平成竹取物語 初稿 | 『満福一座』のまんぷくぶろぐ

平成竹取物語 初稿

物語の冒頭シーンをアップしてみました


平成竹取物語

《1幕1場》


太鼓の音が鳴り響く
ひとしきり鳴ると 幕が開き
舞台には老夫婦(伍平・おとし)と若い娘(おみつ)
何やら楽しげに談笑している

上手より1人の女(おきよ)が現れる
戸を叩き

おきよ 「伍平さん おとしさん、遅くにご免よ。あたしだよ。おきよだよ。」
伍 平 「ん、おきよさん」
おとし 「今時分 なんだろねぇ」
おきよ 「伍平さん! おとしさん!」
おとし 「はいはい、今開けるよ」
おきよ (上手に向かって)「こちらでございます!」
おとし 「おきよさん、いったいどうしたんだい?」(戸をあける)
おきよ 「お邪魔させてもらうよ」

と同時に上手より邪鬼現れる
伍 平 「何じゃ あんたは?」
邪 鬼 「娘を渡せ」
おとし 「おみつを?」
邪 鬼 「渡せ!」
おきよ 「おみっちゃん、あんただよ!」
おみつ 「おきよさん」
邪 鬼 「こやつか?」
伍 平 「おやめください!」(邪鬼を制止する)
邪 鬼 「邪魔だ!」(伍平を斬る)
おみつ 「おとっつぁん!」
おとし 「お前さん!」(伍平に駆け寄ろうとする)
邪 鬼 「うるさい!」(おきよを斬る)
おみつ 「おっかさん!」(おきよに捕まる)
おきよ 「邪鬼さま」
邪 鬼 「こやつが かぐやか?」
おきよ 「さようにございます」
伍 平 「おみつ、逃げろ!」

おみつ、おきよを振り払い逃げる
邪鬼、伍平にとどめをさし、おみつを追う
おみつは表に逃げたところで悪鬼登場
たちつくす おみつ
悪鬼はおみつを一刀両断

おきよ 「悪鬼さま」
邪 鬼 「さすが兄じゃ、仕事が早い」(おみつの腕をまくり、何かを探す)
    「兄じゃ!」
悪 鬼 「人違いか?」
おきよ 「そんなはずは・・・」
邪 鬼 「おきよ・・・」(おきよの胸ぐらをつかみ、地面に投げつける)
おきよ 「お許しくだ・・・」(悪鬼に切り捨てられる)

悪鬼・邪鬼、正面を見据えてから奥へ去る

太鼓の音が鳴り響く
暗転 
舞台は村祭りの場面に変わる



《1幕2場》


太鼓や笛、鐘の音が鳴り響く
村の秋祭りのようである
舞台には老若男女が賑やかに行き来している
子供たちが登場 ブーメランをする子供・幸助がいる

信 太 「幸ちゃん、それなんだい?」
幸 助 「これかい? これはブーメランっていうんだ」
おゆき 「へぇー、名前はきいたことあるけど、初めて見た」
幸 助 「ずいぶん昔のおもちゃらしいんだけど、けっこう面白いよ」
あかね 「すごいねー」
良 三 「どこで手に入れたの?」
幸 助 「むこうにお祭りの出店が出てるんだ」
おゆき 「えっ、出店が?」
あかね 「ホント?」
幸 助 「うん、ホントだよ」
信 太 「ねぇ、行ってみようよ」
良 三 「うん、そうしよう!」
幸 助 「こっちだよ ついてきな!」

子供たち去る

梅吉が若い娘・おきみ、加代の後を追いかけている
どうやら酔っぱらっているようだ

梅 吉 「おねぇちゃん、どこに行くんだい?」
おきみ 「キャーッ!」
梅 吉 「おいちゃんと遊びに行かないかい?」
加 代 「いやらしい おきみちゃん行きましょう!」
おきみ 「うん」(二人去る)
梅 吉 「おーい! 待ってくれよー! もう、最近の若い娘は・・・」

梅吉がふと見ると娘・トメが背中を向けて立っている

梅 吉 「あらららら、こんなところに・・・」(娘に近づく)

