それから | 札幌のイタリアンレストラン Mano e Mano のブログ

それから

店の前の植え込みは春になると少しずつ色を取り戻します。気がつけば、入り口のライトに絡まった蔦の緑があふれておりました。

閉店のお知らせをしてからというもの、連日名残を惜しみにいらっしゃるお客様で店は大変な賑わいでした。どうしてもお席をご用意できなくて泣く泣くお断りしたお客様も多数いらっしゃり、閉店の日を繰延にしたいと思ったほどでした。本当に申し訳ございませんでした。

毎日のようにお客様から労いの花束をいただきました。花の色にどれほど悲しみが癒されたことでしょう。


最後のディナー営業は今は亡き恩人の遺影に献杯して始まりました。
5時半のオープンを待たずして続々とお客様がいらっしゃり、小さい店は満席でスタートです。最終日にはたくさんケーキを焼いてねとシ
ェフにお願いしておいたらショーケースに並べきれないほど、でもこれでお客様のリクエストにもしっかりお応えできます。
次々入るオーダーに厨房はフル回転、オーブンの熱が不思議と今夜だけは心地良く感じます。



これで最後かと思うといつものメニューがなおさら愛しく思えて涙がこぼれました。

今夜はいつにもましてたくさんの写真をとりましたが、これは小さい店の良さが表れた1枚です。マーノはお客様同士が仲良くなれる店でした。「シェフもママも飲もうよ!」、何度となくおしゃって下さるお客様と語り合った日々はかけがえがありません。
閉店を決めてからの癒えない悲しみに身も心もぼろぼろになりながらも、お客様からいただいた愛でなんとかこの日を迎えることができました。22年の長きに渡り御愛顧いただきましたこと、心より感謝申し上げます。

最後のお客様をお見送りしたのは25時、ふと見上げれば柔らかい店の灯りが。こんなにしみじみと眺めたことはなかったと今気がつきました。

店の歴史は私ども夫婦の歴史と重なっております。若かったあの頃と同じように、希望を胸に新たな歴史を刻んでまいります。皆さまと再びお目にかかれるよう、マーノでつないだ手と手を離さぬよう、今日の日はさよならまた会う日まで。
マーノ・エ・マーノ店主 佐々木淳穂・智美