山行報告
愛知県瀬戸市「岩巣山」480m
令和4年2月27日(日)曇り 単独行 現地との往復440km
雪は皆無だが、日本海からの冷たい季節風がここ尾張北部にも吹いていた。冬場の楽しみは、愛知県の里山歩きもその候補に挙がる。周辺でも会で企画した猿投山を筆頭に、幾つか歩いている。ここは東海自然歩道が通り、よく整備されたコースに多くの老若男女が浅春の息吹を堪能していた。
起点は岩屋堂である。ここは725年、名僧行基がこの地を訪れて草庵を結び、この岩窟に三体の仏像を彫ったと伝えられている。地域の方達の信仰の対象にもなっており、派手さはないがモニュメントが林立している。さてここからの登りがきつかった。高齢者が行き交う中、私もその例に漏れず息を整えるのに必死であった。大きな岩も点在しており、鎖場もあった。30分で展望台に上がった。瀬戸市の町並みが目に眩しい。眼前の猿投山が圧倒的な物量でその勢力を誇示していた。アカマツが主力の稜線を一旦下り、アップダウンが続いた。右手の古木の折れたのに、岩巣モアイ像の札が付けられていた。確かにイースター島のモアイに似ている。6人の女性グループとすれ違った後、橋を渡る。小川が音を立てて流れている。二つ目の橋からはイノシシのヌタ場が道の景観を汚していた。ここからは木の階段が辛くなってきた。ようやくベンチのある元岩巣に着く。花崗岩の山の特徴がクローズアップされ、白っぽい砂礫の斜面が草木の成長を阻害していた。
山頂は三等三角点だが視界がなく、南面の岩場に足を向けた。先程からの尾根の輪郭が良く見え、春を迎える里山の躍動感が予期できた。花崗岩の山は滑りやすい。東面は東京大学愛知演習林が多くを占めている。ウラジロの密生地、リョウブやネジキなど馴染のある樹木が楚々と伸びている。時折風が強まり、木の軋む音が悲鳴を挙げているようだ。針葉が細かいネズミサシを見つけた。谷間を埋め尽くすホウバの葉が裏返り、雪のように白く堆積していた。今回、里山の楽しみ方を存分に満喫したのであった。
帰路の目標は、マンモスの牙を見に入った、愛・地球博記念公園への再訪だった。2回訪ねたが、あれからもう17年の歳月が流れている。工事中の建物も目立ったが、実に多くの人が前後左右に歩いている。モノレールも疾駆し、過ぎし日の郷愁が私を包んだ。山中のひとりより、こんな所でのひとりの方が、より孤独を感じる年齢になったことを実感した。(辻 信明)