そう、奴との。
黒くて、動きが早くて、たまに飛んで、脂ぎってて、なかなかくたばらない、恐らく地球上で最も嫌われているであろう、あの生き物。
実家は小さい頃に新築に引っ越した上、大学のときも新築のマンションだったので、奴への免疫はあまりない。
23歳にして、初めて自分の領土内で奴と面を向き合わせた。
その時は、「殺虫剤」と呼ばれる化学兵器を保有していた。
燃えるゴミと燃えないゴミの分別もできない残念な弟が、生ゴミを溜め込んでいたため発生した子蝿を始末するために買っていたからだ。
素早い動きと、あまりのグロテスクな装甲に困惑しながらも、ひたすら殺虫剤を投下し続けて、奴の息の根を止めた。
新聞紙をちりとりのようにして、手を触れないように奴の遺体を屋外へ搬出し、葬り去る。
最新科学のもたらした人類の勝利である。
衝撃的な初戦から1ヶ月後、奴と再び戦うときがきた。
前回よりも一回り大きく、動きも機敏。初戦の敗北を乗り越えて、明らかに奴は進化を遂げた。
しかも、初戦で使い果たしたため、武器弾薬は尽き、すでに殺虫剤はない。
新聞紙を丸め、戦闘態勢に入る。
重心を低くし、物音を立てないように奴に近づく。
俺に与えられたチャンスは一度。
足元の壁沿いにいる奴は、上を向いている。
物音に反応した奴は、間違いなく壁を一気に駆け上がるだろう。
奴が自分の目の前に来た瞬間に撲殺する。
全神経を集中させる。
コンマ1秒の瞬間にすべてを賭ける。
よし、このタイミングだ。
思い切り足音を立て、奴を刺激した瞬間、こちらの思惑通り、奴は目の前の壁を一気に駆け上がってきた。
手に丸めた新聞紙の射程距離に入った瞬間、奴を捕捉し、一気に奴の重厚なボディに向けて攻撃を加えた。
決まった。
世田谷のトマホークミサイルと呼ばれた我が左手の新聞紙が奴を直撃した。
その精度の高さは、湾岸戦争のアメリカ軍侵攻時に実証済みだ。
奴の装甲に着弾した瞬間、奴の足が吹き飛び、床に落下した。
足を失った奴は、あまりの激痛に悶え苦しみ、自らの制御を失い、無様に床の上を暴れる。
重傷を負いながらも尚、戦闘を続けようとするその執念の深さに、畏敬と不気味さを抱きながら、容赦なく、無慈悲なトドメの一撃を加える。
奴の動きは完全に止まった。
ジーザス!
第一次世界大戦が生んだ化学兵器に頼らずとも、敵を打ち負かしたのだ。
神に感謝した。
初戦と同様に、新聞紙をちりとり代わりに使って、奴の遺体を屋外に葬り去った。
飛び散った足も忘れずに。
遺体を眺めながら、奴に言った。
「もう二度と、その汚い面を見せるんじゃねぇよ。」
そんな感じで、奴との戦いを映画で見たい方にはこれをオススメ。
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