これはフィクションです。
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世界を覆う暗闇はどこからきているのか。
彼は感覚を研ぎ澄ませて、その源を辿ろうとした。
しかし、その原因かもしれないものは、そこここに存在しており、それぞれが別のところから現れ、絡みあっている。
全てを薙ぎ払い、一刀両断で解決できるなら、こんな爽快なことはないだろう。
だが、人の世というものは、そのように断ち切れるものでも割り切れるものでもない。
混沌とした、絡み合ったものをときほぐしていかなければならないのだ。
彼はふと、これまでのことを思い出した。
絡み合い、もつれあい、どうしようもないくらいに歪みと妬みと欲にまみれたモノを。
祓い、清めたと思っていた。
あれは幻だったのか。
それともやはり、祓っても清めてもあのモノたちはまた現れるということなのか。
では自分は、斃れるまで祓い清めたところで、結局のところその穢れがまた現れてくることを承知の上で力尽きてしまうのか。
そんな、どうしようもない諦めにも似た感情に支配されそうになることも、一度や二度のことではなかった。
そして…
何故今でも自分は闘っているのだろうか。
そう自問することも、何度もあった。
そのたびに、明確な答えを見つけたと思っていた。
挑戦したいことがある。
闘うことで見えてくるものもある。
だが、それだけだっただろうか。
彼を闘いに駆り立てたものは、祓い清めなければならない穢れが蔓延っていたからではないのか。
これを放置したまま、闘いの場を後にすることができなかったからなのではないのか。
ならば自分はやはり、斃れるまで、力尽きるまで、闘いの場に身を置くのだろうか。
答えはまだ出ない。
挑戦に成功した暁には、答えが出るのだろうか。
少しでも暗闇を薙ぎ払い、明るさや浄らかさを取り戻してからなら。
後続に託す気になれるのだろうか。
答えはまだ出ない。
そしてまた闇が深くなっていく。
…………
これはフィクションです。
読んでくださってありがとうございました。