氷ノ山(兵庫県)

 令和6年6月7日(金) ~9日(日) 3名参加 

 

 今から59年前、高校2年生の時に初めて月刊「山と 溪谷」12月号を購入した。そこで目にしたのが新田 次郎氏の「孤高の人」だった。加藤文太郎の生き方 に惹かれ、単独行への思考と志行が山登りの原点と なった。 文太郎の故郷浜坂を歩き、彼の愛した氷ノ山に学 びたいが長年の想いでもあった。姫路を起点に、南 北に長い兵庫県を走った。正に瀬戸内海から日本海 への旅でもあった。氷ノ山は北陸の山とは趣が違っ た。鷹揚に構え、幾つものコースが変化の妙を堪能 させてくれる。ブナの原生林、滝の美観、厳しい冬 を乗り切った樹木の囁き、野鳥の囀り、旺盛なチシ マザサの繁茂、メキシコ人夫妻との語らい、そこで 目にしたのは、静寂な自然に身を置く心の安寧であ る。 浜坂の共同墓地には何千もの墓が立ち並び、文太 郎の墓を探すのに地元の方の手を借りた。ようやく 辿り着いたその場がひとつのエピローグでもあった。 加藤文太郎記念図書館では彼の遺品と、多くの山の 書籍に触れられた。正に至福の時間を過ごし、山陰 ジオパークの海岸を背景に、これからの山歩きに新 たなる理念がスタートした。(辻信明)