自分の母親から聞いた話。

母親がまだ准看で働き始めてまもなくの頃に、友人達と泊まりに行く機会があった。場所は宮城県の某所。仲の良い子達全員を集めた為、母親と一緒に泊まったのは10数人。観光地を巡ったり、その土地の名産を味わったり…様々な事をして楽しく一日目は終わろうとしていた。さて、明日に備えて寝ようかと夜も更けてきた頃、友人の一人が「怪談話をしよう」と持ちかけてきた。何でもそこの宿泊施設は自殺者が多い事で有名だったらしく、「こんなところで怪談話をしたら面白そうだ」と考えたらしい。10数人の中には当然怖がりな子もいて、そんなことをするなんてと嫌がっていた。しかしその他大半は面白そうだと同調した。母親は流れに身を任せていたらしく、そのまま怪談話は始まった。
その場にいた10数人全員で輪になって真ん中にはロウソクを置いておき、部屋の灯りを消して雰囲気を出す。ロウソクの火をつけ、怪談話が始まる。
はじめはなんてことない怪談話だった。何処かで聞いたような有触れた話を誰かが嬉々として語ると、怖がりの子達が身をすくませて嫌がる。怪談話をする時のお決まりのような光景で、特に違和感は何も無かった。しかし…一つ目の話が終わり、次の話を聞いているときだった。みんなの輪の隙間を誰かの足が縫うようにして歩いているのを目にしたのは。母親は、ひと目見ただけでこれは人間ではないな、と悟った。何故なら足のみで胴体も頭も無かったからだそうだ。更に、母親はその時、背後に嫌な汗が伝ったらしい。母親は所謂視える人だから、幽霊を見るのもしょっちゅうで慣れていた。しかし、直感的に仄暗い嫌な気配を感じ取った幽霊は殆どいなかった。それにもかかわらずこの足からはそれを感じた為、何か悪いものであるということは確信していた。
周りの子たちはそれに気付かず、怪談話を続けている。ここで自分が足が見える、と言っても怖がらせてパニックになるだけだろうと母親は怪談話が一旦終わるのを待とうとした。
その時だった。
母親の隣に座っていた友人が「足音が聞こえる」と言ったのは。
「ぺた、ぺた、ぺた、ぺた…」
「ほら、聞こえるでしょ!?」
半狂乱になったその子のいう足音のリズムは、母親に見えている足の歩くタイミングと完全に同じだった。
青ざめた顔をする彼女にただ事ではない、と怪談話は一旦中断。怖がりの子達を中心として、母が危惧した通りその場は大混乱となった。「こんなところにいるのは嫌だ」とその場の一人の子がぼやく。周りの子もその意見に同意を示した。
仕方がないので母親達は、落ち着く為にも、たまたま宮城県に住んでいた別の友人の家に全員で押し掛けに行った。
お茶をしばいたり、あの宿から離れたこともあってか皆徐々に落ち着いた状態へと戻っていった。
「というか、足音なんてもしかしたら気のせいだったんじゃないの」
落ち着いてきたことで気が大きくなったのか一人の子がそう言った。
このままではあの子が嘘つき扱いされてしまうのではないか、と思った母親は「実は…」と足が見えていたことを話し始めた。
その後は当然、10数人全員から「早く言え!!」と怒られてしまったそうだ。おしまい。