「李下に冠を正さず」
李(すもも)の木の下で冠を直そうと手を上げたら、すももの実を取ろうとしていると疑われる(かもしれない)ので、やらないほうがいい。
転じて、「疑われたくなければ、疑われるような言動はしない」ということ。

どうも、最近の「権力側」の方たちには、この意識が足りないように思います。

権力者におもねって甘い汁を吸いたいと思う人間なんて、いくらでもいるのです。
強い権力を持てば持つほど、注意する必要があるのではないでしょうか。

競合する相手より、優位に立ちたい。
そんなときに、それを決定する権限を持つ人と個人的に懇意にしていたら、頼りたくなるでしょう。
でも、それをしてしまうと、自分の立場だけでなく相手の立場も悪くしてしまう、友情にもヒビが入ってしまう…

そう考えて、踏み止まることができるかどうかで、その人の信用度が決まるのかもしれません。

少しくらい構わないだろうとか。
他の人もやっているだろうからとか。
甘く考えて足元をすくわれるよりも、逆に、「個人的なことで有利になったのだとは絶対に誰からも思われないように」と細心の注意を払うほうが信頼してもらえると思います。

フィギュアスケート界での権力は、ISUと各国のスケート連盟、そしてジャッジです。

日本のスケート連盟があれこれ問題視されているのは、ソチオリンピックのときに、連盟会長と選手の醜聞があったことに端を発するのではないでしょうか。

既婚者が人前で配偶者以外の異性とキスするということ自体も問題ではありますが。それについては、配偶者の方(とご家族)がご本人と話し合えばいいのかなと。

しかし、会長と選手という問題は、放置されてはいけないのではないでしょうか?

オリンピック代表に選出された経緯や、それぞれの選手への関係者パス支給の枚数のアンバランスさ、そしてその選手が復帰してからの国内試合での採点…

李下に冠を正さずという態度をとるなら、「この選手は会長のお気に入りだから優遇されている」と思われることは、一切、微塵もしてはいけないんです。

むしろ、「会長のお気に入りのはずなのに、冷たくされているんじゃない?」と思われるくらいで、ちょうどいいんです。

採点についてもそうです。

同じコーチについていた、いわば兄弟弟子にあたる人がジャッジをするなら、「身内だから高く採点した」とは絶対に思われないくらいに厳密に、他のジャッジに「厳しすぎるのでは?」と思われるくらいにしなければ。

連盟が「会長に忖度して」を口実に、選手のうちの誰かを優遇し他の選手を冷遇するのを放置してはいけないのです。

人間は、失敗するもの、間違うもの、ときには過ちを犯すものです。

しかし、権力側の失敗や間違いは、多くの人に迷惑をかけることになります。
それを未然に防ぐために、そして権力者もその権力を正しく使ってより良い社会にするために、「個人的なものを持ち込まない」覚悟が必要ではないでしょうか。

とりあえず、会長お気に入りの選手以外を「尊敬している」と言ったら、ジャッジに低い点数をつけられた。
と、ファンが思うような採点にはならないように、くれぐれも、「疑われることはしない」で欲しいと思います。

悪いのは、疑われることを権力側がしていることです。

読んでくださった方がいらっしゃるなら。

ありがとうこざいました。