そこに知らない物語があるから。


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羽生結弦選手のしてきたゲームは色々あるのかもしれませんが、RPGが多い気がします。


私はゲームというものをあまりしたことがなくて、Wiiフィットで筋トレしていたとか、スマホでパズドラしていたとかくらいなので、ゲームマニアの方たちの熱弁もどこまで理解できているのか、甚だ心許ないんですが。


RPGって、要は…ストーリーの分岐点で、プレイヤーが選択して進んでいくんですよね?


人生においてもそうですけど、違うほうを選んだら違う結果になってしまうのでしょう。


今までずっと、選んできたことが積み重なっての現状…というあたり、やはり、人生とゲームとで重ねていける部分もかなりあるのかなと思います。


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大河ドラマ「光る君へ」は、源氏物語の作者が主人公です。


紫式部さんのことはそんなに解明されていないようで、本名もわからないんですよね。


それでいて、同じ時代の方たちのさまざまな日記や記録が残っている、和歌もその逸話も伝わっている、というあたりが凄いなと思います。


当時の文字を私が読めるわけではありませんが、日本語で…旧仮名遣いではあっても、古文として接するのは無理ではないというのが…


千年ですよ?


千年前に書かれた物語が現代まで伝わっている、それも、正史とかじゃなくて小説が‼️


なんかもう、「物語の持つ力」というものに圧倒されている気分です。


そのくらい、読みたいという想い、この物語を自分以外の誰かにも読んで欲しいという想いが強かったんでしょうね。


文字の読み書きが庶民にまで行き渡るのは紫式部さんの生きていた時代よりはずっとあとですが、いずれ「この源氏物語を自分で読みたい」と思うことが学びの原動力になった、という方たちも出てきたことでしょう。


まひろさんの望み(庶民でも文字の読み書きができるようになること)は、そういう悠久の時を経て届くのかもしれないとか考えると、壮大ですよね。


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物語になっていると、その登場人物の生き方や考え方、周囲との関わりや人生の変遷に触れることができるんですよね。


その物語に魅力があれば、続きが楽しみになるし、主人公以外の登場人物も気になるし、想像したり妄想したり、その世界観の中に身をおくような擬似体験ができるんです。


それは、現実の自分の家族や交友関係の中だけでは知り得ないような、「こういう立場になったら」という想像力にもつながるのでしょう。


昔はそれは小説だったかもしれないけど、お芝居や映画やドラマも、マンガもアニメも、「物語を展開させていく」ことによってその世界観に多くの方たちを惹きつけている気がします。


そして今はゲームの中でも繰り広げられる、物語の世界観が…それに触れた方たちを魅了しているのでしょうね。


羽生結弦選手のRE_PRAYはゲームの世界観でできているというのは、当初からコンセプトとしてわかってはいました。


それでも、ここまで深く広く構築された物語の世界になるというのは、やはりその「ご自身が好きでたまらない世界観」に没頭していたから創れたのかな?と思います。


もしも…ですよ?


プロローグはともかく、GIFTやRE_PRAYがアイスストーリーじゃなかったら…


セットリストは同じでも、間の映像が物語ではなくて他のものだったら。


ここまで惹きつけられただろうか、のめり込んで離れられなくなっただろうか、と…


「そこに知らない物語があるから」


続きを知りたい、そして、何度でもその世界観に没頭していたいと願っていたのかもしれないと…


もちろん、「羽生結弦のスケート」という核があるから、どんなふうに仕上がっていたとしても、そのプログラムたちを見られるだけで嬉しかっただろうなとは思うんですけどね。


だけど、私をここまで惹きつけてとらえて離さないのは…


やはり、物語のもつ力というものがあるのだろうなと感じます。


それぞれの、羽生くんが「好きでたまらないゲーム」だから、それを伝えたくて創ったアイスストーリーなのだとしたら。


ゲームの作者さんたち、それを愛好してきた方たちにも見せるファンアートのようなRE_PRAYだったのでしょうし。


それを、ゲームの世界観を知らないままの羽生くんのファンにも楽しんで受け取れるものに仕上げてくださったので、羽生結弦選手はスケーターでプロデューサーとしても凄いけど、ストーリーテラーとしてもどんどん向上しているんだなと思います。


その物語、その世界観が見られる時代に生きられる幸せをかみしめて。


読んでくださってありがとうございました。