おとといの夜、青山の交差点を急いで歩いていたとき。


向こうから、マミーカーに子供を乗せた若いお母さんが歩いてきたの。

子供はマミーカーから転げ落ちそうな勢いで身体をよじって、泣き叫んでいたわ。


雨だというのに、傘もささないで濡れながら、黙ってマミーカーを押しながら歩く、若いお母さん。

子供の泣き叫ぶ声。


どうしたのかしら?大丈夫かしら。

と、若いお母さんとすれ違おうとしたとき、フランス語でこの親子に声をかける女性が現れたの。

年配のフランス人女性だったわ。


日本語が話せないらしく、フランス語でおかあさんに話しかけ、泣き叫んでいる子供にこれまた、フランス語で声をかけ、なだめたの。子供が泣き止んだわ。



言葉が離せなくても、自分の国の言葉で困っている人に声をかけて励ます、という行為。

はっとさせられたわ。





日本語が話せる、その場に居合わせた人たち。

私も含めて、何もしてあげられなかったの。


(でも・・・日本人の紳士が、この傘もささずに歩いているお母さんに黙って、後ろから傘をさしてあげていたの。)



というより、自分にも何かできるということすら、忘れていたように思うの。

ただ、心の中で、「どうしたの?だいじょうかな?」って。ただ、ただ思うだけだったの。


自分の人間力が、感性が、優しさが、他人を思いやる気持ちが・・・

かなり低くなっていることに気づいたの。

雨がとても冷たく感じる夜だったわ。