娘はもじもじしている

梅 吉 「おねぇちゃん」

あいかわらず娘はもじもじしている

梅 吉 「聞こえてねぇのか? おねぇちゃんって・・・」
ト メ 「なーに?」

娘は振り返るが明らかに年配のオトコである

ト メ 「おいちゃん、遊びに連れてってくれるの?」
梅 吉 「ギャーッ! 化け物!」
ト メ 「えっ、化け物!? キャーッ!」(逃げ去る)
梅 吉 「ギャーッ!」

梅吉も反対方向に逃げようとするが、虎造たちと出くわす

虎 造 「おいおい梅吉さん、そんなに酔っぱらって大丈夫かい?」
幸 代 「そうだよ、また菊乃さんにどやされやしないかい?」
梅 吉 「菊乃? カカァのことか? 関係ない関係ない。けっ!」
お 染 「梅吉さん、今日は随分威勢がいいねー」
梅 吉 「あんなクソババアが怖くって、世の中が渡っていけますかっていうんだ!」
お 茂 「本当かねー?」
梅 吉 「あたぼうよー! 菊乃なんていうのはね、所詮は偉そうにしてるだけでね、
     あの態度のデカさが自分のお腹のデカさに比例してるってことをね、
     オレはねー、一度ガツーンって言ってやろうと・・・」(菊乃登場)
菊 乃 「あんたっ!」
梅 吉 「はいっ!」
菊 乃 「何だって?」
梅 吉 「えっ!?」
菊 乃 「もう一度言ってごらんなさい」
梅 吉 「ごめんちゃい」
菊 乃 「帰ろうかね」
梅 吉 「はい」

梅吉・菊乃、去る

虎 造 「ありゃ今晩とんでもないことになるなー」
幸 代 「梅吉さん、おとといの晩、裏の納屋で一晩過ごしたばかりなのに・・・」
お 茂 「先週の雨の日は軒下に吊るされてたよ」
虎 造 「軒下に!?」
幸 代 「菊乃さんもやるねー」

3人笑っている そこに時蔵が慌てて飛び込んでくる

時 蔵 「た、た、大変だぁ! 伍平が、ご、ご、伍平が!」
虎 造 「時蔵、どうしたんだ? 落ち着いて・・・」
時 蔵 「と、と、虎 た、た、大変だ えれぇことになっちまった」
幸 代 「時蔵さん、深呼吸、深呼吸」(時蔵に深呼吸させる)
虎 造 「で、どうしたんだ?」
時 蔵 「虎、落ち着いて聞いてくれ」
虎 造 「落ち着くのは、てめぇのほうだよ」
時 蔵 「伍平が殺された」
お 染 「伍平さんが!?」

人が集まってくる

虎 造 「何バカなこと言ってんだ 冗談も休み休み言え」
時 蔵 「冗談なんかじゃねぇ この目で見てきたんだよ」
幸 代 「まさか・・・」
時 蔵 「伍平だけじゃねぇ おとしさんや、おみつっちゃんも・・・」
お 染 「そんな・・・」
虎 造 「一家全員?」
時 蔵 「それに向こう岸のおきよさんまで・・・」
幸 代 「なんてこと・・・」

まわりでも口々に不安の声

虎 造 「誰が、誰がそんなひでぇことを?」
時 蔵 「なんでも鬼の形相をした化け物みたいなヤツらを二人見たヤツがいるんだ」
虎 造 「鬼なんて、そんな訳は・・・」
お 茂 「ひぇーっ、くわばらくわばら」
時 蔵 「いやぁ、ありゃ人のすることなんかじゃねぇ・・・」
幸 代 「えっ・・・」
時 蔵 「中にゃ、頭のてっぺんからバッサリと・・・」
お 染 「まさか・・・」(気を失う・まわりはざわめく)
お 茂 「お染さん!」
時 蔵 「大丈夫かい?」
幸 代 「しっかりして!」
虎 造 「大変なことになっちまったなぁ・・・」

