これまでの話






28話 才能



高頭が三井に声をかける。
「三井、後半行くぞ。アップしておいてくれ」

三井、目をギラつかせながらウォーミングアップを始める。

桜木がその姿に気づいた。
「おおお、ミッチーついに出番か!? こりゃオヤジも喜ぶぜ」


三井、さらに目がギラつく。
「安西先生の目の前でいいプレイを見せるんだ。
そしてスカウト陣の前でもいいプレイを見せ、大学推薦をもぎ取る。
ふっふっふ、見えてきたぜ、三井寿の明るい未来が」


休憩は流川。

桜木、悪代官のような顔で笑う。
「くっくっく、ついに引っ込んだか。もう戻ってくんじゃねえぞキツネ」



ハーフタイム終了。




秋田のメンバーは変わらず。神奈川は流川に代えて三井を投入。


「おおーーー!!7番だ。シューターの奴が出てきたぞ」

「神も残ってる!大阪戦の時のツインシューター作戦か?」


神奈川ボール。


牧が、ゲームメイク。

仙道、牧、三井とボールが回り、花形へ。

花形、華麗なステップワークで野辺を振り切る。


「あの8番、花形!!あいつ上手いぜ!!技巧派のセンターだ!!」

「パワーは野辺、テクニックは花形ってとこか?」


しかし、沢北がすぐにヘルプに来た。

沢北は三井のマークを外して、花形に寄って来たのだ。

そのヘルプディフェンスが来る前に、花形は外の三井へパスを出す。

三井には、深津が来る。

三井は牧に出した。牧には松本がつく。

牧は神に回した。神、ノーマーク。


3Pシュート。


ザシュ!!!



「おおおおおおおおおおおおお!!!!!神!!!」

「また3点だ!!逆転!!!」

「後半の先制は神奈川だあ!!」


観客席で赤木が感心している。
「インサイドの花形に渡して、ディフェンスを収縮させて、外から射抜いたか」

魚住が続く。
「花形が1ON1を制することで、ディフェンスがローテーションせざるを
えなくなる。そして、パスを回していく中で神が空いたというわけか」

安西がニッコリ。
「素晴らしいパス交換でしたね。即興の選抜チームとはとても思えない」



山王の攻撃。

やはり攻撃のファーストチョイスは沢北。

ボールを持つ沢北につくのは三井。


沢北、ドライブ。

しかし、三井抜かせない。

というより、どちらに切れ込んでくるか、読んでいたかのようにコースをふさいだ。


沢北、一瞬焦る。
「こ、こいつ……」


三井、不敵な笑み。


「ああああ!!!!抜けない!!」

「沢北が抜けない!!どういうことだ!?」



そこに深津の声。

「沢北、戻すピョン!!」

沢北は一度深津へ戻した。



神奈川ベンチで高頭が驚いている。
「三井寿……、天才とは奴のことだな。あのへんのセンスは全国最高クラスだ」

流川、ちょっとビックリ。
「すげーな…」



もう一度沢北にボールが戻る。

沢北、再びカットイン!今度はあっさり抜き去る。


「あれ?」

そしてミドルシュート。



ガン!!


リングに嫌われた。

「あああああ!!!惜しい!!」


リバウンドは仙道。


神奈川ベンチ、長谷川が考えている。
「なんで今度はあっさり抜かれたんだ?」

藤真が答える。
「三井の予想が外れたんじゃないか? さっき止めたのは
読みが当たった感じだったからな。アイツは予測で沢北についている」

長谷川が聞く。
「そうか…。身体能力では沢北のほうが圧倒的に上だろうからな。
スピードでついていくのは難しいか」

藤真が腕組み。
「…にしても、あの沢北をいきなり止めるってのは、ちょっと信じられないぜ」

長谷川、何かを思う。
「三井……(さすがオレに勝った男…)」



その三井が、

この神奈川の攻撃でビッグプレイをやってのける。





続く



ペタしてね