秋のハイキング
飛騨小坂の滝巡り(岐阜県下呂市)
令和5年11月19日(日)曇り

 毎年秋に催行しているハイキング。テーマを掲げて続けてきた。例えば、京都府舞鶴市の多禰寺山は「海」。滋賀県長浜市の鶏足寺は「古寺巡礼」。岐阜県各務原市の猿啄城址は「木曽川」。滋賀県高島市の箱館山は「琵琶湖」。今回は「滝」をクローズアップさせたかった。それ位に、御嶽山の山麓は滝や伏流水に恵まれている。先ず起点となるのが厳立公園である。地球46億年悠久の歴史に裏打ちされたこの大地の創造は、あらゆる虚飾を脱ぎ捨てて向き合わなければならない溶岩台地の賜物である。前日の降雪の名残で遊歩道も滑りやすく、慎重に赤い滝見橋からスタートする。
 遊歩道を進むと厳めしい不動明王に謁見する。3段に落ちる三ツ滝はマイナスイオンの最高値を与えてくれるように、どうどうと轟音を響かせる。行者橋との分岐からは山道となった。小坂川は次第に落ち着いたせせらぎに変わった。
 緩やかな道には、雪を踏んで歩く感触が溜まらなく心地よい。1合目の標識があった。昔の御嶽詣での人にとり、行程の長い御嶽山登山に気を引き締めたことであろう。分岐で右折する。どんびき平の湿地で昼食とした。私たちは今この溶岩台地の上で、至福のひと時を過ごしている。紅黄葉、初雪、空行く雲の変化、聞こえてくる渓流の音、そして語らう仲間の歓声、そこから程なくふたつの滝に巡り合う。質実剛健を標榜するからたに滝、緑色に深淵さをアピールする女性的なあかがねとよ。来る本格的な冬の到来を予感しつつも、心の平安に通ずる時間をみんなで共有できた。巌立公園に戻ってから、巌立橋へと廻った。この寒さに桜が楚々と咲いていた。橋から見上げる巌立の風格は、周囲の景観を凌駕する勢いがあった。NPO法人飛騨小坂200滝のガイドの方々の熱意溢れる解説にも敬意を払った。DVDの映像からも、もっと奥の沢歩きの醍醐味が伝わってきた。
 飛騨小坂の狭い町並み、下呂市の一角に御嶽山がもたらしたいにしえの隆盛が窺えた。ひめしゃがの湯はまだ閉じたままだった。帰路、臥龍の湯で体を温め、冬型の富山県へと帰った。(辻信明)