暗転 



《1幕3場》


 声     今は昔、竹取の翁 (おきな) といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、
       よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造 (みやつこ) となむいひける。
       その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
       あやしがりて寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、
       いと美しうてゐたり。
       翁いふやう「われ朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ。
       子となりたまふべき人なめり」 とて、手にうち入れて家へ持ちて来ぬ。
       妻 (め) の女にあづけて養はす。うつくしきこと限りなし。
       いと幼ければ籠 (こ) に入れて養ふ。竹取の翁、竹を取るに、
       この子を見つけてのちに竹取るに、 節を隔ててよごとに金 (こがね) ある竹を
       見つくること重なりぬ。かくて翁やうやう豊かになりゆく。
       このちご、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月 (みつき) ばかりに
       なるほどに、 よきほどなる人になりぬれば、髪上げさせ、裳 (も) 着す。 
       帳(ちやう) の内よりもいださず、いつき養ふ。このちごのかたち、
       けうらなること世になく、屋 (や) の内は暗き所なく光にみちたり。
       翁ここちあしく、苦しき時も、この子を見れば、苦しきこともやみぬ。
       腹立たしきことも慰みけり。
       竹を取ること久しくなりぬ。勢ひ猛 (まう) の者になりにけり。



《1幕4場》


竹取の翁邸
かぐやが夜空を眺めている

き よ 「旦那様、帝様より献上品が届きました」
 翁  「おぉ、またかい・・・」
 媼  「帝様もお懲りになられずに、いつもいつも申し訳ないことです」
 翁  「あぁ、かぐやの気持ちも考えると・・・」
 媼  「そうでございますねぇ・・・」
 翁  「きよ、いつものように奥の間に」
き よ 「かしこまりました」

翁、かぐやを見つけ

 翁  「かぐやよ、どうしたのじゃ?」
かぐや 「おじいさま」
 翁  「天上界のことが恋しいのか?」
かぐや 「いいえ、おじいさま 私は天上界のことを思っているのではありません」
 媼  「それでは何故、毎夜毎夜、月を見上げては涙を流すのです?」
かぐや 「おばあさま、かぐやはおじいさまやおばあさまと、お別れするのが辛いのでございます」
 翁  「かぐや、それは私達とて同じこと、お前のことを我が子と思い、
     今日この時まで暮らしてきたのじゃ・・・」

回想シーン1
赤ちゃんかぐやを着替えさせながら
翁 1 「おぉ、なんとうい子じゃ」
媼 1 「まっこと、姫のようでございますねぇ」

回想シーン2
かぐや(幼児期)と食卓を囲んでいる
かぐや 「おばあさま、大変美味しゅうございます」
翁 2 「そうだろう そうだろう、ばあさまの料理はなんでも絶品だからのー」
媼 2 「ありがとうございます ほら、たーんとお食べ」
かぐや 「はい」

回想シーン3
かぐや(少女期)と散歩をしている
かぐや 「おじいさま、おばあさま、こっちこっち!」
 翁  「かぐや、待ちなさい」
 媼  「そんなに駆けてると、転びますよ」
かぐや 「平気平気! ほら、早く早く!」

 翁  「今日この時まで、お前のことを我が子と思い・・・ 
     その思いは今も、いやこの先も変ることはなかろうて」
 媼  「かぐやー」(泣く)
かぐや 「おばあさま、どうぞ、どうぞ泣かないで 
     かぐやは、かぐやはこれから先もずっとおじいさまとおばあさまと一緒に!」(泣く)
月の長 「かぐやよ、何を愚かなことを申しておる そなたには月に戻らねばならぬ宿命があるのじゃ」
 翁  「貴方様はどなたにございます?」
かぐや 「月の長でございます」
月の長 「翁よ、おぬし達の気持ちもわからんではない 
     しかし、おぬし達がかぐやと過ごした年月は、月の世ではほんのひと時の出来事とされておる
     それにかぐやは、もともと人の世の者ではない 月の都の者じゃ 
     翁よ初めに約束したはずじゃ 時が来ればかぐやは月に戻すと 
     分別のないことはまかり通らぬ」(去る)
 翁  「お待ちくださいーっ!」