紛争予防機能がある点,〔3〕軽過失による損害賠償額が確定していることで,賃貸借契約における全体経費の予測可能性が確保されるという点において,賃借人の利益になる条項であると主張する。
 しかしながら,賃借人の故意又は重過失による損耗については,別途請求される可能性がある以上,安心して生活できるともいいきれないし,損耗が軽過失によるか,故意又は重過失によるかの点については紛争が生じる危険があり紛争回避の利益は希薄であるといえるし,全体の経費が予測できることにもならないので,賃借人の利益になるという面は小さいし,多少,紛争リスクが減少するとしても,その利益は賃貸人も享受しているのであり,賃借人のみの利益ではないのであって,上記の諸点も上記で述べた本件定額補修分担金条項により一般的に賃借人が被る不利益を打ち消すほどのものではない。
(5)他方,本件定額補修分担金条項を無効とした場合に,賃貸人である控訴人に生じる不利益について検討する。
 考えられる不利益としては,〔1〕賃借人に債務不履行がある場合に,賃借物件に生じた損害の回復費用を確実に回収することが困難になること,〔2〕紛争リスクが大きくなることが考えられるが,〔1〕については,賃借人から敷金を受け取ることにより解決が可能であるし,〔2〕についても,賃借人から敷金を受け取っておけば,担保を取得した上で有利な交渉に臨めるのであるから,そもそもさほどの不利益とはいえないし,それも債務不履行による損害賠償額の予定条項を設けることなどにより,解決可能である。
(6)以上のとおり,本件定額補修分担金条項を有効とすることにより消費者である被控訴人が受ける不利益は,同条項を無効とすることにより事業者である控訴人が受ける不利益よりはるかに大きいものというべきである。
 そうすると,本件定額補修分担金条項は,信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものといえ,消費者契約法10条後段の要件にも該当するものと認められる。
4 結論
 以上によれば,本件定額補修分担金条項は消費者契約法10条に違反するから無効であり,控訴人は,本件賃貸借契約締結の際,被控訴人から支払を受けた本件定額補修分担金25万円を法律上の原因なく利得しているというべきである。
 そうすると,被控訴人は,不当利得返還請求権に基づき,控訴人に対し,25万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成20年10月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるから,被控訴人の本訴請求は全部理由があり,これを認容した原判決は相当である。
 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
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