山行報告
日本三百名山164座目の登頂(単独行)
奥三界岳 (1,811m)令和3年10月10日(日)晴れ後霧雨
後2年もすれば、とても体力的に無理な山だった。歩行距離17kmの長丁場で、長い林道歩きに、急登の連続、大小の岩が累積する沢歩き、辛抱の果てに展望のない山頂。思い切ってこの日に選んで良かった。
9日は「熊谷守一つけち記念館」「苗木城址」の見学で、望みを果たす。10日は7時前からスタートする。ヒノキの大木、サワラやヤマザクラを鑑賞し、桜と杉とサワラの合体木に目を見張る。堅固な岩の間をどうどうと落ちる銅穴の滝を過ぎ、いよいよ植林地の中の急登が始まった。疲れが蓄積する。暑い。今度は林道歩きだ。前途には牧場の様に笹原が展開する。伐採の後は笹が一面に跋扈していた。ヘルメットの男性に会ってしばらくして、ショートカット道に上がった。凄まじい崩壊地、作業小屋の廃屋からは辛い登りとなった。若い男性が追い抜いてゆく。明るい尾根に出る。そして沢に辿り着いた所で、年配の女性がひとり降りてきた。ようやく抜けるとカラマツの幼木が迎えてくれた。うす暗い樹林帯では霧雨となった。安曇野からの夫婦に出会う。シャクナゲ銀座から何度も山頂願望は満たされなかった。気持ちが萎え、体力の消耗が激しい。念願の山頂に立った時、何故か1羽のヤマバトが現れた。おめでとうとメッセージを伝えにやってきた平和のシンボルであろう。長居は出来なかった。長い下降が待っている。木曽町方面の長閑な集落が陽に眩しかった。怪しい雨雲が頻りに去来する。昇龍の滝は見事だった。名は体を現すである。川上(かわうえ)林道を歩きながら、私の心は爽やかだった。(辻 信明)