8月8日(金)より公開の本シリーズ7作目にあたる『ジュラシック・ワールド 復活の大地』を観てきた。正直、期待と不安が半々だったが、その全貌を語りたい。
【ネタバレなし】
純粋なパニックエンタメへの回帰
まず、本作は過去の登場人物を一切登場させず、スカーレット・ヨハンソンらを迎えた全く新しい物語となっている。監督は『GODZILLA ゴジラ』のギャレス・エドワーズ。この布陣からも、シリーズを一度「再起動」させたいという強い意志が感じられる。
物語の舞台は、前作で世界中に解き放たれた恐竜たちがほぼ絶滅し、ごく限られた地域にのみ生息する数年後の地球。ある製薬企業が、心臓病の特効薬開発のため、巨大恐竜の新鮮な血液を求めて極秘ミッションに乗り出すところから始まる。
制作側も過去シリーズへの批判は承知の上なのだろう。劇中では登場人物の口から「恐竜はもう飽きた」というセリフまで飛び出す。シリーズのテーマだった科学技術への警鐘や、地球環境との共存といった要素は影を潜め、本作は純粋な「恐竜サバイバル」に焦点を絞っている。スケールを一度畳み、原点に回帰しようというわけだ。
その演出は、急な音や映像で驚かせるジャンプスケアに頼らず、じわじわと恐怖を煽るスタイル。全編35mmフィルムで撮影されたという映像は、ざらついた質感でこれもまた原点回帰を目指しているように感じた。特に水のCG技術は圧巻で、これだけでも劇場で見る価値はある。
総じて、夏休みに気軽に楽しめるパニックエンタメとして、非常に堅実に作られている。しかし、何か新しい要素があったかと言われれば疑問符がつく。過去作の様々な要素を組み合わせた「キメラ作品」というのが、ネタバレなしの率直な感想だ。
【ネタバレあり】
シリーズの「復活」が意味するもの
ここからは物語の核心に触れる。未見の方は注意してほしい。
物語は17年前の研究所での事故から幕を開ける。そして現代。世界に放たれた恐竜たちは、実は現在の地球環境に適応できず、ほとんどが絶滅。赤道付近の限られた島に集中して生息している、という事実が明かされる。この設定は、肥大化しすぎた風呂敷を畳むためのうまい落としどころだと感じた。
一方で、キャラクター描写は意図的に最小限に抑えられており、彼らが物語を動かすための駒のように感じられる場面も少なくない。主人公ゾラはトラウマを抱えた傭兵だが、その背景は説明セリフで語られるのみ。悪役の製薬企業も、恐竜のDNAで特許を独占しようとする単純な描かれ方だ。
そして、今作の主な敵は、もはや恐竜とは呼べない遺伝子改造ミュータント「Dレックス」。監督が語るように、そのデザインはエイリアンのゼノモーフやスター・ウォーズのランコアを彷彿とさせ、完全にモンスター映画の様相を呈している。
ただ、評価したい点もある。それは、過去のワールドシリーズで見られたような、やたらと知能の高い恐竜ではなく、動物的な本能で動く存在として描かれていることだ。また、ジョン・ウィリアムズの有名なテーマ曲も使用は最小限。恐怖感を高める不穏なBGMが、本作のトーンを決定づけている。
まとめ
『ジュラシック・ワールド 復活の大地』は、シリーズの「復活」を掲げた意欲作だ。エンターテインメント性は高く、恐竜から逃げ惑うという原点の恐怖はしっかりと感じられる。しかし、物語に大きな進展や新たな展開はなく、文字通りシリーズを「復活させただけ」という側面も否定できない。本作が、次なる飛躍への助走となるのか。今後の展開に期待したい。