フィギュアスケートにおいて、ノーミス、パーフェクト、ゾーンに入った、マジカルモーメント、そう呼ばれるような試合やプログラムは何回もあったのでしょうね。


そういう実施を目指して選手たちは頑張っているのでしょうし、そういうものを見たいとファンも観客も視聴者も望んでいるのではありませんか?


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採点競技はフィギュアスケートに限らず、ノーミスの選手のほうが難易度が高いミスありの選手より勝利に近い傾向にあるのだと感じます。


たぶん、観客が「今日、ここでこの演技を見られて良かった」と思いスタンディングオベーションするくらいの演技、マジカルモーメントと呼ばれるような瞬間こそにフィギュアスケートの芸術性を感じてきたのでしょうね。


そのほとんどが、ノーミスだったのだと思います。


またこういうものを見たいと観客が願うもの、それをできる選手をあいえすゆうも高く評価してきたのではないでしょうか。


私は、羽生結弦選手が2015年NHK杯で得点の壁をド派手〜に粉砕してから、採点が迷走し始めたのだと思っています。


当時、SPで100点を超えた選手は羽生くんだけだったけど、その世界記録101.45をさらに更新して105点の壁を超えて106.33を出しましたよね。


フリーに至っては、Pチャンさんの196.75点を遥かに超えて、200点の壁も210点の壁も一気に超える216.07。


合計も、Pチャンさんの295.27だったものを322.40と、300点と310点と320点の壁を粉砕してしまったんですから。


他の誰も300どころか、290にもなかなか達していない中で…


羽生くんのノーミス、マジカルモーメントの破壊力をまざまざと感じたからなのか、GPFでは(たぶん男子選手たち全員に)甘い目に採点されていたと思います。


そりゃね、あれだけのマジカルモーメントを目の当たりにしたら、「他の選手たちにももうちょっと勝機があると思ってもらわないと困る」くらいのことは考えたでしょうから。


ところがSPではノーミスは羽生くんだけ、しかも110.95という恐ろしい高得点で110点の壁を超えましたよね。


フリーでも219.48、合計は330.43と、330点の壁まで超えましたけど。


その影で、フェルナンデスさんがフリー201.43、宇野くんが190.32という高得点だったことを憶えているでしょうか?


このときの宇野くんは、高橋さんや町田さんの自己ベストを上回っているんですよ?


羽生くんが得点の壁を粉砕したあとでなかったら、フェルナンデスさんが200点の、宇野くんが190点の壁をそんなに簡単に超えられたかどうか…


2015年GPFの男子フリーが、羽生くん以外のメダリスト2人、フェルナンデスさんと宇野くんにとってもマジカルモーメントと呼ばれるほどのものだったか…


ちょっと考えてみたいものですね。


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フィギュアスケートはノーミスの演技がジャッジに好まれる、それは確かだけど。


ノーミス=マジカルモーメントとは限らないんですよね。


同じプログラムを何回もノーミスしていたら、難しいことをしていてもそのレベルがわからなくなってしまって、ノーミスで当たり前のように感じることもあるのではないでしょうか。


かえって、ずっとノーミスだったのに、今回はミスしてしまった…というものを見たときに、何だか損したように感じることもあるのでは?


むしろ、ひとつのプログラムをなかなかノーミスできなくて、これをノーミスしたらどれほどのものだろう?とファンに望まれてからのノーミスのほうが、マジカルモーメントになることもあるでしょうね。


あるいは、オリンピックという誰もがプレッシャーに押し潰されそうな試合でなら、ノーミスだったらマジカルモーメントに直結するのかもしれませんけど。


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あいえすゆうが羽生くんのノーミスをパーフェクトだと認めたくない、これ以上マジカルモーメントでファンを独占されたくない、そういうふうに考えて「ノーミスできないようにした」のであれば、その時点で「フィギュアスケートの芸術性」を自ら手放したのでしょうね。


芸術は完璧を求めるもの、ファンはパーフェクトを讃えたいもの、それに対しての背信行為としか思えません。


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羽生くんのゾーンに入ったときの威力は、ヘルシンキ世界選手権のフリーHOPE&LEGACYのときに感じました。


私はTV観戦していたに過ぎないのに、後半に入るくらいの頃に「ノーミス、パーフェクトな演技で世界記録更新して逆転優勝する‼️」と感じましたもの。


あとから、SPの得点差を考えたら、世界記録=優勝とは限らないのに何故そう思ったのか、自分でも説明がつかないんですよね。


そのくらい、ゾーンに入った羽生くんは、TV視聴観戦者までそのゾーンに引き込んだのでしょう。


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そして、ノーミス、パーフェクトなときはもちろんのこと、ミスがあってもマジカルモーメントのようになったこともありますよね?


ニース世界選手権のフリーロミオ+ジュリエットとか、2014年GPFのフリーオペラ座の怪人とか、転倒があっても「伝説のフリー」だったのではないでしょうか。


オリンピックという特別な試合でなくても、ノーミスの演技でなくても、羽生くんのスケートならマジカルモーメントと呼ばれる瞬間があるんです。


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羽生くんはずっと難しいことに挑戦していますよね。


だから?ノーミスのときの破壊力が強いのでしょうか…


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今ではもう、オリンピックどころか、試合でさえない「アイスストーリーの中でも」マジカルモーメントはやってきます。


私は何を見たのだろう?

私はこれが見たかった。

私が想像もしてなかったものを見た。

そんな、素晴らしいスケートを。

1日の、アイスストーリーの中で、何回も鑑賞・経験するんですから。


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もう、マジカルモーメントにならないようにと、リンクコンディションやさまざまな妨害で邪魔されることなく。


羽生くんは成功のために尽力してくださる味方にだけ囲まれて、アイスストーリーを紡いでいけるんですね。


嬉しいです〜


読んでくださってありがとうございました。