ものごとの手順とかやり方、うまくできるコツ…
そういった、ある程度の「メソッド」が確立されているものと。
新しいことに挑戦していて、試行錯誤している途中…
というような、確立された「メソッド」がまだないものと。
そのどちらであっても、他者に教えるということは難しいのだと思いますが。
後者のほうが、より難しいように感じます。
もしも秘伝とか、もっというなら一子相伝とか、閉ざされた一門以外には伝えないようなメソッドがあったとして。
そういうものは、どこまで確立できたと思っていいのでしょうか。
むろん、これは上級者にしか教えられないものだとか、そういうなんらかの「滅多に教えられるものではない」理由はあるのかもしれませんが。
上級者にしか教えられないというのと、門下生にしか教えないというのとでは、微妙に違いますよね。
フィギュアスケートでいうと。
クワドを教えるなら、トリプルを習得してからでしょう。ダブルしか跳べない選手にクワドを教えるなんて、無理ですよね。
さらに、トリプルを跳べる選手たち全員にクワドの跳び方を教えたとしても、習得することは困難でしょうね。
でもそこに、ある程度のメソッドを確立している指導者がいれば?
何人もの選手たちにクワドを習得させた指導者は、次に同じくらいのレベルの選手を教えるときに、やはり同じようにクワドを跳べるように指導できるだろうと期待されます。
そしてそういうメソッドは、門外不出のものであるなら門下生にしか使わないかもしれないし、そうでなくても高難度の技にはリスクが伴います。
指導者と門下生が一蓮托生、全ては指導者が、あるいは選手自身が責任を負うという決意のもとに実行するならともかく。
指導者の責任が明確でなく、メインのコーチはそのまま指導を続けながら、別のコーチに教えてもらうというのは。
どうなのでしょうか?
これが、チームコーチ制のところなら、構わないと思うんですよ?
クリケットクラブなら、メインコーチはオーサーさんでも、トレイシーさんやブリアンさんもいますから。
日本でも、複数指導体制のところはありますよね。
濱田さんのところでは、田村さんもともに指導にあたっていると思いますし。
佐藤信夫・久美子ご夫妻は、最初の頃から二人三脚だったのでは?
山田さんと樋口さんとか。
複数指導体制だと、何かあったときにも安心ですしね。
また、最近多いように感じるのは、振付師にコーチのような役割をしてもらうことです。
町田さんがミルズさんに、友野くんがジーさんに、試合も観てもらってキス&クライに一緒に座ってもらってましたよね。
そういうのはいいのでしょうけど。
なんか、腑におちないコーチ変更が、最近多いように思うのは、気のせいでしょうか…
そして怖いのは、責任の所在がどこにあるのかということです。
高難度ジャンプにつきもののリスクをどこまで誰が負うのか?
選手が未成年なら、特に。
習得するのも大変だろうけど、試合に入れるかどうかの判断も含めて。
そして、高難度ジャンプを習得させるメソッドと、試合で成功させるメソッドは、必ずしも同一ではないと思うので。
宇野くんの指導者がランビエールさんに決まる前にも、似たような危惧を抱いてました。
宇野くんは、あちこちで教えてもらって、それぞれのいいとこ取りをしていきたいみたいな発言をしていましたが。
そんな簡単なことではないでしょう?
実際、ランビエールさんに指導してもらうことになって、ホッとしたファンの方たちも多かったのでは?
短期間で何かを教えることと、ずっと教えて試合にも帯同するのとでは、関わる時間の差の分以上に違ってくると思うんです。
門外不出だから教え子にしか伝えないとか、そういうことではなくて。
ずっと教えてみて指導者も理解できる部分は、あると思うんです。
振付師は技術よりも表現について指導するのでしょうから、それはまだいいとしても。
一番高難度な技術を習得するためのコーチが、メインコーチではないというのは。
かなりのリスクがあるのではないかと心配しています。
羽生くんも、阿部コーチの指導を受けている頃に、ベステミアノワさん、ボブリンさんに振り付けのブラッシュアップをしてもらったことがありましたよね。
そういう、表現のための「違うところからの視点」は大事だと思います。
でも、リスクを伴う高難度ジャンプは、それを習得させてくれるコーチにずっと指導してもらわないと、かなり危険なのではないかと。
いいとこ取りなんて、そんな簡単にできるものではないと。
そう思っています。
指導者変更するのなら、メインコーチごと、練習拠点ごと変えるくらいのほうが、最終的には成功するのではないでしょうか。
仙台からトロントに行った羽生くんのように。
その覚悟と気概があったからこそ、多くのものを習得できたのだと。
それを体現して、華々しい戦績と成果を手にしたのだと。
そう思っています。
読んでくださってありがとうございました。