商店街(地域)は誰のためにある?
商店街活性化論では、坂本光司教授ご指導のもと、いくつもの商店街に視察に参り、商店会役員の方々とのディスカッションなど、貴重な経験をさせていただきました。
また、地域活性特論においても、『まちづくリスト』育成プログラムとして札幌学院大学、高知工科大学、沖縄大学と連携していろいろな取り組みを学んでおります。
そのようなあれやこれや、状況を伺うにつけ、議論が大人の世界だなーと感じることが多々ありました。
どのようにお客さんが来てくれるかという議論は、商店街にとっては死活問題でありますので、
それは当然の課題ではあります。
ただ、「お金を落とさなくては客ではない」といった発言には引きました。今その時点で購買行動は起きなくても、将来的にどのように宣伝行動をしてくださるわかりませんし、まずはその商店に魅力を感じていただく努力が、個店のできることだと考えます。
「後継者がいない、商店の子どもが女の子ばかりである」という発言にも驚愕でした。そこは、繊維街として発展した場所であり、ターゲットには女性の割合が少なくないのに。ここでは、おそらく縁の下の力持ちのご婦人方の貢献に対する評価も低いのではないでしょうか、気になります。
そして、全体を通して、そのような議論に子どもの存在が出てくることはまれでした。
しかし、新宿区商店会連合会の一商店会では、子どもが育つ環境に熱心に配慮しており、
日暮里繊維街ではその地域特性を活かした小学校とのかかわりを築いていたり、
麻布十番商店街では「十番だより」に地域の学校とのコラボしたイベントや活動を公開し、子どもたちも地域との関係を積極的に受け入れる体制があったりします。
その地域に育つ子どもたちが地元を理解し、地域に興味を持つ地盤を提供していることは、その地域の後継者育成に欠かすことのできない視点だと思います。
その考えから特に注目するのが、杉並区にある久我山商店会です。
商店会事務局長さんと何度かお話をさせていただく機会があり、その運営理念を伺うにつけ、地域の子どもたちが如何に希望を持って成長できるかという環境整備に尽力されており、頭が下がる思いでした。
ただ、イベントを行って楽しめばよいのではありません。
自然科学を実際に体験することで、いつのまにか宇宙観までも備わってしまうようなスケール感の大きいプロジェクトが、地域人口2万人ほどのところで行われています。
そして、実際にその地に育った方が、この地に新たな経営者として店を構える事例ができてきているそうです。
そのような理念が、久我山商店会のHP http://www.kugayama.org/ から、伝わりきれていないのではないかというのが少々残念です。
この商店会は商店会役員後継者の育成にも大変力を入れています。まずは失敗を恐れず参加、企画実行を受け入れ、行政やコンサルとの関係を構築するスタンスの取り方も、同席によって習得できるよう配慮しています。
(残念なことに、神田の私のいる町会は後継者育成に興味がなさそうで...。)
では、大きな繁華街における商店はどのように子どもにかかわる方法があるのかといえば、
地域商店街には無い魅力を、地域や地方の子どもたちに体験させてあげることが望ましいと思います。
キャリア教育にも通じ、いつかはそのようなお店を持つことに憧れやイメージができ、成長することに意思を持つ一助になることができると思います。
商店街にとってお客様は大切です。しかし、地域住民が好きな地域であって、初めて地域力が備わるのであり、
その地域力が魅力となって来街者が引き寄せられるというのが、地域の活気が維持・継続できる大切なセオリーなのではないでしょうか。
当たり前のことかもしれませんが、
『地域に育つ子どもたちを含める地域住民が大切にしたい地域であること』が、まずは商店街活性、地域活性の原点なのではないか、と思うに至った次第です。
中野