今回のトランプとプーチンの電話会談は、ウクライナにとって非常に懸念される内容だった。表向きは停戦や平和に向けた話し合いが行われているようだが、その裏ではウクライナの国益が損なわれるような動きが見え隠れしている。
まず、トランプとプーチンの会談の成果として強調されているのが、ホッケーの親善試合という平和とはかけ離れた内容。これは、多くの国民が命を落としているウクライナの現状を考えると、非常に不謹慎であり、両首脳の認識の甘さを露呈していると言わざるを得ない。
停戦案についても、プーチンは30日間の完全な停戦を拒否し、エネルギー施設への攻撃停止にのみ合意した。しかし、その直後にもウクライナへの大規模な空爆が行われており、ロシアの言葉が全く信用できないことが改めて示された。ゼレンスキー大統領が指摘するように、これはロシアが自国の石油製油所への攻撃を避けたいだけであり、戦争を継続する意図の表れに他ならない。
捕虜交換についても、ウクライナが求める全面的な交換ではなく、小規模なものに留まっている。これはロシアが人道的な配慮よりも、単なるパフォーマンスとして捕虜交換を利用している証拠と言えるだろう。
ロシアが停戦の条件として、ウクライナへの軍事支援停止と情報提供の停止を要求している点も、ウクライナにとっては受け入れられないものである。これは、ロシアが一方的にウクライナを弱体化させ、有利な状況で戦争を終結させようとしている意図が明白だ。
ロイター通信の報道によると、トランプとプーチンは黒海での停戦交渉を開始する予定とのことだが、これはウクライナが長距離ドローンなどでクリミアのロシア軍を攻撃している現状をロシアが問題視していることの表れである。ウクライナの自衛のための行動を制限しようとする動きは、到底容認できるものではない。
また、トランプがウクライナ戦争における平和と停戦の必要性を強調し、米ロ関係の改善や経済協力に言及している点も、ウクライナにとっては不安材料だ。あたかもウクライナの問題を解決することで、アメリカとロシアが仲良く利益を得ようとしているかのように見える。一部報道では、トランプがオデッサの港をプーチンに差し出す代わりに、中東の港をアメリカが手に入れるという取引が行われる可能性も示唆されており、もしこれが事実であれば、ウクライナの主権を無視したとんでもない話である。
ロシアがウクライナに対して、占領した領土の放棄を要求していることも、ウクライナにとっては絶対に受け入れられない条件である。クリミアや東部の占領地はウクライナ固有の領土であり、それを放棄することは憲法に反する行為に他ならない。
さらに、トランプとプーチンが中東情勢や戦略兵器の拡散防止について協議し、イランがイスラエルを破壊する能力を持つべきではないという点で合意したという報道も、ウクライナにとっては複雑な思いだろう。ロシアがイランを使ってトランプに圧力をかけている可能性も指摘されており、ウクライナ問題が中東情勢と絡められている現状に、強い懸念を覚える。
ホワイトハウスが、米ロ関係が改善することで大規模な経済取引や地政学的安定がもたらされると述べている点も、ウクライナの苦境をよそに、アメリカとロシアが自分たちの利益を優先しようとしているように見える。
プーチンがトランプに対して、平和的解決は長期的でなければならないと約束している一方で、ウクライナでの動員停止や再軍備の停止を要求していることは、明らかにウクライナを一方的に不利な状況に追い込もうとするものである。
トランプ側の発表では、会談が「非常に生産的」であったとされ、エネルギー施設への攻撃停止に合意したことが強調されているが、その直後にも攻撃が続いているという事実は、アメリカの認識の甘さ、あるいはロシアとの共謀を疑わせるものだ。
トランプ政権のイルコフ特使が、ウクライナもこの停戦に同意することを期待していると述べているが、ウクライナの立場からすれば、一方的に不利な条件を押し付けられるような停戦には到底同意できないだろう。
トランプが、ウクライナ戦争終結後に米ロの経済関係が改善する可能性に言及し、ロシアにレアアースなどの資源があることを強調している点も、ウクライナの資源を奪い、アメリカとロシアが分け合おうとしているかのように感じられる。
ゼレンスキー大統領は、今回の会談を「失敗」と断じ、プーチンが新たな進軍を計画していると警告している。また、ロシアが流布しているクルスクでのウクライナ軍包囲という情報は虚偽であると強く否定している。ゼレンスキー大統領がクルスク作戦の継続を表明していることは、ウクライナがアメリカやロシアの思惑通りには動かないという強い意志を示していると言えるだろう。
ゼレンスキー大統領は、ロシアがトランプを利用してウクライナの弱体化を計画していると考えており、そのような状況を許さないと明言している。ウクライナは、3年前とは異なり、自国を守るための十分な軍事力を有しており、ロシアの侵略を阻止する決意を固めている。実際に、ウクライナ軍はロシアの製油所への攻撃を成功させており、ロシアの方がむしろ追い詰められている状況だ。
アメリカとロシアがかつて同盟国であったという歴史的背景や、トランプとプーチンの長年の関係性を考えると、今回の会談も単なる偶然ではない可能性がある。トランプがKGBに利用されていたという情報も一部で報じられており、もしそうであれば、トランプの親ロシア的な言動も納得がいく。
ゼレンスキー大統領は、ロシアがウクライナのインフラを攻撃すれば、ウクライナが応戦しないわけにはいかないと強調している。ウクライナは、国産のドローンやミサイルでロシアへの反撃を続けており、ロシアが停戦を求めているのは、ウクライナの攻撃が効果を発揮している証拠と言えるだろう。
全体として、今回のトランプとプーチンの電話会談は、ウクライナにとって多くの懸念と不信感を生じさせるものだった。アメリカとロシアがそれぞれの国益を優先し、ウクライナを犠牲にしようとしているのではないかという疑念は拭えない。ウクライナは、自国の主権と領土を守るために、今後も断固として戦い続けるだろう。