大佛寺山(807m)福井県永平寺町

      令和4年5月1日(日)雨 単独行  だいぶつじやま

 

 福井県の嶺北、嶺南でまだ登っていない主な山が幾つかある。火燈山・小倉谷山、金草岳、飯降山、藤倉山・鍋倉山、大佛寺山、越知山・六所山、国見岳である。この日は若狭の頭巾山のホンシャクナゲの花を楽しみにしていたが、冷たい雨の日となった。そうだ永平寺ダムから登る大佛寺山にしよう、直ぐに永平寺に向った。登山口からの左手の沢は、濁流となってダム湖に怖い位の音量で一気呵成に注いでいた。この山は、吉峰寺から永平寺を結ぶ祖跡コースの主峰であり、かつては山頂直下に大佛寺があったとされる。ここは永平寺のルーツでもある。しかしこんな沢伝いの上にどうやって材木を上げたのだろうか。

庵位の大きさで道元禅師は雪のない季節に、ここに逗留し読経と執筆と弟子とのやり取りにあけくれたのであろうか。

 ミヤマキケマンやニリンソウに見送られながら、荒れた道を登る。激流の対岸にはシダ類が密生していた。15分で虎斑の滝分岐に至る。最初の渡渉が始まった。長靴でよかった。水量が多く、石を渡るだけでは無理な試練となった。

橋を渡る。因みに今日の渡渉はこの橋を含めて10回、夏場は涼しいことだろう。足許にはチゴユリが、視線にはサイゴクミツバツツジの花が涼しい。かなりの急登が続くが、沢のせせらぎが耳に心地よい。御開山硯石の水から大佛寺跡は近かった。苔むした辺りの風情が歴史を偲ばせる。山頂へはここから20分かかったが、実に息弾ませる坂道だった。雨は降り続き、タムシバの清楚な花が心を慰めてくれる。本来ならばここから戻る所だが、ガイド記事で見た血脈の池を是非見たかった。明るく開放的な池のイメージを想像していたが、雨に霞み、怖い夜叉姫が出てきそうな何故か、一目散に逃げ出したいそんな孤独感を味わった。しかし山頂からの往復40分は無駄ではないだろう。一期一会だから。小さいのにお山の大将をきどるホオジロが鳴く。どこかで侘しく鳴くツツドリ。滑りやすい下山は注意が必要だった。ようやく虎斑の滝分岐に戻った。名にし負う滝を見たい。往復20分くらいか。しかし明日も6時30分から営農組合の出役がある。ここは残念ながらカットすることにした。

 永平寺ダムに戻ったら雨が止んだ。滝の替わりに吉峰寺(きっぽうじ)に参詣し、今日の山旅は終わった。二つのお寺を結ぶロングトレイルにいつかはチャレンジしたい。           (辻 信明)