サズという楽器、あるいはトルコ民謡について | サズ奏者 FUJIのブログ

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サズ。それは弦を弾いて音を出す楽器のもっとも原初的にして完成されたもののひとつである。その形、材質、デザイン、音、どれをとっても時の試練に耐えぬいたもののみがもつ簡素にして洗練された美が感じられる。それは音楽する人間の本能をゆさぶる魂の発音体だ。それはあなたのなかの音楽魂と共振しあうことで、より深い生の神秘を垣間見せてくれる秘密の鏡である。



中央アジア、カフカス、そしてアナトリア半島に古くから存在する吟遊詩人アーシュク。その源をたどればキリスト教、イスラム教などの一神教伝播のはるか以前のシャーマンにまで行きつくだろう。吟遊詩人がいつ頃から弦楽器を携えて歌い語るようになったのかは知らない。が、9千年前のものと思われるルーブル美術館所蔵の陶器にはすでにサズの祖形と思われる弦楽器をかき鳴らしつつ踊る男の姿が描かれているという。



中央アジアで使われていたコプーズが14世紀にアナトリアで発展し現在のサズと呼ばれる楽器になった、というのが定説である。以下に解説を記す。


サズまたはバーラマ解説
サズはトルコの民俗音楽の中でピックを使って演奏される発弦楽器の総称であり、大きさや形によりジュラ、バーラマ、ディヴァンサズ、チョウル、ブルガリ、イキテリ、タンブーラ、メイダンサズなどの種類がある。中でももっとも頻繁に演奏される中型のサズはバーラマと呼ばれる。バーラマにはフレットの数と音域により、短い竿のバーラマ(クササプルバーラマ)と長い竿のバーラマ(ウズンサプルバーラマ)がある。                                                       
私はトルコ音楽の専門家ではない。サズはもともと広い意味での民謡のた  


トルコにも日本、と同様、あるいはそれ以上に多様な音楽ジャンルが存在するが、大きな違いは民謡が老人や一部の物好きな、あるいはあたらし物好きなマニアによって細々といきながらえているのではなく、あるいは今日の津軽三味線をはじめとする、古さの中に新鮮さを見出すニッポン再発見風の、どこか仕掛けられたブームのような状況をまったく必要としない。
つまり、トルコという国の中で、民謡はただそこにあるだけで世の中の主役を占めている。それは民謡ファンの集まるカフェや酒場だけでなく、テレビやラジオやインターネットカフェや、野外ライブやCMやポップなイベントの中に堂々と存在している。今週のトップランキング風の番組で洒落たポップスと民謡が一位を競い合うことは別に珍しいことではない。つまり民謡は売れている。そして次から次へとアレンジを施され、常に『今風』たる宿命を背負った音楽、とさえいえるだろう。だが、そもそも民謡とそうでない音楽をどうやって区別するのか。説明するのは難しいが、聴けば分かる。そして、民謡にはサズは不可欠。サズを使わずして民謡の味わいを表現するのは大変難しい。