GETライブが始まる前に寄席に行ってきました。
先月も行ったのですが、今回は東洋館ではなく浅草演芸ホールです。
東洋館のすぐ隣りにあるのですが入るのは初めてです。
入ってすぐの受付の横にサイン色紙が飾ってありました。
寅の絵が入ったものもあるので今年の初めに新しく書いたのでしょうか。
右の3人は立派な文句が入っているのに、一番左の林家正蔵さんだけなんとなく空気を読んでないような…。
中に入ると一階席も二階席も超満員でした。
修学旅行かなんかの高校生が大挙襲来したようです。
高校生以外の席は老人やら年のいった主婦で埋まってました。
T層とM3F3層のみという極端な年齢分布です。
僕のように仕事をサボって落語に興じるような道楽者のM1層は一人もいませんでした。
開始からだいぶ遅れて着いたので、柳家さん吉さんが登壇中でした。「さん吉さん」て若干クドいですね。
二階の桟敷席が空いていたので一番隅に陣取り、欄干にもたれて舞台を見下ろします。
舞台を見下してみて気がついたのですが、噺家さんたちが手をつく位置の床板の表面が白く剥げて鈍く光っていました。僕はその部分の白光りが意味する歴史と研鑽に大いに感動いたしました。
一階席に座っていたらおそらく気がつかなかったに違いありません。
まぁ、齢を重ねた噺家の禿頭の光にも歴史と研鑽を感じるのですが。上から見てたから余計。 幕間の舞台
この日の僕のお目当ては昭和のいるこいる師匠です。
中学生の鳥居さんが偶然寄席で見て、お笑い芸人を目指すきっかけになったという漫才芸を死ぬ前に一度生で見てみたかったのです。
死ぬ前に、というのはもちろんあちらさまが死ぬ前に、という意味です。(←失礼)
浪曲などの古典的な出囃子が多い中、のいるこいる師匠の出囃子は『幸せなら手をたたこう』でした。
お客さんも曲に合わせて手をたたき始めたので和やかな雰囲気になりました。
余談ですが寄席のお囃子は生演奏なのですね。
最初はてっきり録音したテープを再生しているものだとばかり思っていましたが、演者さんが登場して中央に座り(あるいは立ち)お辞儀をするタイミングで演奏もきれいに終わるので不思議に思っていましたが、どうやら客席から見えないところで実際に楽器を使って弾いているようです。
生の寄席囃子とは粋ですね。笛や三味線や鼓の音は風流で落ち着きます。
のいるこいる師匠のネタは正月のテレビで一度見たことがありますが、あの適当な相づちが生で見られて感激でした。あと、両手を小刻みに動かす適当な謝りかたとかかっわいい。会社で使おうかな。
年を取ってもずっとコンビを続けているのは傍から見ていてとても微笑ましいですね。
で、どっちがのいるさん? (←本当に知らない)
ネタ中の話で知ったのですが、ボケの方の○いるさんは27歳の娘さんと19歳の息子さんがいるそうです。
見た感じアラカンかと思ってましたが未成年の子供がいるなんてなかなかやりますね。
アラカン、というのはもちろんアラウンド還暦ではなくアラウンド棺桶です。(←失礼)
落語や漫才の話芸だけではなく、色物と呼ばれるマジックや紙切りなどの芸をする演者さんもいます。
マジックは真上から眺めていたのでタネが見えちゃうんじゃないかとハラハラしましたが、まったくわかりませんでした。さすがプロですね。
林家正楽さんの紙切り芸は、この日一番印象的でした。
手に持ったハサミを使って、1~2分の間に絵で書くよりも見事に輪郭を切り抜くのです。紙を切っている間はお囃子が鳴り、正楽さんの小ネタ。「何でも切りますよと申しましたら、お煎餅の袋が開かないので切ってくれというお客さんが…」とかいろいろ。
この日は雪混じりの雨だったので、最初に相合傘を切ってくれました。 拾い物ですが構図は同じです
ここからは客席のリクエストに応じて即興で紙を切るのですが、この日のリクエストは「浅田真央」、「獅子舞」、「月とすっぽん」。全部風情のある図柄に仕上がり感服しました。
「月とすっぽん」なんてことわざじゃん、と思ったけど月見に興じる亀と人の構図。いとをかし。
ここまでは中高年のお客さんでしたが今度は女子高生集団から「せーのっ、キティちゃん!」と声がかかり、正楽さんは「切れるものと切れないものがありまして…」と困窮した様子でいると、他の女子高生が「結婚式!」と代わりのお題を出したので和装の新郎新婦を切り抜いていました。(これを切る間、お囃子が『結婚行進曲』に変わりました。粋な計らいですね)
切り抜いた紙はリクエストしたお客さんがもらって帰れます。お客さんは紙をもらう代わりに、おひねりやらビールやらバナナやら煎餅やらを舞台に置いていきました。女子高生はコアラのマーチをあげてました(笑)。
正楽さんは最後に「できるかどうかわかりませんが、お客さんのリクエストに答えるのが仕事ですから」と見事にキティちゃんを切り抜いて面目躍如の技を披露し、たくさんの拍手とお土産をもらって下がっていきました。次に会うときはなんかリクエストして切った紙をもらいたい。
落語家のジェスチャーやら扇子や手ぬぐいの使い方にも趣がありました。
からの手で酒を呑んだり饅頭を食ったり、すぼめた扇子を煙管にして煙草を吸ったりするのですが、ホンモノに見えてくるくらいシズル感ありありです。役者ですね。
あと感心したのはみんな持ち時間の15分でビタッ!とネタが終わることです。体内時計があるのかな?
若手のお笑いライブなんかは持ち時間を超過することがよくあるし、出番の時間などはプログラムに載ってなかったりするのですが、この日見た寄席は1時間刻みでスケジュールが立てられていてきっちり守られていました。これもまた熟練の技の一つでしょう。
話が長くなりましたが寄席って思ったよりずっと楽しいですね。
血糖値が※印のお友達を作って一緒に通いたいくらいです。