Man On The Dream

Man On The Dream

日本国は、日本人のもの。


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「あの坂を登り切れば海が見えるよ」


懐かしくて 耳になじんだ言葉

振り返るたびに

夢の重さを噛みしめた


流れる雲と 雲間から差し込む光

走り出せば その瞬間に景色は変わる


昨日の山は 振り返れば膝元ほどで

背丈はもう伸びないが それでも幾つ越えてきた


いくつもの流れ星が通り過ぎた夜に

それでも走り続けた君に

時々泣き崩れた君に


目の前の坂は

確かに今 見えるか

どうだ

走ってみないか 今一度

ひとつ角を曲がるたびに

すりぬけてゆく ものばかり

手のひらでおさめきれない

血の色をした心が


怒りをにじませた者から

表舞台を消えてゆく

それほど違った訳じゃない

俺とおまえの何が違う


夜はまだか

飢えた獣になって

月に吠える


空はどこだ

いつだって変わらない

あの笑顔は

新しい人に会う

それはお互い様だから

持ち前のあれとか、それとかで

なんとか話をつなげようとする


新しい出会いはなんだか

少しだけ疲れてしまう


それはお互い様

だからこそ、想いを持っていく


真っ白ではない二人の

真っ白な出会いだから

これから先の話をぶつける


僕らは少しずつ擦れあって生きる

軽石のように身を削りあって

そして磨き合って わかりあって


そこからこぼれ落ちる

あの透き通るような想いを

漏らさないように すくい取る

海へと帰る人がいるのです

空から戻る人がいるのです

山を求める人がいるのです

風と走る人がいるのです

月に祈る人がいるのです

言葉に頼る人がいるのです

星に涙する人がいるのです

花を愛する人がいるのです


人へと帰る人がいるのです

人から戻る人がいるのです

人を求める人がいるのです

人と走る人がいるのです

人に祈る人がいるのです

人に頼る人がいるのです

人に涙する人がいるのです

人を愛する人がいるのです

人を愛する人がいるのです

凍えるような風に

ふと左手を見つめると

指がいつもの倍以上に

膨れ上がって破裂しそう


こみあげる

むず痒さ

それと同じくらいに

気持ちがノックする


出て行ってもいいのですか

この気持ちはここから外へ

飛び出してもいいのですか

まだ迷いながら


それでも寒空の下で

静かに膨れ上がる薬指


こみ上げる

むず痒さ

抑えきれなく

なっても

きっと

感覚がまるくなってゆく

月が満ちてゆくのと

ほぼ同じ形で

身体が心から離れてゆく



感情が剥がれ落ちてゆく

ナイアガラの滝というより

鶴見川に注ぐ排水溝のような

あの重さとスピード



末端から体温が

足下から冷えが立ち上って

過呼吸をして 言葉を閉ざして

喃語のように いいえ いいえ とくり返し



薪は確かにここにあるのに

マッチもたくさん用意したのに

滲み出した湿気が蛇のように

まとわりついては 重たくする



伝えたいことがないんだ

それすら受けいれてしまって

引きずられては 踏ん張っては

歯を食いしばっては 目を閉じて



歓びって何だっけ

あんなに確かにあったのに

なにもわかってないし

なにもかわっていない



支えるものが

なくなっても生きてゆけ

もしくはつくれ

支えて欲しいなら

バスが走るだけで

大切な何かを思い出す

そんなことがあるなんて

信じようとしなかった

あなたに会うまでは


マンションに灯がともって

それだけであたたかい

そんなこと初めてだった

あなたを知るまでは


世界中のあらゆる景色と

わたしの感覚がつながってゆく

今までは決してなかった

あなたに会うまでは


暗闇からそっと手を伸ばす

遠い光へ――


そんな言葉が

熱を持って

身体を内側から温める

そんな感覚――


思い出すだけで

全てが甦り

世界が色を染めてゆく

そんなこと初めてだった

タカダワタルがいなくなって

3年とちょっと経って


ニュースを聞いた頃は

とても信じられなくて

それでも「お別れの会」なんかあって

ほいほいと出かけて

そこで初めて

彼の笑顔を見て

でもそれが遺影だって

気づいて

そこで初めて力が抜けて


タカダワタルがいなくなって

3年とちょっと経って


ラジオ番組が特集を組んで

タカダワタルの歌声が聞こえて

あの素朴で優しい声が聞こえて

ふと目を開けて

そこに何もなくて

面影も何もなくて

ラジオからタカダワタルが聞こえて

あの素朴で意地らしい声が聞こえて


今ごろあの世で一杯やってて

そんな笑い声が聞こえてきて

もう会えなくなったことに気づいて

追いかけられなくなって

だってもっと生きていたくて


タカダワタルがいなくなって

3年とちょっと経って


ボディーブローのように

少しずつ打ち寄せる悲しみと戸惑いと

あれがきっと運命だったんだって

涙も出なくなって

柔肌のような心を

それ以上強くすることもない

それ以上弱くなってもいけない


あなたが心を痛めた

その瞬間を けして忘れず

同じことを誰かに繰り返さないように

この心はまだ痛めておく


その代わりに

何を言われても

動じない覚悟を

その根っこに据えてみろ

それに耐えてみせろ

なにかがそこにほしいのならば

片思いをしている

もうずっと

長い時間をかけて

思いを積んでいる


それは異性とは限らない

年齢や性別

出会った場所や時間を

問わずに

もうずっと

片思いをしている


意思の疎通を

していると

思い込んだまま

ぼんやりと

生きて


頭の中から

出てこれない

頭でっかち


手で触れてみろ

そこに目があり耳がある

そっと撫でてみろ

ぼやぼやした口がある