就活 | 万世橋とわたし(神田)のブログ

就活

昨日午前中、リクルートの身なりのお兄さんが店の戸をたたいて外に立っていました。

接客していたので、手があくのを待ってくれていたようです。

話を聞けば、彼はN大法学部を出て、公務員試験に失敗して、その日は自己啓発セミナーの課題で、とある冊子を売って来い!!と言うことで歩いているとのこと。

しかし、これまでまったく売れないので、この際売ることは抜きにして、何かアドバイスをしてもらえないかとのこと。

店にいると、いろいろな営業がやってきますし、ある学校からインターンシップに協力依頼の電話が入ったこともありました。しかし、この展開は初めてだなぁと興味がわき、2~30分一緒に話し込んでしまいました。

一昨年、岡田恵子先生の調査法の講義時にTAをしてくださった法大多摩校舎の大学生ともそんな話をしたことがあり、望む企業から内定をもらえない理由のなかに、

・ 相手が何を求めているかについておさえる。

と言うことが欠けていたのかもしれないと言うことになりました。

自分のPRも大事ですが、押し付けるだけではよさは伝わらない。一から指導してわかるんだかわからないんだか、と言う人よりも、ある程度共有の認識がある人のほうが受け入れやすいですよね。

また、夏ごろ団体職員で部長職の方に、どのような人を選ぶか基準を伺ったところ、

・ 協調性のある人。

と言う返事が返ってきました。

実際、その部長は部署内において派遣で仕事をしていた人の働きが、業務遂行能力とともにとても調和が取れていることを評価し、正規職員にと説得し、相手が受けてくださったことをとても喜んでいました。

この団体とて、財政に余裕があるわけではなく、かなりの割合で派遣社員を使っているのに、です。


このような具体例を伝え、なぜ公務員になりたいのか尋ねたところ、

「学生間では公務員が安定職として人気であり、親も公務員だから」

といった答え。

確かに、一般的理解と言えそうですが、武藤ゼミにいらっしゃるたくさんの公務員職についておられる方々は、決して安定の上に胡坐をかいているのではなく、からだを壊してしまわれないだろうか困 と心配になるほど、地域の問題、課題への対処に苦慮、東奔西走されておいでです。

また、彼は、公務員は3年ほどの周期で移動があることをメリットとしてあげていましたが、

一方で親が何の知識も経験もないのに福祉事務所の長になっていることで親自身も困惑していると言う現実を知っていました。

そのような馴染みにくい立場であっても、自分があるべき機能の一翼を担うために、実際に機動する方々が如何に機能しやすい環境を作るかと言う役割を全うするならば重要な人になります。

総合的に考えると、就職試験であれ職場であれ、

場面の『相手が必要とするものを如何に提供できるか』

がカギと言えそうです。これは、民間においても、大企業から零細企業に至るまで、変わらないのではないでしょうか。

そんな話をしていたら、他の人の動きが出てきたので、雑談は終了となりました。



しかし、これで終わりにはなりませんでした。

夕方、再び彼が現れ、100社ほど回ったが、一冊も冊子が売れないので買ってもらえないかと言うのです。

見せもしない冊子を買えと言われても判断できないと申しまして、出てきたのは簡素な2~30ページほどのもの。

おそらく数百円程度で、誰にでも買うことはできる代物のようでした。

そこで、

「私がこれを購入するメリットを教えてください。」

と言ったところ、

「職場の整理整頓が機能性を高めると言う内容で、日々の心がけのために」

といったことのようでした。

「では、この店を見て、あなたはどのような改善ができるとお考えですか?」

と尋ねましたら、

「資料整理によって誰もが情報の共有をすれば、業務の能率がUPするのでは?」

とのこと。しかし、このような体制作りは、ウチのような零細は当然の状態であり、どの仕入先・顧客の取引内容であれ、誰もが一目瞭然でわかるようになっています。

「その上で、私にとってこの冊子は必要ですか?」

と聞いたところ、しばらく考えて、

「必要ないですね...さげ。」

と言われました。

立ち去る際、半泣きのその表情が忘れられません。


私がその冊子を買うことは簡単でした。

でも、「かわいそうだから」と言う考えで買ってあげると言うことはしたくなかったのです。

彼にとって見れば、一先ず助かったかもしれませんが、それは屈辱に変わるのではないかと思います。

彼にとっても、私にとってもよい取引であったと言う状況を作って初めて彼の成功体験になります。

だから、私は納得して彼からその冊子を買いたかったくま

そして、それが一過性の取引ではなく、継続性のある信頼へとつながる道であると理解してほしい。

午前中の話と根を同じくするものです。

他方、あの場面、彼はあの冊子を自分自身がたいしたものではないとの考えの下で提供していたのではないかと思ったりもします。

だから、押しの言葉が出てこない。


私は、彼が自分の力でこの場面を乗り切ってほしいです。

そして、余裕の笑顔で、

「これならどう?」

と、自信を持って、当方に必要と考えられる情報や提案を携え、再度現れてくれないだろうか。。。と願っています。

どうしてもだめでも、もう一度顔を見せてほしいなー。


常々、法大ゼミの後輩の相談役、指南役、そして叱咤激励役を果たしておいでの石川さん、

いつもこんな気持ちでエールを送っているのだろうなーと、理解した出来事でした。

中野