神田地域の再開発事業は、神田再生の救世主か!!?
さて、ようやく神田学会セミナーにおいて感じた「違和感」について、再開発における建築物についての視点、市民自治の在り方についての視点、地域資源活用の視点などから、2~3回に分けてお話したいと思います。
今回の神田学会主催の「都心トーク⑩ 神田再生」では、現在神田須田町・淡路町において進行中の3つの再開発事業説明を中心に、その経緯並びに方向性を示していただいたことになります。
3つの再開発事業とは、
「交通博物館跡地開発」(東日本旅客鉄道㈱)、
「淡路町二丁目西部地区第一種市街地再開発事業施設建築物 (北街区)」(安田不動産㈱)、
「神田駿河台4-6地区計画(仮称)」(大成建設㈱)
です。それぞれの説明からは地域特性を十分考慮に入れながら環境への入念な配慮がうたわれ、三開発がそれぞれ別個のものでありながら、積極性ある連携により地域に資するよう図る努力がなされていると、他地域の方から大変うらやましがられた場面もありました。また、このような場所において、説明者がそろって参加してくださること自体、その心意気の表れという評価はできましょう。
それはそれとして、このところ読んでいる本『21世紀への都市政策(現代総研シリーズ12)』からの引用となります。正村公宏がまえがきにおいて
「日本人が経済の成長と効率性を優先してきた活動の仕方を再検討し、人間的な生活環境の形成という新しい長期的な目標に向けて目的意識的な努力を重ねていく」ことが重要
と述べています。建築物についてもその考えは反映されるべきで、淡路坂の坂上にそびえたつ、地上23階建てという建築物から生ずる地理的な影響は、はたして単なる数字上で処理できるものですむのか、坂下に300世帯以上もの住居を設ける計画でもある状況から生活環境面において大変不安があります。私は、交通博物館跡地開発の万世橋ビル(仮称)建築の説明会に参りましたが、ビルができる場所と5m道路(?)を挟んで現在お住まいの方に対して、「風の問題はほとんどない」と答えているのを聞いた時も、専門的な見地は知る範囲ではありませんが、一般生活の経験から大変疑問を持ちました。100mの建物のすぐわきの地に対して、その回答者の表現を事実と受け止められる人はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。
また、いたるところのビルが利用されずに空き部屋化している昨今、建築費用が抑えられた新しい設備を持つビルへの入居は当面利用可能性はありますが、やがて別の地も開発するわけですから、そちらへ移転することは十分考えられます。また、今やネット上においての商業分野は多岐にわたり、かつ、増加傾向にあり、あえて事務所を構える必要のある業種や対面を必要とする業種は減少していると聞いております。ビルの供給過剰による廃墟化によって、管理が放棄され、犯罪を誘発するような事態に陥ることはないのか、地域住民は大変危惧しています。このような時代になってなお高層建築物を林立させるメリットとデメリットの比較衡量はどうなるのか、現段階では将来の膨大な産廃となる可能性の高いこれらの建築物の時代的な要請傾向と生活者視点から見ればデメリットが多いように、個人的には考えております。
ということで、今回は、建築物についての視点から感じていたことを申し述べました。
文責 法政大学大学院 政策創造研究科 修士課程2年 中野