神田の職人さん
先日、今は日本に帰ってきているが、日本の高度成長期にイギリスのセビルローで注文紳士服職人の修行をされて長らく住んでいた、という方が材料を探しに見えました。
なので、即座に、
同じくセビルローで洋服を学ばれた神田ラガンさんのオーナー氏ときっと話が合うのではないかと思い、
交通博物館跡地の道路を挟んだところに訪ねては?
と、ご案内いたしましたが、少々年代が違うことが気にかかるご様子でしたので、実現には至らなかったものと思います。
このお客様、本当に楽しそうに、また、懐かしそうにセビルローでの暮らしの様子を語っておられました。
しかし、やはり注文紳士服の需要は減少の一途であり、日本に帰ってきたそうです。
そして、いまさらお客さまに頭を下げてまで注文取りに歩くのはイヤだとおっしゃいます。
洋服屋さんには、
①地域にお店を構えてお客様を迎え、店主が一人で仕事をされる(中には部分的或いは全部職出しする方もいらっしゃいますが)方と、
②技術はないけれど生地を持ってお客様を訪ねて、或いはお客様からの電話受注などで営業を担当し、職人さんや工場に職出しする方と、
おおよそ2パターンがあります。
で、先ほどのお客様は、この②の職人さん系ですね。
むかしから、職人さんは、融通が利かないと言われています。
時代に迎合せずに、自ら学んだ技術を忠実に再現することは、
職人気質といわれる見上げるべき点ではありますが、
一方で、お客様の満足がややなおざりにされる傾向がささやかれていたりしました。
もったいないなーと思うんですよね。
せっかく、生地や材料の特性を熟知し、アイロンなどの扱いも併せて総合技術なのだから、
その職人さんが、お客様の要望にどうこたえられるか、取り組んでくださったら立派な注文服文化が継承できるだろうにと思うのですが、
時には直接顧客の声を聴いている営業の洋服屋さんが、職人さんを説得するのに辟易しているようなお話もずいぶん伺いました。
お客様が喜んでくださって初めて技術の存在価値が認められるのではないか思います。
私自身、お客様が喜んでくださるよう、努めてはいますが、所詮自分のできるだけの範囲。
がんばっている若手の営業のお客様に、
「世代交代をするべきときが来ている。若者の需要に合わせる商品展開が必要」
と、叱咤いただき、できるだけ応えたいと右往左往の最中です
先々、当店にどのように評価が下されるものか、お店の存否によって結果が出ると言うのも、
怖い話ですよねーーー
近年、若手の職人さんの卵もちらほら見えるようになりました。
小僧で修行時代を過ごすのとは違う時代背景の中で育つ職人さん、
お客様と一緒に注文服文化を築いていってくださるよう、結構期待しています
中野